記憶が戻りつつあると言う共通点。
相対するモノと、自分の違いと言えば、向こうは全てを思い出したとでも言うのだろう。
それに対し、自分が思いだしたのはやはり虚空と出逢った時の事まで。
それ以前に生きていたにもかかわらず、あの紅と言う少年だろうか。
再会、であろう皇都での一室の時と全く同じ容姿と、表情。
自分が泣いた時と同じ顔がそこにあり、そして自分すらも、泣きそうなまるで子供の顔だったのかもしれない。
ふと過ぎる言葉が、親離れだ、と言うのは冗談にしか聞こえないが案外間違いではないのかもしれない。
そして距離も、顔も、何より状況さえまだ動かぬ中で、それすらも共通点に思える彼女の顔は、嘲笑が讃えられている。
だから自分の視界全てが赤く、紅く染まり行くのだろう。
ただ、純粋な殺意をその瞳に宿して。

アナザー・ナイン・ファンタジー■ACT:DARKNESS VOICE
何を考えているかなど、分かるはずもないだろう。
ただ笑っているだけで。
ただ嘲って居るだけで何の言葉も紡ごうとしない、まるで人形。
だが決して人の形をした物ではない証しは見えていないと言った片方だけの瞳。
自分の剣は確かに彼女の首に添えられているのだが、それ以上動かない、動かせないのが真実。
恐れ、戦慄いているのだろう、自分自身が。
誰とやり合った、戦った、死闘を演じた時でさえ、ここまでの恐怖を感じた事はなかった筈だ。
だから、疑問に思うのかもしれない。
過去に置いて、自分は六帝の残り四人とやり合った時でさえ、一方的に弄んでいただけではなかったかと。
『私は・・・・誰と、死闘を演じたんだ?』
だが、疑問すらもうち消すのは、自分が恐怖を感じる元凶の言葉。
「その程度で、伝説の人物だなんて笑わせますね・・・・
一介の吟遊詩人相手に恐れを抱くとは」
冗談ではない。
何処が一介の吟遊詩人だと、胸中で呟けても言葉には出来ない。
ただ、腕を少し動かすだけで良いのだ。
そうすれば間違いなく殺せると言う確信がある。
そう、間違いなく殺せるのだ。
「それでも、緋色の瞬光の二つ名を「真似て」まで剣を扱う必要があるんですか?」
だがそのもう一歩が届かない。
あの時と同じであり、それ以外、経験した事が無い様に思える。
『だからお前は甘ちゃんなんだよ』
そして頭の奥で聞こえる、誰かの言葉。
「死んでまで、貴方に託した虚空さんがうかばれませんよ」
「五月蠅いっ!!」
だが途端、再度うち消される様に放たれた言葉に、何も見えなくなる。
今はただ、目の前に居る女を殺せば良い。
それだけで、良い筈なのだ。
『だが・・・・何故動かないっ!!』
痛みさえ伴う自分の叫び。
声に、音に、世界を揺るがせる振動にならぬそれは決して言葉ではない。
たんなる思い。
「そんなので、貴方は誰かを殺め続けられるんですか?」
「・・・・」
「そんな力で、誰かを殺めたつもりで満足なんですか?」
「・・・・・・・」
「その程度の・・・出来損ないの分際で一体何をしようって言うんですか?」
だから、目の前の女は笑っているのだろう。
楽しんでいる。
忌み嫌われて来た本性をさらけ出すようにまた瞳が禍々しさを宿し、途端、頭の中で声が響く。
『本当にそう思うか?』
それが誰の、誰に対する言葉か分からずに狼狽する様子が、面白いのかもしれない。
「幻影に囚われるだけで、貴方は一歩も進んじゃ居ない。
造られた命の割に、脆弱すぎますね」
そしてその言葉を聞いた瞬間、自分が動いたのは本能や、意識と言った物のおかげではない。
むしろ、プライドを傷つけられた子供が怒るのと大差ないのだろう。
いったいどうやって避けたのかすら分からぬまま、雨の中に自分と距離を取り佇む女は、言い放ち、
「本当に、くだらない・・・・」
一つ分かった事があった。
同時に、それで終わるとも思った。
視界いっぱいに広がる女の影と、幾重にも、まるで張り巡らされた様な蜘蛛の糸。
そう見える、幾つものナイフが自分の、身体中の肌と紙一重で止まっているのだ。
徐々に変わり行く、表情と雰囲気。
自分と、話していたあのレイチェルではない事など確かだ。
