98年12月30日 仕事納め
98年12月24日 尿路系細菌感染の話
98年12月 8日 不要犬の引き取りの話
98年11月26日 動物臨床医学会年次大会
98年11月19日 猫のエイズの話
98年11月 9日 医者の指示の話
98年11月 5日 耳の毛の話
98年10月20日 霊長類研究所の話
98年10月14日 獣医大学の話
98年10月12日 中毒の話
98年10月 1日 ウサギの話
98年9月18日 電解質の話
98年9月 4日 マダニの話
98年8月24日 ミケ猫の話
98年8月17日 昆虫採集の話
98年8月11日 犬を放さないで
98年7月28日 肥満の話
98年7月 4日 腎臓病の話
98年6月25日 ノラ猫の病気の話
98年6月17日 熱射病の話
98年6月 9日 猫の爪抜きの話
98年5月22日 血液検査の話
98年5月 6日 脳の病気
98年4月24日 風とともに犬去りぬ
98年4月15日 胃腸疾患の話
98年4月 8日 狂犬病集合注射の話
98年3月19日 診断と予後の話
98年3月 7日 また、ノミ駆除薬の話
98年3月 2日 バードウォッチングのすすめ
98年2月20日 ノミ予防の新薬(高すぎるぞ三共!)
98年2月18日 今年が本厄
98年1月28日 鼻腔内腫瘍のCT検査
98年1月12日 本年もよろしくお願いします
97年の日記
98年12月30日 今日で今年の診療はおしまいです。通院されている方や、預かっている猫ちゃんもいますので完全に休みにはなりませんが。おきまりですので、今年を振り返ってみます。今年は、全体的に私の進歩がなかった年と言えるかもしれません。学会発表は1つできましたが、内容はかなり不満が残っています。本業の診療についてはそれなりにがんばったと言えないこともないですが、はっきりここが進歩したと言えるところが見つかりません。唯一、自己免疫性溶血性貧血のワンちゃんを、サイクロスポリンという薬で治療できたのが自分なりに嬉しい思い出でした。研究面についてが1番私を落胆させており、研究所まで車で10分の環境にいながら、なかなか足が進まないし、慣れないことをしようとしているものだから全然うまくいっていません。でも来年には1区切りできそうです。趣味の方では、野生動物のメーリングリストに入ってまして、自然保護の情報が送られてきて勉強になりました。ニフティーのフォーラムでも新しい友人がたくさんできました。息子たちとの遊びでは、カブトムシと
クワガタがいるポイントを教えて貰ったことは大きな収穫でした。
来年は、3年間働いて貰った榊原先生が、退職されるので、だいぶ忙しくなりそうです。後がまはまだ決まっていません。人間の方の家族が2月には増える予定ですので、今年遊びすぎたぶん、心を入れ直して、仕事と勉強に励みたいと思います。このホームページを見にきている皆さん、来年もよろしくお願いします。たまには、メールもくださいね。
98年12月24日 猫は寒さが嫌いで暖かいところで寝ることが好きですが、発情は冬が多いんです。発情したメス猫を中心に、夜の活動が活発になり、ケンカや事故などが多くなってきます。そのような、猫ちゃんがよく病院に来られるのですが、このところ、尿中に細菌感染が見られた猫や、犬がたまたま多かったので、そのことについて書きます。猫の腎臓病は非常に多くみられる病気ですが、原因は様々で、しばしば特定できません。ただ、尿中に細菌が見つけられたときは、これが腎臓を悪くしているのだと確定できます。猫の尿検査は比較的簡単にできます。メス猫の場合は、手で膀胱を圧迫してやるとオシッコが出てきます。オス猫で圧迫排尿ができない場合は、尿道にカテーテルという管を入れて採取します。たいてい、無麻酔で押さえつけて採取します。ペーパー試験紙で蛋白、出血などを調べ、顕微鏡で尿中の細胞などを観察します。細菌は非常に小さいので、数が多くないときには顕微鏡では見つけられませんが、多くの場合、顕微鏡で確認できます。細菌がいそうだなと思われたときは、細菌培養検
査を行います。私の病院で行う細菌培養は、厳密な方法ではありませんが、臨床レベルでは十分正確です。羊の血液が入った寒天培地(丸いシャーレに入っている)にオシッコを数滴落とし、細い針金で広げます。その上に抗生物質が湿らせてある濾紙を数種類置きます。シャーレをふたをして37度の孵卵器に1日入れておきます。細菌が寒天の上で増殖すると、白い点として肉眼で確認できます。濾紙の近くで増殖が見られない場合は、その濾紙の抗生物質が増殖を抑制していることが分かります。1番効果があり、副作用が少ない抗生物質を投与していけば病気が治っていくわけです。実際には輸液や、食事療法も必要です。抗生物質の投与は最低2週間は必要で、いったん治ってからも、定期的な尿検査はした方がいいと思います。以前、投薬を中止すると1ヶ月後には必ず尿中に細菌が出現する猫ちゃんがいました。全身状態はさほど悪くなかったのですが、1年ほど経過した後に突然亡くなられました。オシッコの回数が多いとか、尿量(飲水量)が多い、尿に血が混じる、最近痩せてきたなどの症状が見られたら注意してくださいね。
