何故そんな事を思い出すのか。
理由など、簡単だろう。
彼女らと夜を共にすると言う事は行為に及ぶと言う事。半ば強制的にすら感じるそれは、既に慣れてしまった。だがその日だけは、何故か野宿で三人が川の字になって寝ると言う、何とも言い難い夜だったから。
「なんか、良いですよね。こういうのって」
「そう? 私このまましちゃいたいんだけど」
「駄目ですよ。明日は皇都、静流様はあの二対の形無しとやり合う事になるんですから」
丁度、二人に挟まれて寝ころんでいる静流に取っては、両側から喋り掛けられると寝にくくて仕方がない。統一郎と別れたレクトから約一日で此処までたどり着き、正直な所、皇都で宿でも取ればいいと思っても居たのだが、そこはハンター本部がある場所と云うのはあながち伊達ではないらしいく、自分の顔は思っているよりも有名になっているらしいのだ。それ故に野宿と云う形を取ったまで。北方でなく、モンスター、静流から云わせれば多種族の殆ど居ない、平和な森だから。
「そりゃそうなんだけどさ。静流、勝算ある?」
「さぁな」
「ルシの事なら知ってるし、弱点教えてあげよっか?」
「必要ない」
しんと静まりかえり、街の灯りなどは一切届かない場所。アルフェイザ方面の様にどろどろした雲は無く、夜とは言え空は快晴。ここまで星空が木々の間から、陽の光の代わりにこぼれ落ちてくるのは初めて見た。
あまりにもそれは、眩しすぎる光景だった。星屑は恐ろしい程に空一面に広がり、木々のざわめきは止め処なく流れ、そして去って行く。
こんな静かな場所は何処にも無い。そう思えて仕方なかった。
同時に、こんな静寂の場所に訪れた事など、今まで一度もなかった。
「静流様? もう寝ました?」
「・・・いや」
「ちゃんと寝て、英気を養って下さいね。明日は決戦ですから。ほら、お姉様も」
「もー・・・。なんでアンタに」
「文句は分かってます。でも、寝て下さいっ」
「・・・・・」
そして何より、暖かみ、だろう。
宿で見せたセフィラのあの表情が嘘だったかの様に、彼女は自分らしさを見せつける。
それが本来ならば鬱陶しいと感じられるのだが、今だけはそれに身を任せ、包まれて居たかった。
感じた事のない、安らぎだから。
感じようとしなかった、ぬくもりだから。
そして彼は、この先に待っていたそれを知らない。
未来など、誰も予測出来ないのだから。

アナザー・ナイン・ファンタジー■ACT:CYAN MASK