それでも、殺したくないと願う自分は彼女の言った通り、出来損ないなのだろう。
過去に囚われ、昔となんら変わっていない、子供のままなのだ。
『何の為に、私はココに居る・・・』
だから、彼女と同じ、そして意味の違う笑みを浮かべてしまう。
絶体絶命だと分かっても。
いや、だからこそ、だろう。
それが気に入らないのか。彼女の声色が明らかに変わった。
「そんなにも、侮辱される事がお好みなんですか?」
口調は、変えなくともそれで良いのかと、場違いな事を考えてしまうのも諦めきったからかもしれない。
だがやれやれと言う感慨を抱き、溜息を吐いた後の言葉には反応せざるを得なかった。
「なら、こんなのはどうです? 貴方が心を許した、あの子供・・・」
「アイカは関係ない筈だっ!!」
「へぇ・・・ホントにそう言う子が居たんですね」
そしてかまをかけられたと分かった瞬間、諦めきった心が、諦められなくなる。
「殺すなら私を殺せば良い。あいつにまで手を出すな」
「そんな怖い声を出さなくても、ちゃんと貴方を殺した後に、殺してあげますよ。良い声で、鳴くんでしょうね」
「貴様はっ・・・!!」
「だって、貴方が自分でそう望んだ事でしょう? 私を殺せば良いって。
その後、私が何をしようと貴方に関係はありませんよ。それとも・・・
死んで尚、止められる力でもあるんですか?」
笑い声。
雨にかき消されない、耳障りなそれは、建物に反響するのと同様に、自分の心にも響き渡る。
「お笑いぐさですよ、まったく。一閃の雷光ともあろうお人が、たった一人の子供の為に殺してくれだなんて」
そしてその見えない瞳が妖しく輝いた時、走馬燈を見ている感覚に陥る。
同時に、死にたくないから、そんな物を見るのだとも知っているのだ。
たぐり寄せる過去の状況に置いて、今の危機を回避出来る方法を見つける為、本能がそうする事を望む。
例え死を望んでいた所で、イキモノである限り死を素直に受け入れられる様には出来ていない。
だから、そんな幻を見る。
だが、同時に分かっていた筈だ。
造られた命と言う言葉の意味が、自分と無関係ではない事も。
何故、自分が虚空と居る事を望んだかも。
紅と言う少年が、自分に取ってどういう存在だったかも。
忘れていた訳ではない。
現実に耐えきれなくなった心が、ただ封じてしまっただけ。
自分の過去全てを否定する事など、必要なかったにも関わらず逃げてしまったのだ。
何もかもに耐えきれない、自分自身が。
そして今も、受け入れられない現実だからこそ、身体が反応してしまう。
ただ、違うのは辛うじて思い出せた事があると言う事。
人間であるならば、魔族であったならば、何よりイキモノであったならばこんな状況で思い出そうと意味は何も無い筈。
最後の瞬間に悟りを開いた所で、何の意味も見いだせないのが現実なのだ。
だから、感謝したいと、その気持ちを伝えたいと思うのだ。
自分が造られた存在であったと言う、真実に。
迫り来る刃一つ一つを認識しそれを打ち返すのではない。
ただ、生きても居ない身体に全てを受け入れてしまえば良いのだ。
自分の身体が一体何で出来ているかを知って居たから、自分がラグナロクを嫌った。
同族嫌悪だったのだ。
自分の身体は、あの紅と言う少年の血で造られているのだから。
使えるべきだった一番最初の主。
そして、結果的に、客観的に見れば裏切ったと言うべきだろう。
初めてあの少年の顔を見て、生まれた時に、未来永劫とは言わなくとも、少年が望む最後まで仕えようとまで思った事もあった。
だがその途端、言葉も、知識も、世界も理解出来る生まれたての自分に「とりあえず好きに生きろ」等と宣った事も覚えている。
それから、長い旅が始まり、少年の捜し物を途方もない時間を掛けて探していたのだ。
ずっと、親子でも恋人でもなく、かといって認められても居ない主従の関係が続くと思っていたのだ。
それで良いのだと、思っていたのだ。
だが虚空と出逢い、初めて自分の意志で生きて見たいと思ったのだ。
自分の決めた、自分だけの約束事すら破って。
それが裏切りではないと、少年は言った。
