時に人は、いや、心があり、意思があるモノは選ばなければならない時が来る。

 誰にでも平等に訪れはするが、同じ時に決して訪れないであろう事。

 反面。

 いや、だからこそ、か。理不尽さを感じる事柄でもあるのかもしれない。

 張りつめた空気と、緊張感を感じざるを得ない空間の中でそんな事を考えながら周りを見回す。

 顔なじみの、熟練ハンタータチの顔はどれも強ばり、心なしか自分に敵意を向けている様な気さえする。

 その理由が分からず、驚いた顔をしているのだろう、自分に向かい、ここに連れてきたヤヨイは申し訳なさそうに言ったのだろう。

「すみません、騙したりなんかして」

 状況を見れば、これは事情を聞いて仕事をするかどうかを決める様な雰囲気ではなく、もう仕事をすると決めた様な連中しか居ない場所なのだと、同時にしなければならない状況に追い込まれたのだと言う事もイヤと言う程分かる。

 分からない状況だと言い張って、そのまま帰ってしまうと言う手段もあったろうが、信用出来るハンターばかりが集められている理由を鑑みれば、答えは自ずと出てくるモノ。

 何より、彼女はそう言う結論を出せる人物ばかりを集めたに違いない。人を見る目はある様だ。

 だから仕方なく笑い、

「もう良いわよ。気にしなくて」

 後は、自分のやるべき事を探すだけだった。

 まるで昔居た、そしてキライだった場所と同じ空気を感じながら。




































アナザー・ナイン・ファンタジー■ACT:VIOLET CARD





































「結論から言います。皇都と西側、もしかしたら南側の国も巻き込んで戦争が起こりかねない状況です」

「なら何故魔環師は出てこない? 皇都防衛が本分だとしても、そこまで割り切る必要は無いと思うが」

「魔環師サマ達は国家間の法律に基づいて行動するしかないんだよ。そう言う事を含めての話しだ」

「それに、ヤヨイの言った通り、まだ戦争が起こったワケじゃない。あくまで俺たちの仕事はそれを未然に防ぐことだ」

「その通りです。本当ならもっと人数が必要な事件なんでしょうけど、今現在集まった必要な人材はあなた達しか居ないのも事実です」

「やるしかないって、事か」

「そう面倒がるな。ココまでの人材を揃えたリョウちゃんの事、嫌いな奴は一人も居ないだろ?」

「そうだな」

「違いない」

 そして笑う、熟練ハンタータチ。そのどれもが、信用するに十分な経験と実力を兼ね備えた、今、皇都に居る最強のチームである事に違いは無いだろう。

 剣術師と言うハンターの中では上級職に位置する者は、バートン・ランドルとシグマ・レノンの二人。

 魔術師と言う、剣術師と同じ上級職の者も二人で、それぞれ名前はトーマ・セルゲイとヤーコフ・タロッサ。

 他にも魔術士、魔法士、魔導士の三つの職種を同時に極め、今は全く才能の方向が違う技闘士さえやっているユーリ・イワノフは「七色の牙」と言う二つ名で有名な男であり、その隣りでずっと腕を組んで話を聞いているだけの老人、ディオ・ブラスに至っては魔術師と剣術師を同時に極めんとする、時が時であれば魔環師になって居た程の人物なのだ。

