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名古屋の隣町、大府市のペットクリニック。斉藤動物病院です。

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FIV感染猫における抗ウイルス薬(AZT)の効果

 猫免疫不全ウイルスに野外感染した猫に、人AIDSに用いられている抗ウイルス薬、AZT (zidovudine) を投与し、その効果と副作用を調査した。 
 調査した15頭の猫はすべてARC期であり、臨床症状として、削痩(11/15)、口内炎(11/15)、慢性下痢(1/15)貧血(4/15)、高蛋白血症(7/15)、高γグロブリン血症(7/12)などが認められた。
また、4頭の猫において、小腸の生検を行ったところ、2例は、粘膜下にリンパ球や形質細胞の重度の浸潤や、絨毛の萎縮が認められた。1例は、粘膜下のリンパ球や形質細胞の軽度の浸潤と、筋層の肥厚および変性が認められた。1例は、正常であった。 
 猫は3群に分けられ、A群には、AZTを5mg/kg1日2回3週間経口投与した。B群には10mg/kg1日2回3週間経口投与した。C群には5mg/kg1日2回3週間経口投与し、その後続いて10mg/kg1日2回3週間経口投与した。AZTの効果は、臨床症状の変化から判定し、5例については、CD4とCD8の比率の変動も測定した。臨床症状は、病変部の数や重篤度、体重の変化、活発性を調査し、非常に有効、中等度に有効、軽度に有効、無効の4段階に評価した。
 15例中4例が中等度に有効、5例が軽度に有効、6例が無効であった。各群の間には、明白な違いは認められなかった。CD4/CD8は、5例すべてが正常猫と比較して低い数値であり、AZT 20mg/kg/day 3週間投与前後の変動は、1例は軽度に上昇したが、他の4例は減少した。これら5例は、投与期間中における臨床症状の変化は認められなかった。
 AZT投与中に、臨床症状が悪化した例は認められなかったが、体重が10%以上減少した例が1例、PCVが5%以上減少した例が5例、BUNが10mg/dl以上増加した例が3例認められた。  

NO.

環境

性別

去勢避妊

年齢

FeLV

病歴

症状

病期

AZT

症状の変化

総合評価

室内外

6

-

疥癬、鼻気管炎、FeLV感染

外傷性皮膚欠損癒着悪し

ARC

10

皮膚病変治癒

中等度有効

室内外

6

+

半年前より口内炎、体重減少

口内炎、軽度削痩、食欲不振

ARC

10

変化なし

無効

室内外

8

+

半年前より体重減少、貧血

重度削痩、口内炎

ARC

10

変化なし

無効

室内外

S

11

-

2年前より口内炎、削痩

重度削痩、口内炎、食欲不振

ARC

10

元気食欲改善

軽度有効

室内外

7

-

1年前より腎機能障害

体重減少、皮下膿瘍

ARC

10

体重の増加

有効

室内外

4

-

慢性鼻炎、喘鳴、削痩

口内炎、喘鳴

ARC

20

体重増加、口内炎および呼吸の改善

有効

室内外

7

-

1年前より口内炎

口内炎、結膜炎、鼻炎、体重減少

ARC

20

口内炎および結膜炎の軽度改善

軽度有効

室内外

C

4

-

2年前より口内炎

口内炎

ARC

20

食欲不振、口内炎軽度改善

無効

室内外

S

8

-

半年前より口内炎、体重減少

口内炎、流涎、体重減少、食欲不振

ARC

20

食欲および流涎の改善

中等度有効

10

室内外

C

2

-

1年前より口内炎

口内炎

ARC

20

変化なし

無効

11

室内外

12

-

好酸球性肉芽腫

口内炎、体重減少

ARC

20

口内炎の改善

軽度有効

12

室内外

S

10

-

削痩、水腎症

重度削痩、水様下痢便

ARC

1020

下痢の改善、体重軽度増加

軽度有効

13

室内外

4

-

1年前より口内炎、小腸肥厚

口内炎

ARC

1020

口内炎の改善

軽度有効

14

室内外

S

11

-

1年前より流涎

重度削痩、口内炎、重度流涎

ARC

1020

変化なし

無効

15

室内外

S

15

-

削痩、慢性鼻炎

重度削痩、化膿性鼻炎

ARC

1020

変化なし

無効

考察:世界獣医学大会に発表した講演要旨をそのまま記しました。
現在(97年7月)人エイズ感染症は、化学療法により、かなり効果をあげているようである。また、ワクチンの完成もそう遠くはないのではなかろう。
今回の実験においては、臨床的に特別目立った効果はあげられていないが、適応症例を絞っていけばある程度は効果的だと思われる。ただ、問題は、CD4,CD8の測定と、薬が高価であることである。最近、人エイズ治療薬が認可がおり、購入可能になった薬があるが、高すぎて使う勇気がでてこないのが、現状である。もし、お金を出すから治療してほしいと言う方が見えられたら、ぜひご相談ください。
ちなみに、猫エイズウイルスは非常に蔓延しており、外でよくケンカをし、3才以上の猫の約50%が感染している。症状がでてくる時期は、個体差が大きいが、5年後位が多い
ようである。口内炎を発症し、腎不全でなくなる猫が多いようである。

その後解説(2014年10月30日)
 猫のエイズに対する対処は当時から見るとずいぶん変わりました。エイズ期に入り、重篤な病態の猫がずいぶん減りました。2才頃にエイズの診断を受けた猫が、17才に癌で亡くなったのは私にとっては衝撃でしたね。猫のエイズウイルス感染症は無症状期が長いのが特徴ですが、ついにエイズウイルスの影響をうけずに、ほぼ寿命を全うすることができました。エイズに感染しても、環境、栄養状態などに気をつけて飼育すれば、決して怖い病気ではないと考えられます。そんな中で、猫のエイズウイルスに対するワクチンが市販されました。人のエイズウイルスに対する製品が未だにできないのに、なぜ猫の製品ができたのは不思議でなりません。また、東海地方に多いとされているC型ウイルスに対しては効果がないことが分かっている製品が、市販されていることが不満です。本当に屋外飼育の猫に予防されているのでしょうか?咬まれないと伝染されないし、発症せずに寿命を全うする病気に対してワクチンは必要なのでしょうか?AZTは最も初期タイプの薬ですが、その後数多くの種類の薬が発売されています。かつては、人では感染したら5年以内に必ず死亡するといわれた病気ですが、長期間延命される方も非常に多くなってきたようですね。おそらく、猫に有効な薬もあるでしょう。
 しかし、先に述べたように人体薬の猫のエイズウイルス感染症に対する効果を調査することは、あまり意味が無いように感じています。むしろ、猫白血病ウイルスのキャリアー(持続感染状態)の猫に対して、同じ薬をチャレンジしてみるのがいいかもしれませんね。同じレトロウイルスですから。ただ、多くの獣医師はインターフェロンを適当に注射し、よく効いたと評価するのでしょうね。薬屋さんはそれを聞くと大喜びしますから。公平な評価は、プラセボを飲まされる不幸な猫が出てきますから、商売第一の町の動物病院では行うことは難しいでしょうね。

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