私のザルツブルク
                      藤沢 博



長年憧れの地であったザルツブルクへ、初めて行ったのが1986年の夏。
小雨の中,ミラベル庭園のバラの花を見ながらシェラトンホテルに入っ
て,翌日午前中はおきまりの市内観光。一番最後の大聖堂まで、どこを
どう歩いたのか、さっぱり記憶がない。
 そして三日目の朝、明るくなる前に目が覚めたので、じっとしていら
れず一人で散歩に出た。
 ミラベル宮庭園のそばを通りマカルト広場に出ると、エアラッハ設計
になるという三位一体教会があって、そこから左手の道を行くと、間も
なくカプツィン山への登り口が見つかった。
 標高500メートル位の丘みたいなものだから、汗をかく程のこともなく
プツィン教会にたどり着いた。
ザルツブルク城や大聖堂、コレギエン教会やSt.ペーター教会、ザル
ツァッハ川が朝日に輝いて、すぐ目の前に広がる。やがてあちこちの教
会から6時の鐘がいっせいに鳴り出した。
「ああ、これこそザルツブルクだ!」、「この鐘の音はモーツァルトも
聞いた同じ響きなんだ」そんな想いにひたって、暫らくそこを離れれる
ことが出来ませんでした。
 その年、ザルツブルク音楽祭の目玉は、カラヤン指揮バルツァとカレ
ラスの歌劇「カルメン」だったが、カラヤンと衝突したバルツァが降り
てしまって、かぼそい代役だったし、カレラスも不調(白血病発病直前)
だったので、私の記憶の中には舞台装置のすばらしさだけが残っている。
 それからの10年、祝祭劇場のオペラのほかにも、大聖堂やコレギエ
ン教会の宗教音楽、モーツァルテウムのコンサート、ミラベル宮の室内
楽などなど、十指に余るオペラやコンサートを聴いて心底感激したのは
何だったろうと、思い返してみると、

 St.ペーター教会 

モーツァルト/キリエニ短調 k.341(368a)(通称ミュンヘンキリエ)
 
  同    /ミサ曲 K.427(417a)(通称大ミサ)

即座に思い出されるのはこの二曲です。前者は大聖堂で、後者は初演と
同じst.ペーター教会で聴きました。大ミサは1783年モーツァルトが
自分で指揮をして、奥さんのコンスタンツァがソプラノパートを歌って
初演されたものです。
 1996年8月、インターネットでザルツブルク音楽祭のスケジュール
を見ていたら、初演と同じザンクトペーター教会のコンサートがあったの
です。見たとたん、まるで衝動買いみたいに予約のメールを発信しました。

 演奏会は2週間後に迫っていたので、既に1500円の立ち見しかあり
ません。急いでY旅行社に問い合わせたら、幸いにも、その数日前に出発
する格好のコースがあって、二人分の残席があるというのです。
 待つこと三日、ザルツブルクからも「あなたの申し込まれたチケット二
枚確保してあります」とのメールが届きました。勿論この返信をプリント
して大事に持って行ったことは言うまでもありません.

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 ザルツブルクに見所は多いけれど、ちょっと郊外に足を伸ばして、ヘル
ブルン宮の楽しい庭園や、ポツンと丘の上に建つ簡素なマリアプライン教
の庭を歩いていると、何処からかモーツァルトの音楽が聞こえてくるような
気がしました。
      

              
ヘルブルン宮庭園

    
マリアプライン教会の庭園     
→マウリツハイス美術館へ
   →湖上のトランペットへ