ハリプンチャイ -Haripunchai-

BACK

ある骨董店の紹介でチェンマイのコレクターと知り合うことが出来た。
チェンマイの歴史は古く、旧市街地にはランナー王朝時代の古い壁が今も残り、それぞれに名前がついている。そのためそれが目印となり、タクシーやソンテウの行き先を説明するに便利である。
彼の家はかなり大きな家で、改築は重ねているそうだが50年以上もここチェンマイで暮らしているという。
今回彼と初めて会った。目がギラギラとした背の高い紳士であった。

 事前情報では彼はハリプンチャイ期の遺物を大量にコレクションしているというのである。
ハリプンチャイはチャンマイ県の南、車で30分ほどのところにあるランプーン県の旧名でそこにタイ中央部にいたモン族が8世紀頃から移り住むようになって築き上げたモン族の都である。以前から高貴で不敵な笑みをはなつハリプンチャイの仏像に魅力を感じていた私にとっては彼のコレクションに非常に興味があった。ましてバンコクの骨董店でもアユタヤ期やクメール、ビルマのものならまだ探せば手に入るのだがランプーンでしか出土しない12〜13世紀のハリプンチャイ期のモノはほとんど見つけることが出来ない。 私はここに来るまでの経緯とハリプンチャイ仏に対する思いを話し、彼のコレクションを見せて頂く事になった。
彼のコレクションルームは2階にありそこでお茶やフルーツを頂きながら色々と見せてもらった。現在は別の事業をしているが30年以上前から古美術の世界に入っていったという。 彼のコレクションはショーケースに飾ってあるものだけでなく、奥にも閉まってあるようでいろいろと出して見せてくれた。

「イチカワはなぜハリプンチャイが好きなんだ?」

「ハリプンチャイ仏の顔立ちに魅力を感じるのです。スコータイ、アユタヤ仏と違って独特で個性的なマスクに非常に興味があるのです。本当に良い顔していますよね。」

「日本人でハリプンチャイが好きって人は珍しいな。イチカワ。ランプーンの遺跡はもう見たか?」

「ええ一度ランプーンの国立博物館に行きました」

「おー行ってきたか。あそこにあるものはほとんどランプーン県で出土したものだからな。」あとで耳にしたことだが国立博物館のものの一部は彼が寄贈したもののようです。

「今でも時々出土するんだよ。私も以前はよく掘ったよ。ここにある出土品も実際に掘り起こしてきたものだからな。」

「えっ!ピーが掘って見つけたものなのですか」

「イチカワ。今からランプーンに今建設中の家の仕上り具合を見に行くので一緒に行こう!」

そう言うことで彼の高級車に乗ってランプーンに向かった。 途中プラッ屋でプラ談議をしていた彼の友人2人を拾って合計4名となった。彼の車の中にはなぜかU−Thong期のプラッがあり、彼の友人はハリプンチャイ期のプラ・コンを身につけていてプラの話題で盛り上がった。
彼の友人も平日の昼間からぶらぶらしているところを見るとお金に余裕があるのか分からないがタイのおじサン連中はなかなか人生を楽しんでいるようで羨ましい思えた。
チェンマイ県からランプーン県に至る一本道は店も何もなく両端はのどかな田園風景がひろがっていたがこの辺りには古い都市があったとか、あの辺りにも遺跡があったなどと彼しかわからない以前の話をしてくれた。
ランプーンは古い町並みで現在では南北へ続く広く大きな道路があるのだが、今回走った道は旧道でかなり古い。旧市街地内はかなりいりくんだ道となっていて所々にはガイドブックには絶対に紹介されていないような壊れた遺跡の廃墟のようなものが見られた。

「以前この辺からもハリプンチャイの遺物が出土したんだ。ここは僕の土地だから大丈夫だけど、あの場所にも多分ものは埋まっているはず。今あの土地も買おうとしている最中だ。」

 ランプーンに到着したらまずワット・チャームティーウィーに連れていってもらった。
ここにはよくタイの遺跡の本で紹介してあるハリプンチャイ仏がたくさん安置された仏塔がある。

「ここの仏像は補修しているが、あれはまだ補修していない完全にオリジナルだ」と上の方にある仏像を指さしていった。

ハリプンチャイのことで彼の右に出るものはいないし、目も確かだ。
彼の遠い祖先がハリプンチャイ人だとこの時確信した。

そのままワット・マハーワンに向かった。ここは私も今回はじめてきたが別に遺跡はないただのお寺であった。このマハーワンとは前章でも何度も紹介してきているがタイでもっとも高価なプラッ・クルアングの1つプラッ・ロート・マハーワンの出土地であり50年くらい前に実際にこの場所に出土したものということで大きな写真が飾られていた。
それからランプーンにある彼の建設中に家と広大な果実園を見て廻った。果実園にはマンゴーやラムヤイなどあり、もぎ取って食べた。タイ人の優雅な休日の過ごし方に感動した。
ハリプンチャイ人に案内されたランプーンの旅は最高だった。
Copyright(C) 2000-2006 Buddhist Art of Southeast Asia (Ichikawa). All Rights Reserved.