 それだけの人材を集められるヤヨイに感服すらして、正直心の奥そこで自分がココに居る理由が分からなかった。

 だが、あくまでその面子に加えられるだけの過去が自分にあった事を調べ上げたのならば、納得も出来る結果。

 望んでも居ない、二度と踏み入れないと誓ったかもしれない立場ではあったが。

「で、さっきから気になってたんだけどさ」

 若手の、それでも実力派のシグマが此方を向き、何処か好戦的な視線を投げかけてくる理由も分かる。

 明らかに、場違いなのだ。紋章士と一目で分かる格好でもなし、もし分かったとしても、彼らに取って見れば一介のクレストラーでは出来ない仕事だと分かっている筈。

 しかし、無視する暇もなく、自分の過去を知っている者が居る事自体が、少しだけ気に喰わない。

「心配するな。ガーランドはただの紋章士じゃない。聞いた事くらいあるんじゃないか? 凍顔の知将の二つ名を」

「へぇ、あんたがあのアイス・フェイスだったのか。てっきり男だとばかり思ってたがな」

「もうその名前は捨てたの」

 そしてクセの様にして、いや、癖であった様に殺気を飛ばしてやるが、意に介した風も無い。

 挑発に乗る事が馬鹿げた事だと分かっていても、その過去をあまり言われたくないと言う気持ちでも察してくれればそれで良い。

 何より、この場に居合わせた全員ならばそれは分かっている筈なのだ。

 誰もがハンターである前は、何処かの国の軍に所属していた身であり、同時にそこを抜けて来た人物達ばかりなのだから。

 その理由は様々であれど、嫌気が刺したと言う共通点はあるだろう。

 この皇都ガ・ルーンだけなのだ。徴兵制度が無いまま、ずっと他国からの侵入すら許したことのない国は。

 だから逃げた先で、自分の軍に所属していたと言う身分を利用されない街や国はこの皇都以外存在しない。

 例外として血の気の多い連中は北方のアルフェイザに行くらしいが、精々行ける場所と言えばその程度なのだ。

 平和とされる東方であれ南方であれ、自分たちを頼る、もしくは利用する様な思想を持った者達が多い世界では、住みにくい世界なのだ。

 所詮、自業自得と言われればそれまでなのかもしれないが、少なくとももう自分は二度とあの場所に帰るつもりはないと、バイアは思っていた。

 どんな理由があれ、平気で子供を徴兵する戦いもしない奴等が仕切っている場所など御免被りたいのだ。

 ココに、西方出身者が多いのもそれが一つの理由なのだろう。自分が凍顔の知将などと持て囃されていた時、自分の昔の二つ名を言ったトーマは「赤い手の魔術師」と呼ばれた一流の殺し屋だった。

 自分が知る限り、今は笑っているシグマも「霞斬り(ミストマーダー)」と言うある部隊の千人長。バートンはシグマと同じ国に属し、万人長と言う、一兵卒の兵士の中では最も位が高い地位に居て「魔王剣」の名はかなり有名。

 だが、それでもヤヨイが歯がゆいと感じるのは致し方ない事だった。

 所詮、自分たちは単純に言えば他者よりも要領が良く、一握りの才能ある者の中で努力した、と言うだけなのだ。

 精々一人頭同時に相手に出来るのは二十人前後であろう。この中で一番総合的な強さを持ち合わせているディオでさえ、寄る年波に勝てないとすれば多くて百人。それはもし、戦争を止められなかったのなら、死にに行けと暗に示していると言う事なのだ。それがどういう人物の言って来た言葉かを弁えているからこそ、今も彼女は焦った様子を隠せないでいるのだろう。

 だが、この中で唯一の自分の違う部分は、そしてそれが連れてこられた理由なのだと、分かり切っていた筈だ。

 認めたくなく、同じ様な場所にして仕舞いかねないと言う懸念からそれを押さえていたのだが、言われ任命される位なら自分で先手を打って置くのが自分のやり方。

「とにかく私がココに居るって事は、昔の仕事の技術を要して居るって事でしょ。ならこんな所で会議をするんならさっさと行動に移った方が良いわね」

「おいおい待ってくれ。別に俺はあんたを信用しちゃいないぜ」

「それはワシも同じじゃな。この中の全員が、元々敵国同士だったと言っても過言ではなかろう?」

 しかしシグマに続いて反応したのは最高齢のディオ。話を聞いていたのはあくまで様子見であり、この爺さんの変わっている所は相手の声を聞いて技術を見抜くと言う「貫目(ぬきめ)」の二つ名を持つモノなのだ。正直、他の五人を相手にするよりもこの爺さん一人相手にまともに立ち会えるとは思えない。

 何せ、平和主義者とは言え、若い頃は「王族殺し(ロイヤルキラー)」と言う二つ名まで持っていたのだ。西側では多分、今も最重要指名手配犯の一人であろう、極悪人と言っても過言ではなく、何故皇都に居るのか一番分からない人物でもあろう。

「ヤヨイには悪いが、俺も同意見だ。それに戦争を止めるにしても、俺たちはアルフェイザ伝説の傭兵じゃない。あくまで一介の兵士だっただけだ」

「ヒトの事言えた義理じゃないが、この女が昔何をやったか知っているのか?」

「それは・・・・・国単位の虐殺の事は知っています・・・」

 悪気があって言っていないのだろうが、自分の過去をココまで知られている「他国」の人間も珍しいと言えば珍しい。

 何処から調べてきたのかは分からないが、どの記録にも自分の名前は愚か、素性すら載っていない筈なのだ。その為に、未だ自分ではない、二代目の「凍顔の知将」は西側最強を誇るダルト連合国に所属しているらしいと言う風の噂まで届いてくる程。

 その名を使っただけで、対外の国は無理を聞く事を知っているのは、自分が結果的に引き起こした大虐殺を覚えているから。

 言って良いのか分からないではなく、ヤヨイの視線は此方に向きながら複雑な表情をしているが、頭の中では信じられないと思いながらも記録に基づいた事実を頭の中で再現して気分を悪くした、と言う顔だった。

