「あ、居た居た。全く私を置いて先に行っちゃうとは良い度胸してんじゃないのよ。で、今日の賞金はいかほど?」
心境とは裏腹に、言葉は簡単に出てくる物だ。ただし、それが本当に聞きたいものかはどうかはさて置いて。
そして店内に居たマスターはめかし込んだ彼女に気付いたのだろう。相反してレイナードは素直に聞かれた事に答えるだけで、顔も向けず無言のまま賞金の入った袋をカウンターに置いた。
「はー・・・ホント良いよなー。私もこの位稼いで見たいよ」
「今日は何にする・・・?」
いつものに決まっている、と思った所で、マスターの表情が変な事に気付き、視線の先に目をやれば、そこは彼女の腰。本来ならば何も無い筈なのだが、多分癖なのだろう。いつの間にかそこにはロングソードがあった。
「いつものヤツと、今日はこっちも頼むよ」
悟られない様に、と言うのは無理だろう。マスターの顔は笑っていた。だがレイナードの視線は剣の方にあり、多分、ボロボロになった剣の事を考えているのだろう。彼自身に付きまとうエピソードは様々だったが、最近で言えば闘技場で戦う度に持っている剣を折ってしまうのだ。それもたった一降りで折れてしまうのだから、これ程刀匠泣かせの傭兵も珍しいだろう。
男の割に異様とも言える程、白い肌と華奢に見える身体着きだったが、幾ら筋肉質とは言えそこまで簡単に剣で斬って折れると言うのは単に馬鹿力だと言うのが理由かも知れないが。
「そう言えばさ。今日は折れなかったね、レイナードの剣。何処で買ったの?」
丁度自分のへまを隠すには良い話題になると思い、そう言いながら口を開いたが声が上擦っていたが、そう言った事を気にしない性格で良かったと、何故かその時は安心してしまった。

アナザー・ナイン・ファンタジー■ACT:SCARLET DUSK