気遣ってくれたからこその言葉は、少しだけ自分の考える頭を軽くしてくれる。最も、変わりにこの場所と言う奴は嫌な気分にしかならない場所だったが。
紋章術で空間を無理矢理繋げたのだろう。本来なら、あり得ない程の術なのだから、何かしら通り抜ける際に副作用があってもオカシクはない。だからと言って心配しているのではなく、まるで嫌がらせの様なこの頭痛は多分、制作者がわざとやった事だと分かったのは入り口と出口の境を抜けてたどり着いた先で、思いの他、身体までが軽かったから。
どういう構造なのか、大学にでも帰って研究してみればハッキリする事だろうが、治癒をもしてしまう扉だったのだろう。ちらりと見えた、先に来ていたグレースの斬った筈の手の平には既に傷も血の跡すらない。
まぁ、こちら側へ来た際の痛みまで。放り投げ込まれる事など想定していなかったのだろうから、後頭部か、顔面でこちらの床に落ちた物はその辺をのたうち回っていたが。
「しっかし・・・何だいここは?」
そんな連中を後目に、驚いた声をあげるグレースだったが、当たり前だろう。自分も視線をあげた瞬間、目の前に広げる光景には開いた口が塞がらなかった。
神殿。そう呼ぶに相応しい、何処か冷たく、同時にぴりぴりと肌に来る緊張感は現実味がある裏側で、ここに立っている感覚すら淡れさせる程の物。ただ只管に伸びる磨き上げられた廊下の先は、全く終着点が見えぬ程の場所だ。灯りすら無いにも関らず、空間全てが見えるのは、何か魔術的な物が構造物その物に仕掛けられているのだろう。
その上だ。
おびただしい程に書き込まれた、紋章。
ついで違うと分かったのは、こんな行かれた大きさの紋章など一人の力で存在させる事など不可能だと分かったから。同時に、壁に描かれ何処までも続く廊下と同じくするそれは、間違いなく紋章(クレスト)ではなく、古代紋章(ルーン)。
「これもあんたのご先祖様が作ったなんて言わないよね」
「人間にゃ・・・こんな真似絶対出来ないわよ」
そして思い出したのは、自分たちの本来の仕事。
大地にすら書けるとすれば、地平の果てまで続く廊下の壁に刻み込む事など造作もないと言う事だろう。
「それこそ、神様でもなけりゃね」
それに付け加えたかった皮肉すら飲み込む程、この光景は巨大過ぎる物。
だが流石一番事情に精通しているだけあって、代わりに言ってくれた彼女の顔はただ、笑っていた。
「それもとびきりトチ狂った馬鹿野郎だ」

アナザー・ナイン・ファンタジー■ACT:VIOLET CARD