動物病院とは関係ありませんが、藤前干潟の埋め立てに環境庁が反対して、名古屋市なども見直す動きが出てきたようで、大変気分がいいです。私自身が活動しているわけではありませんが、野鳥など自然の生物を大事にしていこうと考えている人たちにとって嬉しいことだと思います。私は、人より鳥が大事だとは考えていませんが、あそこを埋め立てなければいけない理由とか、人工干潟を作ればいいとかいう話は普通の人間はおかしいと思って当然だと思います。同じ理由で、なんとか名古屋万博が中止にならないかと期待しています。
98年12月8日 先日名古屋テレビが取材に来て、診察風景がテレビに流れました。といっても私がメインにうつっていたわけではなく、犬とその飼い主がメインです。その犬とは、数ヶ月前に愛知県西尾市で100頭あまり犬を飼っていた人がいて、飼育環境があまりにも悪いので保健所などが強制的に引き取った犬の1匹です。繁殖用に飼っていた犬らしく、純血種が多く、動物保護管理センターが手当をした後に一般の方に里親を求めたものです。引き渡しの日には、多くの人が集まり、人気の高い犬は10倍以上の抽選になったそうです。テレビ局は、劣悪な環境で飼われたかわいそうな犬、安楽死を逃れるために里親を申し出る人たち、里親にのしかかる大きな負担、高額な料金を請求する獣医、という流れで放送されてました。診察風景は数秒流れただけで、看護婦が13000円あまり請求しているところをしっかり放映していました。病院の診療費は皆気になることろで、テレビを見ている人は面白かったと思いますが、こちらとしてはちょっとがっくりでした。今回は、狂犬病の注射及び登録料が含まれてい
たため(6700円)高くなりました。血液検査(1500円)、皮膚掻き取り検査(500円)、糞便検査(500円)は、今回動管センターの指示もあり、必要でした。フケ、ダニ用シャンプー(2000円)と皮膚炎のための抗生物質(1400円)を併せるとこれくらいの料金になります。過剰診療とは思えませんので、ご理解をお願いします。
動物保護管センターは、引き取り手のない犬や猫を収容し、安楽死を行っている施設ですが、定期的に里親を募集し分譲しているそうです。普段でも、希望者全員にはいき渡らないようです。今回は、マスコミなどで騒がれたため、獣医師会などから特別に補助があり、病気の検査や治療がしっかり行われ、たくさんの犬が譲られました。動管センターは、少しでも不要犬を減らす努力をしていますので、そのようなことも放映していただきたかったと思いました。
98年11月26日 11月21,22日は大阪で動物臨床医学会年次大会があったので行って来ました。小動物臨床獣医師が1番たくさん集まる学会です。今回から、場所を変えて大阪港のアジアトレーディングセンターでありました。海遊館も近いので、まずはそちらをちょっと見学。行く前にホームページを見たら、なんと19日にジンベイザメが死んだとのこと。ショックを抱え行ってみたら、まだ1匹生きていました。ガラス越しに目の前数十センチに迫ってくる姿は、スターウオーズを見ているような迫力で、久しぶりの感動を味わうことができました。体とは不釣り合いでなに考えているんだか分からない小さい目や、いつも半開きで間の抜けている口もかわいかったでした。
学会の方は、症例報告157題、パネルディスカッション、卒後教育セミナー、一般講演、ビデオセクションなど盛りだくさんで、10の会場同時進行ですから、最大でも1/10しか聞くことはできません。どこに行こうか迷っている内に聞きたかった報告を逃してしまうことはしょっちゅうです。プロシーディングは3冊に分かれており、総重量は2.06kg、22000円でした。発表内容がレベルアップしてきたこともありますし、座長さんがしっかりしてきたので、質疑応答などもスムースでした。論点のはずれた、程度の低い質問はがっくりすることが多いですから。今回、特に印象に残った講演は、東京大学の森先生の行動学の教育講演でした。行動学の総論は、学校でも習わなかったし講義をじっくり聴くのは初めてですから。問題行動の分類と、行動治療の方法の話が中心でしたが、随所にユーモアのあるエピソードが入ってきて、素晴らしい講演でした。東大のイメージがちょっと変わってしまいました。問題行動を治療するには、まだまだ私が勉強しなくてはなりませんが、簡単ではなさそうです。検査データーがほとんどない場合が多いので、飼い主から状態を正確に聞き出さなくては
いけないことや、飼い主のしつけの仕方に問題がある場合が多いので、人間の方を治療しなければならないことが難しそうです。前にも、肥満病のことで書きましたが、飼い主の考え方が正しくなれば、簡単に治るはずですが、現実的にはなかなか治りません。道具を使った行動治療の方法も紹介されていました。無駄吠え防止用のアボアストップ(吠えると犬の嫌いなスプレー噴射される)は、通販でも購入可能ですので試してみられるのもいいかもしれません。当院の患者さんも効果がありました。