「なら、俺たちの言いたい事は分かるだろ? 正直な所を言わせて貰うが、この女に使われたら命が幾つあっても足らない」

「言っちゃ悪いが、俺たちは殆ど戦場の最前線から昔の地位を手に入れてんだ。どれだけの屍の上に立ってるのかも分からない位殺したさ。けどコイツはその重みが分かっている風に見えないね。ずっと上から命令してただけで、戦場で何が起こってたかなんて知りもしねぇ」

 殺意すら抱きかねないその視線は、間違いなく本気なのだと分かるモノ。

 同じ、西側の出身者だからこそ、なのだろう。自分のやった罪と言うのはそう言う事なのだ。一体どの位の恨みを買ったのか、皆目検討も着かない程の人を紙の上で殺した。

 だが、気になる事は一つ。あえてヤヨイは何も言わず、此方を見るだけで何かを待っている様なのだ。

 期待するなら筋違いだとも言いたいが、この状況下でする視線にしては、少し意味が違う様な気がする。

 幾つかの考えを感情を凍てつかせながら巡らせ、彼女が何をしたいのかを導き出す。

 それに要した時間は、ほんの数瞬だったろう。

 決断が早いのは本来良い事なのかもしれないが、軍師としての仕事で即決を意味するのは虐殺する兵士の数と等しい。

 自分に取ってあの時感じていた感情は、それこそ楽しみだったろう。特殊な事情があれど、言い訳にしかならず、案を出したのも、実行させたのも、何より「それだけの本物の命が死んだ」と言う事を知らなかったのが自分の罪深さだ。

 若かったと言う一言で済ませられない罪を知らず知らずの内に背負ったと言えば、この男達は一体どういう意見をぶつけてくるのだろうか。

 そこまで巡らせた思いが、今のこの場でムダな考えだと分かっているのだが、失笑してしまったのは間違い。

「何が可笑しい」

 先陣を切ったのはシグマで、ある意味予想通りだろう。他のヤヨイを除く四人は自分がやらなくとも、彼が勝手に動くと判断しているからこそ高みの見物を決め込める。

 だがだからこそ、この男を止めれば糸口が見付かると言うのと、今の場合は同じなのだ。

「ごめんね。でも、貴方を笑ったワケじゃないわ。そんな無駄口叩くあなた達全員が可笑しかったのよ」

「てめえが出ていけばさっさと事を初めてやるよ」

「本当にそれで良いのかしら? ディオ・ブラス老なら気付いているのではないですか。この場に、たったこれだけしか「居ない」理由を」

「あん? 寝言は寝て言え売女が」

「オツムのない貴方になら確かに娼婦がお似合いなんでしょうけど、彼女達だって貴方に抱かれる位なら死んだ方がマシなんじゃないかしらね」

「自分の立場弁えて言ってんのか?」

「そう言う貴方こそ、誰を目の前にして喋ってるか分かってるの?」

 視線と視線のぶつかり合い。一歩でも動けば、どちらかが間違いなく死ぬであろう均衡状態。

 相手が動けないのは、自分の正体を知っていても、凍顔の知将の二つ名の意味をよく知らない故に動けないのだ。

 ハンターには二つ名を登録する制度があり、皆好き勝手につけているのだろう。熟練ハンターでもない素人がたまに仰々しい二つ名を持って死んで行くのは何人も見ている。だが、自分の二つ名は軍師時代に他人が勝手に付けたモノであり、自分でそう名乗った事など一度も無い。

 それが意味するのは、彼らとて認めたく無いのだろうが、自分たちと同じ、畏怖されつけられた名だと言う事。

 恐怖の象徴であるそれの意味は、安易に付けられたハンターの二つ名とは違い意味があるのだ。

 別段、氷のと着けば何でも良かったのだろうが、知将と言う二つ名を持っているモノはこの大陸中でも、数人だけで限られているのだ。

 そしてその共通点は、頭が良いと言うだけではなく、頭「も」良い、だ。

 この大陸で有名な知将と言えば傭兵国とまで言われるアルフェイザに居る「氷麗の知将」クイナ・ハーシェンであろう。彼女ほどの知将は、歴代の知将と呼ばれる者の中でもかなり秀でているらしく、死亡率の高すぎる傭兵王国で二代のアルフェイザ王に仕えた側近と言うのは彼女以外居ないらしいのだ。