初めからそのつもりだったと、簡単に言われた時はショックだった。
だが望みを見透かされた時。
『そいつと一緒によ、もう一度俺の前に現れてみろ。しっかり倒してやんぜ』
戦ってみたいと願っていた自分の心を理解して貰った時に、やはり適わないと思った事もあったのだ。
そして自分は虚空と生きる道を選び、結果だけ見れば失敗したのだろう。
全てを失った訳でもなかった筈だ。
虚空自信が抱いていた、この世界での過去を全て精算し終わった後に、少年と戦ってみたいと言う願いを聞いた時、自分も喜んでそれに賛同した。
ずっと、見抜かれたままで黙っていられた事に腹を立てたくらいだ。
驚くほど、明るかった自分。
比べ、今の自分は何処までも腐っているだけ。
だから生きたいと願って居る訳ではない。
ただ守る為に存在し、戦う為に必要な武器として自分の力を解放するだけ。
一度は捨てた、力。
生まれた瞬間に持っていたそれは、あくまで与えられた、自分の物ではない力。
だからそれを捨て、この世界で強くなった。
残念ながら、それを虚空にもう一度見て貰う事は出来ないのだと、今思い返せば、自惚れていたのかもしれない。
一からやり直して、虚空と同じ、そしてあの少年と同じ力を得よう等と思う事が。
だから、くだらない、それこそ目の前の敵が言った様なプライドなど捨ててしまえば良いのだ。
文字通り錆び付いた身体なのかもしれない。
創造主であるあの少年が自分に与えてくれた力。
それが自分に不釣り合いだから、捨てただけ。
世界と言う場所に居る限り、何らかのルールに縛られてしまうのが、あの少年に関わる者の共通点。
世界を破壊しかねない力を初めから持っていると言う事。
生まれた瞬間に、もしあの少年が居なければ自分は背負いきれない罪を背負っていただろう。
生まれてくる事を望んだわけではない。
だが生きると言う事を知ってしまった今、それを繰り返し言える程、自分は馬鹿ではないのだ。
命が何であるかは分からぬままだが、少なからず生きると言う事に意味を見出してしまったのだから。
『越えて見せろよ。俺がお前に望むのはそんだけだ』
そしてそれが、少年が自分に望んでいたたった一つの事。
経緯はどうあれ。
例え交わり出来た子供でなくとも。
少年が自分の父親であり、越えるべき壁になってくれているのだ。
今も何処かで笑っているのだろうとも思う。
その笑みが、強くなりすぎた故の虚しい色に染まっている事を知っているから。
苦笑に変えてやりたいのだ。
強くなったと、言って欲しいのだ。
同じ事を虚空にも抱き、間違ったのは当然の事。
彼女は自分と対等にあろうとした、掛け替えのない親友なのだから。
「なら私は・・・・」
飛び来る刃の数を把握し、その全ての自分の身一つで受け入れる。
生身の身体でそんな事をすれば致死量に至る怪我になるのだろうが、生憎とそんな柔な身体の造りではない。
だから迫り、自分の身体に突き刺さる筈の白光に輝くナイフは粉々に砕け、変わりにその光り輝く星屑を纏い、彼女は言った。
「ただ上を目指すだけだ。あの方に・・・・紅に一矢報いる為にな」
だがそれでも彼女は、嘲笑する事を止めるつもりはないらしく表情に変わりはない。
ただ気になったのは、何処かそれが違うと言う点。
漠然としているだけで、何が違うのかは分からない。
「何がおかしい」
だから訪ね、次は躊躇いなく殺せる様、剣を構えたのだが、途端に悪寒を感じ距離を取る。
だが場所が悪かったからか、背中に感じたのは衝撃と、ドアの冷たさ。
そして見た彼女の瞳の奥に眠るそれを感じ取った瞬間、死を予感せざるを得なかった。
「!!」
絶体絶命など、久しく使っていない言葉、いや、使った事もない言葉だった筈なのだ。
使う場面も、限られているとも思い、それが誰と相対した時に使う言葉かも理解していた筈。
だから正直、驚きを隠せずに、自分の首元に手を添えられても尚、動けなかった故に死を覚悟した、と言っても良いだろう。
陳腐な言葉だと思い使う事自体を禁じても良いとさえ決意したそれが揺らぎ、彼女の言葉が漸く耳に入る。
「そりゃぁ面白いですよ。紅さんの言った通りなんですから」
「な、、、に?」