98年11月19日 昨日、ホームページを見られた方から電話があり、猫のエイズに関する質問でしたが、丁度別の件で電話の最中だったので、充分なお話ができず失礼しました。猫のエイズや白血病など、ウイルス感染症に関しては自分なりに勉強している方なので多少はお答えできます。猫のエイズウイルス感染症については、獣医世界大会に投稿したときの講演要旨を載せてありますが、一般の方には難しすぎるかもしれませんね。猫エイズについて、要点を簡単に説明しますと、人には決してうつらない、猫同士のケンカで咬まれてうつされる、非常に蔓延しておりよくみられる病気である、感染してから発症するまでだいたい5年以上はかかる、治療は2次感染を抑えることが主になる、といったところでしょう。AZTは、人エイズの治療薬で結構古くから用いられていますが、猫への投与試験があまりなかったものですから、自分でやってみたのです。結論をいうと、あまり効かなかった、です。使い方が難しいのです。CD4陽性のリンパ球数が減少しはじめた頃から、ずうっと投与していけば、延命効果は 期待できると思います。AZT以外の抗ウイルス薬を同時に投与すればなおのこと効果が期待できます。問題点は、猫のリンパ球の分類はかなり特殊な検査で、測定してくれる検査機関はありません。猫に、数ヶ月、数年以上AZTを飲み続けさせようという飼い主はほとんどいません。AZTは、特殊で比較的高価な薬ですので常時置いてある動物病院は少ないと思われます。(処方される薬の料金は病院によって違ってきます)人エイズにおいては、AZTのような抗ウイルス薬を数種類組み合わせて投薬するようにしており、かなり効果が上がっているようです。ワクチンはまだできてはいないようです。
98年11月9日 先日、猫を飼っているご婦人がこられ、主人が喘息の発作が出るようになり、医者から猫を飼わないように指示されたと相談がありました。その家では、以前から長い間猫を飼っており、今まではそのようなことがなかったのに、急に病気になったとのことでした。検査の結果で、猫のふけなどが原因になっていたとのことでした。奥さんは、以前からこちらにかかっておられる方で、大変猫好きな方ですので、猫を捨てる気はないが、猫に何か病気がないか調べてくれとの依頼でした。アトピーのような病気は、原因となる抗原物質をできるだけ排除することが第1の治療ですので、医者の指示はもっともだと思います。じゃー、猫を捨てなさいとはなかなか私の口からは言えませんでした。人間の病気は、人の医者が診察するもので私が口を挟むことはなかなかできません。お医者さんを信用して指示に従いなさいと言いたいところですが、奥さんは猫を続けて飼いたいと言っています。喘息は重度の場合は死んでしまう病気ですが、病気を持ちながら通常の生活を送っている方も多いです。病気の程度が
肝心なんです。原因も猫だけではないと思います。家の埃やダニなどを排除するように、カーペットを全部取り除くとか、枕をビーズのものにするとかすれば、病気が和らぐかもしれません。この時は、猫に対する指示としては、シャンプーを定期的にするように指示しました。多少はふけや抜け毛が減ると思われたからです。私がなにを言いたいかというと、病気によっては医者の指示を完璧に守る必要はない場合があると言うことです。もし、すべての人が医者の指示に従っていれば、糖尿病はかなり減ると思いますし、肺ガンもかなり減るでしょう。人の医者もそのようなことはある程度は分かっているとは思います。
私も病気を治すに当たっては薬の投薬方法や、食事の内容など指示しますが、ある程度は患者さんの判断に任す場合もしばしばあります。オス猫の尿道閉塞は非常に多い病気で、あっという間に死んでしまうので注意が必要です。病気の再発防止には、食事療法が重要ですが、処方食は市販のフードの3倍ぐらいの値段になります(だいたい1匹の猫1ヶ月分が3200円)。たくさん猫を飼っておられる場合はその分負担が大きくなります。先日、市販のフードにも猫の膀胱疾患用と書いてかるものがあるけれどどうでしょうか?と聞かれて困ってしまいました。安くていい商品があればそれを使うのは当たり前ですが、日本の市販フードがどれくらい病気の治療に効果があるかは情報がないんです。ですから、高価な処方食をお勧めするしかないのですが、市販のものを使っても再発はないかもしれません。その辺は、飼い主さんの考え方にゆだねたいと思います。原則的には、こちらの指示どおり治療していただくと病気は治りやすいですから、ぜひ守ってくださいね。
