所詮、相容れぬ存在だからと言うのは、間違いなく逃げただけの道だ。
理解し合えなくとも。いや、理解し合う事は出来る筈なのだ。
同意するか、否定するかだけで、受け入れるも受け入れないもそれからで良い筈。
出来なかった理由など、ただの気の迷いと言うヤツなのだろうが、そのときはよほど自分に余裕がなかったのだと。冷静になってみれば、当たり前に分かる事も、渦中に居ると全く分からない事も数多くある。
若かった。
年甲斐もなく、取り乱していた。
それが見えないように取り繕い、ただ、自分に言いたい事だけを正当化しようと躍起になっていただけだ。
それが大人になったと言う事なのかと今、問われたのなら、間違いなく否と断言出来る。
そのときは、それが分からなかった。
環境が、そうさせたのだと簡単に言い訳は出来ただろうが、それも言わなかったあの時の自分は、それこそ。
子供だった。
その、一端の答えにたどり着く代償は大きかったのだと今は悔いている。
自分は万能でもなんでもないと分かっていた筈なのに。
刻まれた二つの出来事はどうしても、思い出す度に胸を締め付ける。
所詮、過去になった出来事など変えられる筈もないのに。
希に見る夢で、自分はただ、泣き崩れているだけ。現実はまるで正反対な顔をしていたのにだ。
互いの道を歩み始めただけの、あの瞬間。
あの時だけは、言いたい事も言わず、聞くべき事も聞かずで、悪かったと思っている。
だからどんな事よりもだ。
彼女のあの時の顔だけは、ハッキリと思い出す事が出来る。
どんな笑顔で居た時の顔よりも、それが自分が見た、最後の彼女の表情になってしまったから。

アナザー・ナイン・ファンタジー■ACT:VIOLET CARD