「レイドさんって、真剣になるとまるで舞台俳優みたいな口調になるって聞いてましたし」
「???」
しかし、それが何の言葉だかが理解出来ず、思考が停止するのが分かったが、それでも耳に入る言葉は止まない。
ただ、分かった事と言えば彼女が楽しんでいると言う所か。
「けど、ホントにそーゆー風になるのかなぁと思って調子乗っちゃいました。
怖かったですか?」
「い・・・や・・・、確かに、恐怖は感じ・・」
「まぁ、それも仕方ないですよ。紅さんの話しだと、私もゼロだって言う事らしいですから」
「・・・・」
「まぁ、妹がどうかなっちゃった時に決着付けるべきだったんでしょうけどね。
その点で、本当に悪いと思ってます。ごめんなさいでした」
「あ・・・いや・・・・??」
「ほんっとウチのラディルってば近所迷惑に村全滅させちゃうし、レディアちゃんと変な形でお別れしちゃったし」
「???」
最も、話の内容を完璧に把握する事が出来ないのは自分が知らなさすぎるか、それとも彼女自身が単に暴走しているかの判断が付きかねず、ただ、呆然と聞いているしかなかった。
そして一方通行な会話がしばらく続き、訳の分からない、何かの事情だけは聞き取れたのだが、一段落した所で切り返してみる。
どう考えても、あれが演技だとは思えなかったのだ。が、帰ってきた答えはこれ以上なく、あっけらかんとしていた。
「あ、それですか? 種明かしすると意外と簡単なんですよ。
レイドさんの奥にある記憶を使えば大丈夫って、紅さんの言われた通りにやっただけです」
「私の・・・記憶?」
「詳しい事は知りませんけど、そう聞いてますよ?」
「そう、・・・か」
それにどう対応し、何を言って良いのかがよく分からなくなったが、恐怖を感じていた時に頭の中に浮かんだ全ては確かになくなり、考えも簡単に纏まるようになる。
だからなのだろう。周りの気配を感じる余裕も出来たのは。
「ちっ・・・。またあんたか」
そう言い、姿を現したと言うか、気付いたと言うか。見えた女に見覚えはあったが、何処であったかまでが思い出せない。
ただ微かに分かるのは、自分と何かが同じだと言う事だけで、その後ろに居るもう一人の女、と言うより少女だろう子供と二人の男に着いては全く見覚えは無い。
その上、だ。少女だけがどうも浮いている気がするのは気の所為ではないだろう。男二人と、自分に妙な殺気を放っている女に至っては服装や持っている何かの道具自体に何処か統一感があるのだ。趣味が単に合うのかも知れないし、にしてはハンターのパーティーと言った具合にも見えないのは武器を持っているのが長身の男だけと言う所だろう。
それに変わり、少女は見窄らしい、それこそこの街の孤児の様な格好をしているのだが中身がまるで別物な様な雰囲気を纏っているのだ。さらわれてでも来られたと言った方がしっくり来る。
うって変わりレイチェルは先ほどの殺気や、恐怖を感じさせる雰囲気その物が幻だったように微塵も感じさせない様、封じているのが分かる。一度知ってしまえばそれが見抜きやすい様に小細工をしているのも分かるが、妙に凝った性格は案外普通にしている時も出ているのかもしれないと思った。
最も、そう言った事を考えている間も女は自分との距離を詰め、攻め入る訳ではないのだろうが友好的な雰囲気ではないのも分かる。
「こんな所で何してんのさ」
「・・・・誰だ?」
「忘れちゃった? ま、それならそれでいーよ。けど、あんたが一閃の雷光とか言うんでしょ?」
「そうだが・・・?」
偶然の次は初対面の人物にズバリと当てられる事に対しては、多少の疑問だけで済んだがそこまで自分の顔が知れている訳でもあるまいとも思う。
しかし漸くと言った感じに、名も分からぬ女が更に苛つく表情を見せた時に気付いた。
天帝と居た、敵でも味方でもない女なのだと。
よくよく考えて見れば紅の名前も彼女が最初に自分に言った人物なのだ。その上、自分の妹だとも言った様な気がする。
「なら、この子、皇都に連れて行ってやってよ」
だが忘れていた事すらも歯牙に掛けないのか。自分に対する応じ方とは全く違う、女性らしさを込め、少女と幾つかの言葉を交わし、前に出す。