98年11月5日 私はあまり床屋さんが好きではなく、3ヶ月に1度ぐらいしか行きません。まず、鏡に映った自分の顔をじっと見ていることに耐えられないからです(特に、醜いというわけではありません)。最近、髪の毛が伸びてきたなあ〜と思ってましたら、ふと、耳の中から毛が伸びていることを発見しました。長さ2cmぐらいのものが5,6本あり、抜いてみました。最近、安い床屋さんしか行っていなかったので、耳の毛を切ってくれなかったかもしれません。人の耳の毛は、ほっておいても病気になることはないと思いますが、犬の耳の毛は、外耳炎の原因になりますので抜くようにしています。犬の外耳炎は、非常に多い病気で、特に長毛種で垂れ耳の犬に多く見られます。プードル、マルチーズなどは、1,2ヶ月に1度は抜いておいた方がいいと思います。外耳炎は、耳の穴の炎症で、主に細菌感染が原因です。細菌は耳に普段いる菌で、増殖しやすい環境になると炎症を起こします。耳の毛が多すぎると、埃や水が入ったときに汚れやすく、細菌が増えやすくなってしまいます。長毛種のワンちゃんを 飼っておられる方は、定期的に美容院に行くことをお薦めします。耳の毛を抜いてくれるはずです。ゴールデンレトリバーは、長毛種ではなく耳に毛が生えてはいませんが、外耳炎になりやすいですね。コッカスパニエルもそうです。外耳道が湿潤で、細菌が増えやすいと思われます。これらの犬種は、定期的に耳を洗浄してあげるといいと思います。病院で耳専用の洗浄液をお渡しして洗浄してもらっています。外耳炎の詳細については、私の大学の卒業論文テーマでもありましたし、レポートを書く予定ですので、しばらくお待ちください。
98年10月20日 先日、犬山市の京都大学付属霊長類研究所を保健所の方たちと見学に行って来ました。チンパンジーのアイちゃんは小学生なみの学習能力があるので有名で知っておられる方も多いと思います。建物はけっこう古かったですが、思っていたより大きい印象でした。教職員は38名、大学院生や研修員たちは32名おられ、進化系統や、社会生態、行動神経、分子生理などを研究されているそうです。私はどちらかというと開業よりは研究者に向いている気がするので、研究所を見学するのは非常に楽しかったです。(残念ながら才能、能力がありません。)霊長類を研究している人は世界中でもあまり多くはないと思われるので、それを行っている人間にも興味がもたれました。おもしろい話はいくつかありましたが、チンパンジーと人間では遺伝子が97%同じという話がありました。また、研究所で生まれたチンパンジーは、知能の実験などがしやすいという話もありました。私のような素人が考えると、チンパンジーと人は才能はほとんど一緒であるから、環境さえ違ってくれば、似た能力を発揮で
きると思えます。猿の惑星は案外あり得る話にも思えます。
社会形態や、進化系統などはフィールドでの研究が必須です。日本では、下北半島や、上信越、屋久島などに観察施設があり、世界ではアフリカや、南米、東南アジアで調査が行われているそうです。私もやってみたいですね。
十数年前の話ですが、私は野生の猿の治療をしたことがあります。大学の後輩が、京都の嵐山でニホンザルの研究を行っていたのですが、そこの猿が犬に腕を食いちぎられて弱ってしまったを相談を受けたのです。ペットなら文句なく治療を受けさせるべきでしょうが、半野生の猿で、研究の対象になるぐらいですから、人間の手で治療をするのは自然の状態とはいえなくなり、治療しなくてもいいという意見もありました。また、手術費用が出せないという問題もありました。結局、私が車をとばして京都まで行き、薄雪つもる山を登って山小屋で断脚手術を行いました。後輩からは感謝されましたが、そこで研究を行っていた人たちすべてから感謝されたわけでなく、後味が悪い点も残りました。この猿は高齢でもあり、放すと山を下りる恐れもあったため、その後はおりの中で余生を過ごしたとのことでした。野生動物を治療しても自然復帰できない場合は多くあり、その後の面度を誰が見るというのは非常に大きな問題になっています。
98年10月14日 今日の朝日新聞の1面のトップ記事は、国立の獣医大学の編成の話題でした。北海道大学と東京大学を除く国立大学に獣医学科がなくなり、東北大学と、九州大学に新たに獣医学部が造られるというものです。2001年をめどにしているそうで、遠い話ではなさそうです。牛乳は余ってくるし、肉は貿易の自由化で畜産農家は減ってくるわで、獣医師の働き場は減る傾向にあり、獣医師の社会的な存在意義は低下していると見なされているのだろうと思います。1番悲しいと思っているのは、OBでしょうか。私の母校は、公立大学(大阪府立)ですので、今回の編成には入っておりませんが、獣医学科から獣医学部への昇格がうまくいかないと、存続は危ないという話は10年以上前から有ります。
獣医師の社会における仕事場はいろいろあり、保健所や家畜試験場などでの公衆衛生部門、豚や牛などの繁殖や病気に関する家畜防疫部門、犬猫などの小動物臨床部門などがあります。生物学や薬品関係、医学関係の研究者にも獣医師はたくさんいますが、獣医師の資格が必要である場合は少ないです。私の職業である小動物臨床は、社会全般の広い目で見ればかなり特殊な職業であるといえるでしょう。そして、社会的な貢献度から見れば、高いとは言えないと思います。動物病院がたくさん潰れるようになっても、公的資金導入は決してないと思います。