 そしてそれに肩を並べて伝えられた二つ名が自分だと言う事。

 噂だけが一人歩きしすぎた為に、実力を計りきれないで居るのだ。

 それは本来一介の剣士とは言え、剣術師と言うハンター制度の中での高位に位置する者に取ってあってはならない事なのだろうが、自分もそう言う立場に居るモノだと言う証になり、この均衡を生み出す力にもなる。

 それが彼女の罪の生み出した力であれ、バイア自身、死ぬ気もなければこんな所で殺されてやる義理も無いのだから、使おうとするのも当たり前かもしれない。

 ただ、それを素直に受け入れて貰おうと虫の良すぎる話しも無い事を理解している故に、相手がしびれを切らす前に話を続けた。

「さっきの続きだけど、あんた達しか居ない理由、本当に考えて無かったの?」

「それがどうした。仕事ででも出払ってんだろうよ」

「そんなほいほいあんたら安い仕事引き受ける様になった訳。私と同じで貧乏生活してる身には見えないけどね」

「当たり前だろうが。俺らだって割の良い、俺たちしか出来ない仕事以外引き受ける気は無い・・・・何が言いたいよ」

「俺もそれが聞きたい。あまり焦らされるのは好きじゃないんでな」

「簡単に言えば、引き抜きされた後だったって訳よ」

「はぁ?」

「ヤヨイが言ったでしょ。「南」も巻き込んだ戦争になるかもしれないって。けど、南方の人って滅多に戦争なんかしないじゃないの。シグマ君、南方出身の人と戦争した事はあっても、南方の「国が」一度でも戦争したと聞いた事があるかしら?」

「歴史のご高説なんざどうでも良いんだよ。馬鹿にしてんのか?」

「女だったら、誰でもバイタだなんて言われたらムカツクのよ。その辺弁えない坊やは黙って聞くのね」

「!!」

 その瞬間、シグマが切れる事も分かっていたのだが、押さえるつもりは毛頭無い。疑問を持ち始めた兵士と言うのは、熱くなる者と逆に冷静になる者の二通りしか居ないのだ。

 そう学んで、少し違うのかもしれないと皇都に来てから思っていたが、当てはまる者が居るのもまた事実。何より、シグマの後ろに居たバートンが冷静になって行く表情の移り変わりが分かり、無表情ながらも以外とフェミニストだと知っていたから、自分の安全が確保されたのだと分かったのだ。

 事実、顔を真っ赤にして怒っているシグマも、元々の階級制度が身に染みついて離れないのだろう。「元」万人長のバートンに羽交い締めにされながら僅かに此方に向かって威嚇するだけで抵抗はしていない様子。

 それが確認出来たから、話を続けようと思ったのだが、この場に居て話の結末が分からない者の方が少ないであろう。

 シグマはまずその一人である事は違いない。

 が、漸く気がついたのだが、ディオ・ブラス老は結論を聞く前に分かっているからと言って、正直、鼻ちょうちんなんぞ垂らして寝ないで欲しいと言うのが本音。それを気にするな、と言うユーリやヤーコフの何処か暖かい視線もあったのだが、少しだけ声に怒りが混じったのは言うまでもない。

「とにかく、皇都に居る他国からの、この場合は亡命って言うのかしらね。何にせよ、私たちと同じ様な立場の人物は少なくとも五十人は居たはずよ。それなのに全部で集まったのはたった四人だけ? そんなに大がかりな仕事が最近あったなんて知らないし、あったとしたらあんたらまで居ない筈でしょ」

「だからさっさと結論だけ言え!!」

「シグマ・・・お前まだ分からないのか。バイアはこう言っているんだ、ヤヨイが走って俺たちを集めたのは西か南か、どちらかの国に引き抜かれる前にそうしなければならなかったからだ。お前とて、キライな西ならいざ知らず、南方になら着く気は少なからずあるんだろうが」

「じゃあ、初めからそう言えっつーのまどろっこしい・・・。けど、そんな七人しか残らない程、上手い話がゴロゴロ転がってたらあいつらも疑わんか普通?」

「じゃあ、例えば、南方の生活を支える一つの条件が輸入って事知ってる?」

「それを何らかの方法で断ちきり、それを皇都が理由だと西が吹き込みでもすれば南も戦争せざるを得ない状況が出来上がるだろうが。少なくともそう言う状況の人たちを救いたいからこそ、俺たちはこの国に来たと言う動機を忘れたのか?」

