皇都までの道のり、と言っても、一時間ほど歩いた程度で街の中には入れる上に、ハイルーンの街の構造上、ハイルーン城までの道は迷う筈も無かった。何せ城を中心として十字を描く様に大通りが四つあり、どの大通りからも城は見えているのだ。夕暮れになるともあり、子供達は帰路を急ぎ、あれは主婦だろう。八百屋や露天商で売っている、異国の調味料などを買っている姿が平凡を漂わせていた。
だが、今の武士の心境と言えば、苛立ちを感じながら南通り<サウスストリート>を北へと歩いている所だった。
「くそっ! あのガキ何処行きやがった・・・」
街に入った所までは、確かにルシエドの姿は自分の隣りにあったのだ。そして相手が子供だと思い、観光名所を案内する様に「あれが城だ」と、説明しルシエドの方を見れば、既に姿はなかったのだ。
無論、ルシエドを探す為に彼は辺りの人々にルシエドの特徴を言いながら探しまくった。例えどんな依頼者、それがもし、賞金首のモンスターであれ仕事は仕事なのだ。その上、今回の仕事が失敗すれば次に何時、仕事を請け負えるかどうかは定かではない。そして共通貨幣五百枚、と言う報酬は破格故に逃すのも惜しく、それを促す様に腹の虫が鳴く感覚は狭まっている様にも思える。もしかしたら、苛立ちの原因はそれかもしれないが。
「おい、二本の剣を背負ったチビを見なかったか?」
「あ、ああ。見たぜ、さっきそこの角を曲がっていくのを」
「ありがとよ」
苛立った顔の為、聞いた男は多少怯えていたのかもしれない。だが情報を仕入れた武士は聞いた通りに角を曲がり、その通りの奥から聞こえてきた、悲鳴だろうか。それを聞いた所で走り出す。だがその通りは民家以外に、東通り<イーストストリート>へと繋がる道であり、その先にあるのは一軒の酒場と、ジェイルの言っていた嫌な台詞を思い出しながら酒場が見えた時、そこには既に人だかりが出来ている。
「悪漢を見ると所構わずエモノを振り回す、だったか? くそっ! やっぱり厄介事かよっ」
そして人だかりの中心に見えた、夕焼けの光を輝き返す二つの剣を見て、彼は一人愚痴を漏らした。

アナザー・ナイン・ファンタジー■ACT:GAN'S VERMILION