「にしても、もう少しスマートに行動出来ない?」
「知るか」
「はぁ・・・・」
ラナの諦めきった口調だったが、不満が残る故に溜息が出るのだろう。だからと言って気遣う気はさらさらないのだが、彼女も不満は同調出来る部分もあった。
漆黒の山脈にたどり着いた途端、襲撃を受けたのだ。相手はセフィラの同胞である神族らしいが、時々聞こえてくる罵声の類が全てセフィラに向かっている事から考えても間違いではないだろう。
そして現状で言えば、均衡状態に入ってしまい、場所は比較的大きな木の後ろに隠れて様子を伺っていると言う所。彼らならその木ごと破壊する位の事は出来るのだろうが、先ほど苛ついたラナが向こう側の攻撃が届く瞬間、それをかき消し更に敵をも倒してしまったのだ。それが向こうが動けない原因でもあり、此方も動けないと言う原因。
向こう側の攻撃が無ければ敵の居場所が分からないのと同じく、敵側は此方の居場所が分かっていても決定打が無く策を考えている最中なのだ。それ故の睨み合い状態である。
「でも少しは、音無して近づいて一撃で殺すとか、威嚇で全員殺すとか出来ない?」
「炎をくれるのならやっても良いがな。不滅のルーンとやらがあるんだろうさ」
「そう言う意味でセフィラも役に立たないわよねぇ」
「すみません・・・」
魔導術としてはごく基礎な炎属性の攻撃も、彼女が神族故に使えないらしい。本来術を行使するには加護を受けなければならないとは先ほど聞いた事だったが、その大半がどうでも良い事だけに静流は頭の片隅どころか既に忘却の彼方へと消し去っている。だがそう言っているラナ自身もあまり言えた事ではない。
雨と言う天候の為、先ほど炎系の魔導術を使ったのだが、上手く発動出来ないらしいのだ。これも地形に合わせて臨機応変に戦える様に調整された造られた存在だと言う事の現れであり、雨の中でわざわざ炎を使う術者など居ないだろうと考慮しての事。もっとも、ラナ一人で殲滅させる事も出来るのだろうが、気が乗らないと言う想いは聞かなくとも分かり切っている事。
「でもやっぱり・・・幾らなんでも静流様一人で神族五人の相手なんて無理です」
それ故に行き着いた結論はそれ。ただし、ラナは最初から静流一人にやらせるつもりであり覆すつもりもなく、静流自身、手伝って貰うと言う事は勝負に負けるに足りうる十分な理由なのだ。
「いや、構わない・・・」
「でもっ! 昨日見たいに炎を使ってくるとは限りませんっ!!」
ただ分からないのは、セフィラの自分に対するそう言った反応。声をあらげその事で敵に見付かると言う心配をしなくて良い事はあるのだが、そこまで悲鳴じみた声を出す理由が今一理解出来ないのだ。
だがそれをラナは分かっている様子で、気にくわない理由の一つ。それ故に冷めたような瞳で言い放った。
「元々、種をまいたのは俺自身だ。口出しはするな・・・」
そしてゆらりと立ち上がり、途端その姿は掻き消える。耳に聞こえたのは、制止と嘲笑だった。

アナザー・ナイン・ファンタジー■ACT:CYAN MASK