最近、獣医師を目指している高校生からメールをもらいました。彼らにとっては、ますます、受験競争が激しくなってくるでしょう。私立大学の方は、学生減少の話は聞かないので、国立志望生徒が流れることになるでしょう。小動物臨床で開業希望なら、どの大学へ行っても免許は一緒ですから、出身大学はあまり関係ありません。全体的には、私立大学出身の先生が多く、私の母校出身者は愛知県内では数人です。大学を選択するときに1番の理想的な基準は、指導を受ける教授を選んで受験することが理想だと思いますが、あまり現実的ではないかな。母校以外の大学の詳しいことは知りませんが、母校を選んでよかった点は、学生数に対して教員数が多かったのはよかったと思います。私は、ほぼマンツーマンで指導を受けることができました。小動物臨床にしても、研究にしても自分がやらなければ能力は上がりません。小動物臨床をしっかり勉強するつもりなら、英語はしっかり勉強すべきです。留学も考えておいた方がいいかもしれません。
98年10月12日 ちまたでは、砒素中毒の話題が連日のように報道されています。その中で、お医者さんがどの様に診断したかという話には特に興味を引かれます。カレー事件のように1度に多数の犠牲者が出た場合は、特別の検査機関が調査し、診断できるだろうと思いますが、町医者に、「ちょっと具合が悪い」ぐらいで診察を受けてもまず診断できないだろうと思います。少なくとも私は無理だろうと思います。中毒を疑わせる症状だとしても、組織中の微量物質を検索する方法が非常に特殊であり、うまく検査してくれる機関が見つかったとしても、かなり高額のものになるでしょうし、時間がかかるだろうと思います。
犬の重金属中毒では、鉛と銅が有名です。鉛中毒は、つり用のおもりを食べてしまった場合に起きます。激しい嘔吐と、神経症状を呈し、レントゲン検査にて、胃に鉛が残っているので診断できます。血液検査でも、血液塗抹標本を見ると、特徴的な非再生性の貧血と、好塩基性の顆粒が赤血球内に見られます。鉛は、銃の弾にも含まれており、北海道では、ワシ類が散弾銃にうたれたシカの肉を食べて、その時にタマを同時に食べてしまい、鉛中毒でなくなる例が急増しているようです。10月18日には、野鳥の会などが主催して、この問題についてワークショップを行うそうです。
銅中毒は、ベトリントンテリアなどの犬種特異的な病気で、肝臓に銅が貯蓄していくのだそうです。僕はまだ診察したことがありませんが、別の犬種で、慢性活動性肝炎の犬を調べようと思ったことはありますが、肝臓を5gほど取らねばならないのと、費用が6万円ほどかかると聞いて断念したことはあります。
重金属ではありませんが、最近、猫イラズ(ネズミ駆除薬)を食べてしまった犬がこられました。この毒は、血が固まらなくなるので、ビタミンKを注射しなければなりません。摂取量がさほど多くなかったのと、治療が速かったために発症せずに済みました。もし、毒物を摂取したのがわかったならば、すぐに病院に相談してください。早い時間ならば、嘔吐をさせることができます。私は、催吐剤にオキシドールをよく使います。胃の中が泡だらけになって、泡と一緒に異物が吐き出されます。先日は、ゴールデンに100mlほど飲ませ、軍手を吐き出させるのに成功しました。
98年10月1日 私はウサギやハムスターなどの専門医ではありませんが、最近患者さんが増えてきました。昨日、ウサギの毛球症の手術を行いました。体の毛をウサギが嘗めているうちに胃の中で玉のように固まってしまい、胃腸が詰まってしまって、ものを食べられなくなる病気です。有名な病気ですが、手術したのは初めてでした。猫にもみられる病気ですが、手術をしなければならないほどの重症の症例には出会ったことはありません。ウサギは、猫と違って嘔吐ができないようで、それも悪化の要因になると思います。診断は、触診とレントゲン検査によりますが、今回はバリウム検査も行いました。12時間経ってもバリウムは胃から先の腸へは入っていきませんでした。胃を切開し毛玉を摘出しましたが、胃袋のほとんどが毛で埋まっていました。しばらくは、流動食だけを与える予定です。
今日の小学生新聞に、動物愛護団体が学校では動物を飼わないように警告しているとの記事が載っていました。休日は餌をやらないとか、雄と雌を分けていないためどんどん増えている、病気になっても手当をしないなど飼育環境が悪すぎると言うのです。私たち町医者にとっても見逃せない問題ではありますが、個人営業という立場もあり、こちらから積極的に学校に指導するのも商売と取られてしまいます。ずいぶん前に近くの小学校のウサギの雄を10匹くらい去勢手術をしたことがあります。公的機関で飼育されている動物でしたので、安くやってあげました。市からも、予算が付いたとのことでした。オス同士のケンカなどで怪我の治療もしょっちゅうやっていましたが、いつも連れてこられていた事務員さんが別の学校に移って行ってからは、ぱったり相談はなくなりました。学校の動物の世話や病気の治療は、特定の動物の好きな人に任されている所が多いように思います。PTAが、がんばって、飼育環境を改善させた学校もありました。学校と獣医師との関わりが密接な地域もたくさんあります。私の友人も、定期的に学校で動物の病気の話をしているそうです。動物の飼い方の指導書を作
