朝起きた時間は早朝の四時。用意は昨晩の内に出来ているのだから六時まで寝ていたかったのだが、自分の神経は思ったよりも繊細だったらしい。
「・・・・くそっ」
熟睡は、出来た筈なのだが眠りに落ちた瞬間、起きたと言う感覚で全く睡眠を取った気にはなれない。要するに身体だけ準備万端で精神状態はすこぶる最悪と言う奴だ。
最も、寝たと言う事実さえあれば気分転換も出来るのだが、一日の始まりであるこのとき、背中の奥と言うか、背骨全体にかけてと言うか。
「嫌な一日だな、今日は」
むずむずとこそばゆい様な感覚があるのは、述べた言葉通りの始まりだ。
こういう感覚だけは妙に鋭いので、便利な事は便利。前もって問題が何かは特定出来ないモノの、心構えだけは出来るのだから。
だが、その何かを回避する事は出来ないらしく、当たるも八卦当たらぬ面八卦的な部分があるので信用して良いのか悪いのかも曖昧なのだ。
「・・・・くそっ!」
二度寝するには時間的に半端であり、かといってすることもなく、怠惰な時間を過ごす様な趣味は持ち合わせては居ない。
結局の所、悶々とした気持ちを発散させる時にやる事は一つ。
「はぁ・・・」
そそくさとベットから起き抜け、着替えを済ませて顔を洗って、食事の用意をしてそれを食べ、終わったと同時に机やら引き出しやらの中にしまってある工具類を取りだして幾つかある銃も全て床の上に並べる。
「癖だな癖。治らんわこれは」
それを一つばらしては掃除してまた組み立て、それを繰り返すだけの作業なのだが、慣れてしまった今となっては目を見張るような速さで行える様になったのだ。
なので少し暇な時間などがあれば同じ事をやっているモノだから、本来掃除など必要もない位キレイになっている。
言ってしまえば、銃を使う仕事の前後と、その途中の約三回掃除すれば整備不良で動かなくなる等と言う事は無いのだが、使い勝手は新品同様と言う状態を保つには良いのかもしれない。
だが、それ以外にやる事が見付からないのもどうかと思う。
同時に、他の事を考えながらでも、半ば自動的になった手作業は絶対に間違う事も無いのだ。
「はぁ・・・。若いんだからもう少しこう、あるだろ?」
本を読むにしろ、部屋にそんな都合の良いモノがあれば何度だって読み返してやると、常々も思うのだが、買って来ようと思う度に忘れてしまうのだ。
そして掃除が全て終わった後は最近、はじめた銃の構える練習。
「はじめた、じゃなくて初めちまった、だな」
くるくると手の中で銃を弄びながら、頭の中で決めた目標に向かって何度も何度も銃を構え続ける。
自分で既に、どの程度照準がずれているのか。身体の何処を如何に動かせば一番早く構えられるのかも分かっているから、後は基礎体力と集中力さえあれば何時間でも続けていられる。
日々の積み重ねによって、自分の仕事の善し悪しも決まるのでそれを悪いと思うどころか、自分にしては良い傾向だとも思う。
しかしその一方でやはり、
「これこそ怠惰じゃねぇのか?」
頭の中はスッカラカンな状態を鑑みて、漏れるのは不満だけなのだ。
怠けているにも種類があると、たまに思う。
そして一人暮らしを初めて増えてしまった独り言に、彼は今日三回目の溜息と叱咤を吐き出す。
時間は早朝の四時三十分。
まだまだ、怠惰であれる時間は過ぎ去りそうになかった。

アナザー・ナイン・ファンタジー■ACT:GAN'S VERMILION