最も、やはり自分に対する対応は変えないつもりなのか。少女が前に出た途端、自分に向かって放たれる殺気はやわらいだ物の鋭さだけは変わりはしない。
「何故私がそんな事をしなければならない」
そして敵意を見せる視線に対しそう返したのだが、帰ってきた答えは女からではなく少女から。
同時に、こんな場所で聞く名だとは思わなかった。
「我が侭は十二分に承知しております。しかし、私は帰らなければならない。皇都の、第一皇女として」
「お前がフェルト・・・いや、フェイシュアンか」
「はい。ですけど、その名前を何処で?」
「ルシがそう言って居ただけだ」
目的の人物と、こんな場所で出逢えるとも思わなかったが、偽物である、紛い物、と言う言葉は全く浮かばず、逆に偽物であろうと本物と取って変わっても良いのではないかと言う、ある種の男で言う貫禄が少女にはあった。
ただ気になるのは、攫われた期間が短かったにしろ、それと比例しない程の憔悴している表情をしているのだ。
目の輝きが失われていない事は不幸中の幸いと言って良いのだろうが、それが桁はずれた精神力のみで保たれている事は一目瞭然で、体力的には限界にきている筈だ。
そんな状況に居るからこそ、王としての資質が問われるのかもしれないが、自分だからこそ見抜けたと言える才能は一つ。
姿も、形も、年齢や性別さえ違う少女だと言うのに、若かりし日の、自分と共に戦争を生き抜いたシュレートやタハルと同じ眼をしているのだ。
それが何であるか簡単に言ってしまうのは難しいのだが、彼らの共通点であった部分も、この少女は色濃く受け継いでいるのであろう。それに、似た様な人物と出会ったばかりであるからそれがよく分かってしまうのだ。
「あと、別に畏まる必要など無い。ルシとそんな話し方で友人になれる訳がなかろう?」
「あー・・・れ?」
「普通にしてくれれば良い。むず痒い言葉遣いなど必要ないと言っている」
「それは分かり・・・分かった。けど、何で分かったの?
統一郎も一発で見抜いたしさ。そんな演技下手なの私?」
「初代とお前の雰囲気が似ているだけだ。それに、な」
「?」
種類は違うのであろうが、レイチェルの演技と何処か似た部分があるのだ。
迫真の「演技」ではなく、本心でやっている、と言う所か。二面性を持ち合わせていると言うよりもどちらも本物と言うべきだろう。
むしろ、レイチェルの場合は楽しんでいると言う共通点さえあれば、それがどんな事であろうとやって退けられる実力を持っているだけタチが悪い。
そしてしばらくの間、本人自身も自覚があって自分の視線を受けているのだろう、レイチェルの方を向いていたのだが、何にせよ礼が先だと思い、フェイシュアンを連れてきてくれた女に視線を向け直したのだが、まだ苛ついた視線を此方に向けているのは変わらず、両隣に居る男二人に何かを言われている様だったが、その対応を変えるつもりは無いらしい。
だから、下手に刺激するよりも、言葉は悪いがおだてる様にして礼を言おうと思ったが、それに変化が訪れたのは自分も感じ取れ、同時に口元だけで失笑してしまう。
そしてその部分だけは、同じ感覚を共有出来そうだった。
「何が可笑しい」
「名前も知らないが、お前は私の妹だと言ったな」
記憶が全て甦った訳でもなく、もしそうだったとしても彼女の事を知らないのは当たり前。
少なくとも、あの時以来、紅と言う人物と出会った事はなく今に至るまで何があったのかも分からないのだ。
その間に、自分と同じく剣に身を窶せる者、いや、武器その物に意思を持たせた者を造っていたとしても不思議ではなく、何より自分の妹だと言うのなら、彼女の性格も頷けるのだ。
極端な性格の主だった故に。
「従順な奴の次は反抗的な女の子か・・・あの方らしい」
「なにおう?」
「来るぞ」
そして懐かしさを感じながら、音もなく迫り来た光に向かい、彼女は己の剣を構え、それを見据えた。
自分が傷つけ、未だ殺し切れていない、六帝の一人を。
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