「じゃ、そう言う事なので宿で待っててください」
「・・・・・・」
帆村と二人で一時別れる事になった紅の表情はことのほか明るかった。しかしその頭には調子に乗り、酒場のウエイトレスにちょっかいを出しすぎた為、ベルベットからキツイ一発をお見舞いされた証であるたんこぶが一つ。かなり痛そうではあったが、自業自得なので誰も何も言わなかった。
そして紅が提案した方法だったのだが、結局最後まで秘密らしく、どうやら帆村と二人で行動する必要があるらしいのだ。それ故、今日はわざわざとった宿ではなく、帆村の家に厄介になるらしい。ただし、それは少年一人だけ。なにやらそう提案した時の紅は妖しげな含み笑いをしていたが、「今日」被害が及ぶのはどうやら帆村一人らしく、自分たちは「明日」だそうで。その為に休んでいて欲しいと言う事だったが。
「ホント、相変わらず底知れない子ね・・・?」
溜息を吐き、マディンは宿に帰ろうとしたのだが、ふと気付けばベルベットの様子は先ほどと変わらず、そう。紅の脳天を一発殴った時の様に興奮冷めやらぬらしいのだ。
「す、少しは落ち着こうよベル。ほら、身体休めとけってあの子に言われてるじゃないのさ」
肩に手を置き、宥めるようにして言うが、焼け石に水だったらしい。
「ふふふ・・・・」
「・・・べ、ベル?」
「帰ったら待ってなさいよ・・・。一晩と言わず、三日三晩可愛がってあげるから」
そして妙な事に意気込むベルベットを引きずりながら、今日だけは取りあえず平穏な夜を迎えられそうで安堵の溜息をもらすマディンだった。

アナザー・ナイン・ファンタジー■ACT:SCARLET DUSK