られた先生もおられます。文部省レベルで話が進むと、すべての地域でうまく行くと思うのですが...。動物を好きでない人、さわれない人が増えているのかな。
98年9月18日 夏の間はさほど重症な患畜さんは来られませんでしたが、ぼちぼち変わった病気の患者さんがこられるようになりました(別に季節が関係あるわけではありませんが)。いま、口蓋裂のワンちゃんや、多尿のネコちゃんが来院しています。口蓋裂の話は近い内に症例報告に載せたいと思っています。多尿のネコちゃんは、他院にて2週間前から治療を受けていたが改善しないということで来院してきました。白いメス猫で2才だそうですが、非常に痩せておりました。診察の結果、腎臓疾患であることがわかりましたが、血液中のナトリウム(Na)が127mEq/Lと、異常に低い値でした。カリウム(K)は7.5mEq/Lと高い値でした。ナトリウムやカリウムは電解質といわれ、血液中の浸透圧を維持したりするために、非常に重要なものです。わかりやすくいうと、体には塩が非常に重要であるということです。細胞レベルで濃度を調節されているために、血中濃度が変化することは滅多にありません。ナトリウムの濃度を一定に保つため、体の水分の量が調節されています。塩分をたくさん取ったときには、水分が体
にたくさん残らねばなりません。すると、血液の量が増えて高血圧になりやすいことになります。このネコちゃんは、腎臓の機能が働かなくなってきて、尿がたくさん出る状態になっていました。十分水を飲めば脱水は防げたかもしれません。しかし、猫はあまり水を飲まないのですね。重度の脱水が起きた状態の時には、点滴をして水分を補給してあげると改善します。点滴は、たいてい血中浸透圧と同じものを使いますが、ナトリウムの濃度が薄くなっているものもあります。おそらく、このネコちゃんは、不適切な点滴をされて状態が悪化したと思われました。ナトリウムを多めに含んだ生理食塩水と、重炭酸の点滴により5日後には、正常なナトリウム濃度になりました。今日の診察では、尿量も減ってきており、点滴しなくても脱水しないようになりそうです。
血中Na濃度が低くなり、K濃度が高くなる病気で、有名なのは副腎皮質機能低下症があります。血中コルチゾールを測定すれば診断でき、このネコちゃんは正常でした。現在、1匹のワンちゃんが通院しています。ミネラルコルチコイドという特殊なホルモン剤を毎日投与してもらい、月に1度血液検査を受けてもらっています。非常に高価な薬ですので飼い主の経済的な負担は大変なのですが、比較的良好で、今現在、1日500円程度です。一般的には、その倍くらいはかかるそうです(犬の大きさによります)。
98年9月4日 夏休みが終わり、朝夕涼しくなってきましたが、まだ日中は暑く、犬もマダニに刺されることがあります。飼い主さんはダニだとはわからずに、イボができたとか、湿疹ができたとか行って来られます。マダニとは、草むらにいるダニで、小さいものでゴマぐらい、大きいもので大豆大になります。草の上の方に登っていって、動物がくるのを手を広げてひたすら待っています。犬に乗り移ると毛をかき分けて皮膚にくらいつきます。数日間は食らいついたままじっくりと栄養分を吸収しますが、満腹になると落下し、地面で成長します。犬の体でどんどん増えることはありません。ダニの顎が皮膚にしっかり入ってますので、取るときにはピンセットや鉗子が必要です。抜けた後は発疹ができたり、イボになる場合もありますが、たいていは数日で治ります。ただ、数が相当多いとダニの唾液による中毒症が起こる場合もあるそうです。4年ぐらい前に数千匹のダニに食われた犬が来院されたことがあります。全身に鱗のようにダニがついていて、思い出しただけでも寒気がするほど気持ち悪かったです。金属
製の櫛で、できるだけ取りましたが、1回ざっと櫛を通しただけで、10匹ぐらいは櫛についてきました。毎晩犬を放すそうで、近くの草むらでついてきたのでしょう。ダニは草むらに入らなければ感染しませんので予防は単純なんですが、飼い主が生活方法を変えてくれないのが問題なんです。駆除、予防にはフロントラインスポットを使っています。肩に数ml垂らしておくと、1ヶ月間はダニがついても24時間以内に落下するそうです。今年から販売になった薬ですが、評判はよさそうです。(ノミ駆除には2ヶ月間有効)
このマダニは、病気を伝染する場合があります。有名なのは症例報告でも紹介したバベシアという血液の寄生虫があります。日本では近畿地方に多発していますので注意が必要です。人にもうつる病気では、ツツガムシ病とか、Q熱などがあります。
マダニ以外にも、犬や猫に感染するダニの種類はたくさんあり、病気の症状、治療方法は様々です。症例報告に載せてあるものもあるので参考にしてください。
