フロム・ヘル     監督:ヒューズ・ブラザーズ 出演:ジョニー・デップ、ヘザー・グラハム 

勇気ある妥協
 切り裂きジャックの映画化である。御存じ1   督の嗜好のようだ。監督ヒューズ・ブラザー   これがメインで進んで行く。実際の事件が未解

 9世紀のロンドンで起きた猟奇殺人事件。5   ズとはその名のとおり双児の兄弟アルバート   決なだけにアイデアの自由度も高いのだがよく
   
 人の娼婦が殺害され迷宮入りした事件だが、   とアレンの事である。二人は黒人の父とアル   考えられていると思う。伏線としてフレッド警

 事件にあわせ映画も映像もショッキングなも   メニアの母のあいだに生まれ、黒人社会にも   部とヘザー・グラハム演じる娼婦とのプチ恋愛

 のとなっている。主演は最近出ずっぱり感の   白人社会にもなじめない疎外感のようなもの   があるのだが、こちらはかなりどうでもいいで

 あるジョニー・デップ。ジョニー・デップが   を感じて育っている。彼等はこの映画の前に   き。まぁこの辺はエンターテイメントを意識し

 が演じるのは事件を捜査する警部フレッド・   3本の映画を撮っているが日本で公開された   した二人の苦労のあらわれなのだろう。実は二

 アバーライン。アヘン中毒というおまけ付き   のは93年の第一作「ポケットいっぱいの涙   は「猿の惑星」のリメイクを一度オファーされ

 だ。一見この映画は残虐な殺人シーンがメイ   」だけ。おりしもこの頃はスパイク・リーを   たものの、あまりに政治性の強い作品に仕上げ

 ンのように思える。しかしよく見ていくと人   代表にブラックムービーブームの真只中。当   ようとしたため取り上げられた過去をもってい

 種差別やロンドンの階級制度に対する痛烈な   時弱冠20歳の二人がデビューできたのはブ   る。この経験が生きているのか、この作品はちょ

 批判が含まれている事が分かる。それは娼婦   ームのおかげと言うのは言い過ぎだろうか。   っとメッセージ性の強いハリウッド映画で済ん

 に対してだったりユダヤ人に対してだったり   映像の方はただグロテスクなだけではなく、   でいる。「好きな事をやり続けるには時には多
 
 下町出身のフレッド警部に対してだったりす   カット割りや照明など凝りに凝ったものでキャ  少の妥協も必要」、これがこの映画に込められ

 るわけだが、このちょっとあからさまな批判   リアを感じさせるところである。        た本当のメッセージなのだろうか@

 は何なのだろうと調べてみると、どうやら監   ストーリーは「切り裂きジャックは誰か?」