「言っては悪いが、情報操作は西の特技だろう? 後は五十人以上の交渉役を皇都に商人としてでも潜り込ませて、南の状況を伝えながら懇願でもすりゃイチコロって事さ」

「ま、そーゆー事ね。シグマ君、分かったかしら?」

「・・・・・・」

 黙り込んだのは理解したと見て良いだろう。ここまで説明するのも面倒だったが、もう彼以外は大体の事情を把握していた様子。

 それを生み出したのが自分と言う事もあり、信用は少しはして貰えたのだろう。要するに、凍顔の知将と言うままであれば信用出来ないと言う事を覆せば良かったのだ。

 元々そんな性格でなかったと言えば、この連中はどう思うか少し知って見たい所でもあるが。

「けど、そこのオバサンなんかに分かるんだったら何であいつらまで騙されてんだよ・・・」

 しかし、まだ納得が行かないらしく、不満顔のままのシグマ。何処までも子供じみているのは23と言う年齢の所為か、それとも猪突猛進的な性格でもしているのだろうか。

 どちらにしろ、自分が言うべき事ではないと思い、誰かに視線を巡らせたのだが、皆が皆、自分を見ているのに気付いて溜息と共に漏らす。

「私たちの共通点は?」

「亡命した元軍関係者じゃなかったのかよ」

「そう言う意味じゃなくて、もっと性格的な事。騙されたって、言い方は悪いけど、他の連中はみんな「絵に描いた様なイイヒト」だったでしょう?」

「???」

「自分の事くらいもう少し見つめ直して置きなさい。私たちの共通点は、あそこで寝ているディオ老と同じで面倒くさがりって事よ」

「バイアの場合は、貧乏性だがな」

 そして失笑、と言うか、バートンの一言はシグマと寝ているディオ老以外の笑いを取るに十分だったらしい。

 そんなイメージで自分を見られていたと言うのは心外だったが、心当たりが一概に無いとも言い切れない節など多々ある。

「あ、そう言えばちっこいのと今日は一緒じゃないんだな」

「シグマくーん? そんなにサリアに逢いたいの〜? へ〜、知らなかった」

「な、何でそうなるんだよっ!! バートンさんも笑ってないでイイカゲン離してくださいよっ!!」

 そして笑いが絶える迄の間、しばしの時間は要したが、手早く会議を済ませるに十分な結果が得られたのなら良しとするべきだろう。

 しかし、問題事が山積みである事に違いは無く、多方面へと散っていった、バートン、トーマ、ヤーコフ、ユーリ、そして寝ぼけていても事情を把握していたある意味凄いディオ老を信じて自分たちも動くしかないのだ。

「何であんたと俺が組まなきゃならないんだよ」

「あんた一人で何が出来るの? 精々剣を振り回す位でしょ。それに、他の連中なら「あんた」と違って頭の回転も速いからね」

「く・・・・今に見てろよ・・・・」

「はいはい」

 お荷物と言えばそうだが、腕だけは確かな事を思えば、普通のハンターと組むよりはずっとましだろう。

 ただ思うのは、何処か問題児と言う辺り、サリアに似ているのは気の所為だろうかと言う事だけ。

「ホント、こんなんばっかよね私」

「なんか言ったかオバサン・・・」

「い〜え。坊や」

「くぬっ・・・!」

 そしてもう一つ、此方は朗報と言うか、良かったと思う事なのだが、会議が終わって出て行くヤヨイの顔から切羽詰まった表情が少なくなったのだ。

 事情を聞いた所、この情報を仕入れたのが今日の朝方だったらしいのだ。それで良くもここまで人数を集められたと、皆は関心していたが、無論、この国に居る軍関係の亡命者の数も把握していたらしく、心配で堪らなかったらしい。

 それを隠してまで、自分をココに連れてきた交渉術は誉めるべき事だろう。同時に、そこまで背負う理由を深くは聞かなかったが、一つ分かっているのは彼女が南方出身者であると言う事。

 誰であれ、故郷を失いたくは無いのだ。

 それは自分も同じ事。だが、故郷を捨てたのではなく、既に失っている自分は、西側と戦う事に何の異論も無い。

「さっさと準備して行くわよ坊や」

「俺はシグマだクソババアっ!!」

 だから自分の目が、やりがいのある仕事の為に輝いている事に、満足しても、少しだけ納得行かない部分もあった。

 今尚、凍顔の知将の名が知れ渡っているらしいと言う情報を聞き、何より、もともと住んでいた、ダルト連合国はまだそんな無意味な事をしているのだと言う事だ。

 いつまで続くのか分からない、無意味な血で血をあらう戦争を続ける西側。

 今回で全ての戦争を終わらせようとは思えないが、少なくとも一部分でも消せるのならば、初めて他者から蔑まれるように付けられた二つ名さえ使う事に躊躇いなど感じない。

 その決意を胸に、彼女は晴れた街の下を走るのだった。
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