誰も一度しか死ねないと聞いた時、嘘だと思ったのは何時だっただろうか。
何処までも続く、夜と濁りきった空気が支配するあの切り立った渓谷の中で、誰かがそう言い、自分は珍しく声を荒げそう言った事を覚えている。
無論、笑われた。理由など、言うまでもないと、今は思える。
だがあの時は、幾度と無く甦れる、本気で信じていた。
同時に、疑問も抱かなかったのだ。
何故、死んだ後に、甦れるのか。
誰も、その問いに答えられたモノ等居なかった筈。
だが、あの女は言っていた。
自分を過酷な環境で育て、最後に命を奪おうとし、ただ、死んだあの女は。
『あんたは、死にたくないのかい?』
『当たり前だ・・・けど、死んだって甦れる』
『どうしてだい?』
『じゃあ、何故死んだら甦れない。それならば甦ると言う言葉の意味なんて要らない』
『そう言われて見ればそうだねぇ。なかなか面白い事言うなお前は』
笑った顔。
楽しげに笑う、その顔。
信じて、いや、信じる事すら出来なかった。だが、何処かで繋がりを感じた時、自然と、会話が出来ていた。
そして女は言ったのだ。
「じゃ、甦って見ろ。私も乗り越えて」
「!!」
瞬間、だった筈。
だが目の前にある光景を見た時、目の前に居る、その瞳を見据え、嘆息した。
「感謝の気持ちが溜息? 失礼極まりない男ね」

アナザー・ナイン・ファンタジー■ACT:CYAN MASK