98年8月24日 先日、小学生新聞にミケ猫の話が載っていたので紹介します。ミケ猫とは、毛の色が黒と白と茶(オレンジ)の3色がある猫で、メスしかいません。ところが、東京のお店にオスの三毛猫が飼われていたのです。毛の色は遺伝子の組み合わせで制御されており、3色の毛の色が出る遺伝子は、性染色体にあります。性染色体は、メスはXXで、オスはXYですが、オレンジ色を発現させるO遺伝子は、X染色体上にあり、劣性遺伝子oと組み合わされた、Ooの遺伝子型を持つ猫はオレンジとその他の2色の組み合わせとなり、これに白色部が加わると三毛猫となるそうです。オス猫では、Ooという組み合わせはできないため、三毛猫は誕生しないことになります。つまり、オスの三毛猫は遺伝子の病気であり、性染色体が、XXYになっているだろうと想像されています。
猫の遺伝疾患はあまり多くは知られていません。有名なのは、白猫に難聴が多いことです。白毛で、青い目をした猫がいたら、見られないようにして、耳のそばで手をたたいてみてください。びっくりしたら正常です。
今月半ばに、カウンターが1万を越えました。多くの方に見ていただいて励みになります。ありがとうございました。ぼちぼち、他のコーナーも充実させていきたいと思っていますので、ご意見、ご批判をお待ちしております。
98年8月17日 動物病院の話ではありませんが、昨日、愛知健康プラザで、名和昆虫博物館の館長である、名和秀雄先生の講演がありましたので、息子2人を連れて行って来ました。名和先生は私が子供の頃から、ラジオやテレビで活躍されていたので、よく知っていましたし、先月、昆虫博物館へ行って来たばかりでした。私は子供の頃、小説家の北杜夫氏の影響もあって虫取り少年でして、夏や秋には子供と虫取りをし、今年は標本箱も作っています。昨日は、1番前の席で聞いていましたが、先生の出したクイズに息子が正解することができ、褒美にオリジナルの本物のチョウが張ってある絵はがきを頂いて、いい思い出ができました。スジグロシロチョウと、モンシロチョウを見分けられる子供はあまりいないかもしれませんね。
獣医の中には、虫取り少年はけっこういますよ。私の同級生の男性30数名のうち10人ほどが昆虫に詳しく、5名ほどは生物研究会に入って、さらに虫取りを続けていました。ここまでいくとかなり病的で、冬の間に蝶の卵をとってきて、春に孵化させることなどをやっていました。小さい頃から、野外で遊んでいるうちに動物にも興味を持ち獣医大学に進んだのだと思います。私は家が農家でしたから、イヤでも外で遊んでいました。ブドウも栽培してましたからカブトムシはたくさん捕れました。
最近は、虫取りの環境はいろいろな点で変わってきていますね。まず、カブトやクワガタをお店で買うことは昔(約30年前)はありませんでした。あと、昆虫採集の道具(鋼の枠の網など)や、標本箱などが手に入りにくくなっています。昔は、デパートで売っていました。昔は町中ではほとんど見かけなかったツマグロヒョウモンチョウが、公園などに植えられているパンジーにつられて、町中に出現し始めています。今も変わっていないのは、子供は虫取りが好きだということです。先日、カブスカウトのキャンプに1日付き合いましたが、ほとんどの子供は魚を捕まえたり、虫を捕まえたりすることが大好きでした。2日間のキャンプで、ミヤマクワガタ1匹、コクワガタ2匹、カブト1匹、センチコガネ3匹、オナガアゲハ2頭、カラスアゲハ1頭、ノコギリカミキリ3匹などを捕まえることができました。名和先生も力説しておられましたが、虫は子供が捕ったぐらいでは減りません。汚い怖いなどの偏見を持ってはいけません。どんどん外へ出て虫取り遊びをすることが、自然保護の概念を生み出すのだろうと思います。
98年8月11日 子供たちが夏休みになりましたので、定番の海水浴に行きました。多少は海水が汚いのは我慢して、近場の人工海岸の新舞子というところです。あまり広いところでもなく、けっこう混んでいたのですが、やっぱりいるんですよね、犬を放す人が。ゴールデンが2匹、ポメラニアンが1匹いました。犬は係留の義務がありますので、放してもらっては困ります。特に、公共の場で、人が多いところならなおさらです。犬を嫌いな人は世間にはたくさんおられ、そのような人には、できるだけ迷惑をかけたくありません。ルールを守って飼っていただき、ペットの社会的な位置づけを向上してほしいのです。町の公園に行くと、ペットの糞を始末しましょう、との看板をよく見かけます。私の住んでいる大府市では、公園の入り口に、ペットを入れないでください、と書いてあります。ペットを排除しようという姿勢なのです。ペットにとって住みやすい町づくりをするには、飼い主がきちんと飼っていただき、犬猫は安全で迷惑をかけなく、かわいい生き物であるという認識を、ペットの嫌いな人たちにも感じ
ていただくようにならなければいけないのです。
先日、犬の嫌いな友人の奥さんと話をしたところ、彼女はベルギーにしばらく住んでおられ、そこでは放し飼いの犬をたくさん見かけたが、全然怖くなかったそうです。ベルギーでは、犬を飼う前に訓練学校(?)に入れることが義務づけられており、町の犬はみんな非常におとなしいそうです。子供は連れてきてはいけないレストランでも、犬は連れてきてもいいそうです。日本と比べれば夢のような話ですね。奥さんは、昔犬に噛まれてから嫌いになったそうです。噛みつく犬も、徐々に減っている傾向があり、飼い主のモラルも向上しつつあるので、日本もベルギーのようになることは全くの夢ではないのですが、1部のモラルのない人が目立ってしまっていることは寂しい限りです。
