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名古屋の隣町、大府市のペットクリニック。斉藤動物病院です。

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猫免疫不全ウイルス(FIV)および猫白血病ウイルス(FeLV)の感染調査。


 東海地区の猫355頭について、FIVおよびFeLVの感染調査を1993年から1994年にかけておこないました。検査施設は名古屋市内の8病院、その他の愛知県内の病院8病院、岐阜県内の1病院、静岡県内の1病院です。調査項目は、品種、飼育環境、性別、去勢避妊の有無、体重、症状の有無などです。検査された猫は無作為に選ばれた例ではなく、飼い主の検査への同意があった例です。



 今回の調査は、無作為抽出ではないため、実際の野外での感染率が正確には得られていませんが、室内外飼育で病気の症状のない例における感染率が、実際の野外での感染率に近い値と言えるでしょう。この値は、全米の調査に近い値です。
 雄の方がケンカをすることが多いため、メスよりも感染率が高いです。猫白血病ウイルスは、咬傷がなくても接触すれば感染しますが、ウイルスが体内から消失することがあります。猫エイズウイルスは、体内から消失することはありませんが、長い間発症しないため、高齢の猫ではFIV感染率は高く、FeLVの感染率は低くなっています。


 
上のグラフは最初のグラフと違ってウイルスの感染率が高くなっています。これは検査をした猫が、何らかの病気を持っていて、感染の疑いがあるか、検査の必要な猫を多く検査したからです。


 
上の図は年齢が3才以上の場合を見てみたものです。FIVの感染率は年齢が高いほど高くなり、FeLVの感染率はあまり変化がありません。FIVは無症状期がだいたい5年以上と長いの対し、FeLVの持続感染例では3年以内に90%が死亡すると言われています。



オス猫の去勢の有無における感染率の違いを調べてみると、著しい差が認められました。これは免疫学的や性ホルモンの影響と言うより、行動上の違いであり、 他の猫とのケンカや接触が少ないせいでしょう。病気になりたくなかったら、まず、去勢をお勧めします。



FIV感染症は免疫低下状態になる病気ですが、特異的な症状がほとんどありません。口腔疾患は唯一特異的と言えるかもしれません。臼歯の奥の扁桃腺付近が赤くなったり、肉芽形成を起こしたります。流涎が続いたり、食事の時に痛がったりします。FIV感染症では、長い無症状期のあとにARC期、エイズ期となります。口内炎は、免疫不全状態の時に生じたものであり、簡単には治療できません。最初は抗生物質に反応しますが、治りにくい時は臼歯を抜歯します。それでも発赤、痛みが治まらない場合は副腎皮質ホルモンの投与が効果的の場合があります。

まとめ
 感染調査により、猫免疫不全ウイルス(FIV)と猫白血病ウイルス(FeLV)の特徴がみえてきました。特に、猫免疫不全ウイルスの感染率が非常に高いのに驚かせられました。しかし、このウイルスにより生態系に影響が出ることはないでしょう。人のエイズウイルスが見つけられてから20年もたっていませんが、猫のエイズウイルスはもっと昔からあったかもしれません。猫白血病ウイルスは、その遺伝子配列から、エジプト時代から有ったらしいと言う話を聞いたことがあります。
 人のエイズウイルスは猿のエイズウイルスが突然変異したのではないかと考えられていますが、猫のエイズウイルスが人に伝染することは決してないことはサイエンスにも報告されています。
 FeLVに対してはワクチンができましたので予防はできるようになりました。FIVについてもワクチンが製品化しましたが、その効果について充分検証がされてはいません。人において製品がないのに、なぜ猫にだけワクチンができたのでしょうか?また、私の住んでいる愛知県では、特異的にサブタイプのC型のエイズウイルスが流行しているようで、現在用いられているワクチンは、このタイプには効果がないことが分かっています。ちなみに、猫のエイズウイルスのC型が初めて分離できたのは、私の病院で入院していた猫からです。東京大学の獣医、内科の教授の辻元先生は、隣の知多市の出身であり、学会で知り合ってからいろいろと指導を受けていました。先生の教室で、分離に成功したそうです。

 人エイズウイルスに対する化学療法においてはある程度の効果がみられているようで、米国においては死亡件数が減少し始めているようです。ただ、その薬剤が非常に高価なために、経済的に豊かでない国では充分用いられていないようです。猫においてはこれらの抗ウイルス剤を用いた報告はほとんどみられず、使用の可能性はまだ低い。私は人のエイズの治療薬の、猫のエイズ感染猫に対する効果の調査を行い、世界獣医学会で発表しましたが、内容的には臨床に応用することは難しそうという結論でした。猫に用いられない理由の1つは、薬が高いこと、2つめは薬が副作用が強いこと、3つめは病気の進行が極めて遅いことなどが挙げられます。
 残念ながら根本的な治療は望めない病気ですので、治療は対症療法が中心となります。FIV感染症は腎不全や慢性胃腸炎などが死亡原因になる場合が多く、FeLV感染症は貧血で亡くなられる例が多いようです。
 

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