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トリム変化の計算
Guilmartinの "Galleons and Galleys" p115に「16世紀のベネチアのガレー船は170トンの船体の先端部に7,000ポンドの重量がある大砲を載せている。船大工はこの重量を考慮して船首部の船体を太くし、船尾部を細くし、魚のような形に作った。」と書いてある。
大砲を載せることによってガレー船のトリムがどの程度変化するものなのか、また、この記述による方法で、どの程度改善できるのか調べてみることにした。
基礎となる理論1),2),3)
大砲が船体中央にある場合と船首部にある場合のトリム変化を計算することにする。
下図に示すように大砲の重量 w が中心から l の距離に移動したとき、船体を固定して考えれば、水線が浮面心 F を中心としてy軸の周りで回転することになる。
この図のMはメタセンターと呼ばれy軸で回転する全体積の支点となり、浮力の中心 B または B' とメタセンターまでの距離は次式で与えられる。
ここで A は水線面積、 V は水線下の体積である。
なお、x=0 は浮面心 Fの位置とする。
一方、 G から G' への重心の移動は以下のようになる。
ここで、
は排水量である。
また、回転角度θが小さいとすれば、以下のような関係が得られる。
したがって、トリム t は次のようになる。
一般的に
と考えてよいから
となる。
ところで、浮面心 F は水線面積の幾何中心だから xc は次のようになる。
なお、ここでは x=0 は船尾の位置とする。
計算結果
いろいろな船形を仮定して計算した結果を下表にまとめる。
なお、この計算では排水量
は170トンとし、大砲の重さは3.2トン(7,000ポンド)とした。
| 水線面形状 (y-軸は拡大されている)
|
BM
|
t
|
tf
|
xc
|
|
60.3 m
|
18.7 cm
|
9.3 cm
|
0m
|
|
100.9 m
|
11.2 cm
|
5.2 cm
|
1.28 m
|
|
114.7 m
|
9.8 cm
|
4.6 cm
|
1.43 m
|
|
128.6 m
|
8.8 cm
|
4.4 cm
|
0 m
|
|
54.3 m
|
11.7 cm
|
5.9 cm
|
0 m
|
|
16.1 m
|
17.6 cm
|
8.8 cm
|
0 m
|
|
22.5 m
|
28.2 cm
|
14.1 cm
|
0 m
|
|
8.9 m
|
31.8 cm
|
15.9 cm
|
0 m
|
BM : メタセンターと浮力の中心の間隔
t : トリム
tf : 船首部の沈降量
xc : 浮面心と船体中央の間隔
結論
直線を組み合わせた非常に簡単な船形を仮定しているので絶対値はあまり信用できないが傾向は分かる。
たしかに、船首部が太く、船尾部が細いほど船首部の沈降量は少なくなる。.
ただ沈降量が高々10cm程度と相当小さい。これは大砲の重量が排水量の2%程度しかないから当然かもしれないが、ガレー船の乾舷が非常に低いことを考えるとこれでもかなり重要なのかもしれない。
参考資料:
1) "Ship Hydrostatics, Equilibrium and Stabilty: Basics".
2)通信教育造船科講座 船舶計算 学習指導書 (in Japanese)
3)2.9.3 Longitudinal Center of Floatation (LCF)