上を向いて前向きに

 

 早いもので亥年も本年が過ぎました。その間に平成から令和となり、一挙に日本の空気の流れが変わって来たのを実感致します。天皇は人間であらせられますが、全身全霊を神に仕え、捧げて御座す方であり、常に国家・国民に想いを馳せておられる存在であります。今回の譲位、即位の全ての行事は、神の示された「時」であると思い、徐々に変化が表れて来ると思っています。戦争もなく穏やかな「平成の世」でありましたが、一面覇気のない、また教育による様々の問題も起きて来た時代を過ぎ、これから新たな考え方が望まれるものと思います。

 人間は感情の動物と云われます。犬でも猫でもあらゆる生き物に感情はあるでしょうが、人間が違うのはそれを制御出来る力がある事です。怒りを覚えても、瞬時に爆発したりせず、悲しさも自ら耐える高度な自制心があります。また、曾ての教育はそれを人間に必要として教えたものであります。最近、私が思うのは、その辺りが疎かになっているのではと感じる様な様々な不祥事が現われている様に感じています。渋谷の馬鹿騒ぎをはじめ、他への配慮の欠如、大切であるべき親や高齢者への尊厳のなさ、等々、毎日の様に報道されている事件は、人として恥ずべき事と弁えない所業であると云えます。それを教えて来なかった社会や家庭は、今一度子供を学識のみならず、人として育てると云う、謂わば一つの事業として考える必要がある様に思います。成人している人が日常の挨拶も出来ない例を沢山見聞きします。老人に対しては悪意ある言葉を発する子供も多くおります。高学歴者の不作法も枚挙にいとまなく報道され、頭脳の良さの本質とは何だろうと考えさせられます。生きる楽しさは、そんな低次元の所には存在しません。穏やかな戦争のない国、それと共に弁えを知る人間がきちんと向上心を持って働く社会が訪れればと思います。当然、両親や教師達、ひいては文科省の分野にもあると思いますが、年号の変ったこの時期、考えてみるのは無駄ではないと思います。大切な自分の国を貶める様な行動は自分を価値のない人間に位置づける事を知るべきだと思います。

 さて、六月は夏越大祓を行じる月であります。毎年の事ではありますが、毎年様々な事があり、穢れ、悩みが当然発生します。今年は殊に健康面、仕事面で問題が生じた方が多くありました。加えて自分の足許が見えなくなり、冷静な判断が出来ない状態の方も多くある様に思います。原因はそれぞれですが、日本の国に大きな変化が訪れ、流れに漂っているだけでは生きていられない、生き甲斐を自ら求める時代が来ている様に感じています。鳴り物入りで国民に課した年金すら危うい老後の生活や薬漬けの高い医療費など、自分は何の為に頑張っているかと疑って仕舞う様な日々が多くなっています。つい最近、近くの中年男性が他界されました。自分の責任から来る病気ではなく、難病の指定や治療薬のない状態が数年も続く、辛抱我慢の数年だった様ですが、常に明るく笑顔の方でした。現代は驚く程医学の進歩が喧伝され、癌すら不治ではないと云う世の中、割り切れない事が余りにも多い様に思います。毎日の新聞にはサプリメントの宣伝が載っていない日はありません。然し、サプリはあくまでも栄養補助の薬ですから、それで病気が治る事は余程本人の免疫力や体力、気力が高くなければ特効薬とは云えませんから、呉々も自分を良く知って、正しい判断を求める事を心得て戴きたいと思います。

 大人でありながら大人の考え方をしない人がとても多いと思います。考えてみれば、昭和二十年に敗戦してから外国の指示が始まり、教育の場も一変して来た様に思います。長い歴史で培われて来た日本人の常識や考え方は敢えて無視される事も多く、自信を失った教育者が戸惑う方針が現在のいささか困惑する人間が育って来た様に思えてなりません。今更に戦争の根深さを憎みます。

大祓とは文字通り禊祓の行事であります。日本人は神代の時代から禊、そして祓い清浄を旨として来ました。神社で手を洗い口を濯ぐのも禊であります。神経質なほどに日本人が祓いにこだわるのは、底辺に自分達は神の子であり、様々な穢れは魂まで穢すと云う思想が根付いていると云う事です。「清く正しく真直ぐに明るく」と云う考え方が二千年の昔からあると云うのは誠に驚異でありますが、これは人としても長く続けたい想いであります。元旦と六月三十日に神前で手を合わせ、力を戴きながら心身潔斎する時がある事を幸せに思います。

 本年は何事によらず、顔を前に向け背筋を伸ばして歩きましょう。生きる事がどんなに大変であっても、悩みが深くあっても、必ず解決の道があります。それには沢山の人達に出会う事が重要です。心身に学びを与え、個人の知恵の何倍もの力を得る機会となるでしょう。

 私が嬉しく思うのは、学びにお出でにある方は利害を晴れたピュアな人の付き合いが出来ている事であります。それは三十年前に、私が決めた事の一つであり、心で付き合える人達の場所にしたかったと云う事であり、一人一人の才能や個性を大切に豊かなものにして伸ばして行く力添えが出来る事を喜びとしております。

 夏越大祓を真剣に行い、祓って勢いあるこれから先に向いましょう。平成から令和に変った事は他人事ではりません。