98年7月28日 最近、体重38kgのシェットランドシープドック(シェルティー)を入院させました。このワンちゃんはもともと骨格が大きく、適正体重は23kg位だろうと思われます。一見ほとんどコリーです。今年で10歳になりますが、私の再三の忠告にも関わらず、年々体重が増加し、ついに動けなくなってしまったので入院の羽目になってしまいました。このワンちゃんは股関節形成不全の持病も持っているのです。肥満は摂取したカロリーが消費したカロリーよりも多い場合に起こると考えられます。実際には腸の機能とか、膵臓肝臓の機能、様々なホルモンなどの影響もあると思いますが、詳細にはわかっていません。犬の肥満を治すには餌を減らせばいいのですから簡単のように思えますが、私が体重を減らすように指示して、実際に減量できるワンちゃん(ネコちゃん)は実は少ないのです。肥満になったワンちゃんのほとんどは偏食です。乾燥タイプのドッグフードはほとんど食べず、肉や魚、チーズ、ソーセージ、ペットのおやつのジャーキーなどを主食にしています。これらは塩分が高く、また 少量でもカロリーは非常に高いです。体重減量を指示するときは、まずこれらを食べさせないようにし、できるだけ決められたドッグフードを食べさせるようにしてもらいます。ワンちゃんとの根比べをするとたいてい飼い主の方が負けてしまい、高カロリー食を与えてしまいます。今回、入院して処方食への食事療法をはじめました。3日間は全く受けつけませんでしたが、その後1日おきぐらいには食べてくれるようになり、10日目から毎日、缶詰タイプと乾燥タイプの処方食を毎日食べるようになりました。ほとんど寝ていましたが、朝夕の散歩は正常に歩行はできました。2週間後の退院の時には、2.45kgの減量ができました。退院後1週間たちましたが、なんとか食事療法は続けていただいていますが、体重は余り変化ありません。さらに、食事を減らすように指示しています。股関節に持病があるため運動を指示できないのが辛いところです。現在のところ、糖尿病とか、肝臓病、皮膚病は出ていないので、ゆっくりと減量をしていければいいなあと考えています。
98年7月4日 フィラリア予防のために年に1度身体検査と血液検査を受けていただいていますが、その時に飼い主には気づかなかった病気が見つかることがあります。今年は、腎臓病にかかっているワンちゃんが3匹もいました。元気や食欲はあるけれど体重が減っているだけとか、最近、ちょっとふらつくとか、ちょっと食欲が落ちたとか、いずれも表面上の症状は軽微なものでした。しかし、血液検査や尿検査で、重篤な病気になっていることがわかりました。今回は、いずれも比較的高齢でした(10〜13歳)。血液検査では、BUN(尿素態窒素)やクレアチニンを測定します。腎臓で血液を濾過して尿を作りますが、これらの検査は濾過がうまく行われているかどうかがわかります。これらが高い値が出ているときは、腎臓の組織の3/4以上が働いていないことを示します。正常な腎臓は予備能力を豊富に持っているために、ちょっと悪くなったぐらいでは血液検査では異常値は出てきません。尿検査では、尿比重、尿蛋白、潜血反応、尿沈渣などを調べます。腎臓が悪くなると、体が脱水しているにもかかわ
らず、尿比重が軽くなることがあります。これは、腎臓で尿を濃縮する力が落ちてきていることを示します。この場合、飲水量は増加していると思います。尿蛋白や、潜血反応は炎症が起きていることを意味します。稀に、血液中の蛋白質が濾過されずに漏れ出てくる場合もあります。尿沈渣は、顕微鏡で見ますが、炎症性細胞や腎臓の細胞、尿円柱、細菌、前立腺の細胞などが見つかる場合があります。
腎臓病の重度な病態を腎不全とか尿毒症とか言いますが、細菌感染や腫瘍、腎結石の場合を除いてほとんどの場合原因不明です。腎不全を起こす薬物や、毒物、免疫疾患、寄生虫などは数多く知られていますが、特定するのは難しいのです。従って、治療方法も特異的な治療はあまりありません。輸液と食事療法が中心になります。内服薬は、補助的な効果はあります。輸液は、通院の場合、皮下輸液です。10kgぐらいのワンちゃんに500mlぐらいの輸液を入れますと、ラクダのこぶのようになりますが、半日程度でほとんど吸収されますし、輸液時間も5分程度で済みます。急性腎不全で重度な場合は、入院してもらい、血管内留置針から持続点滴を行います。食事療法は、腎臓病専用の処方食を勧めます。乾燥タイプと缶詰タイプがあります。もし嗜好性が合わない場合は、炭水化物中心の食事にしてもらいます。
慢性腎不全は、基本的には完全に治ることはありませんので、長い管理が必要です。人の場合は血液透析などの治療により通常の生活が送れますが、犬の場合は特にコストの面でほとんど行われてはいません。腎移植も技術的には大学病院などでは可能ですが、コストなどの面から、日本の臨床レベルではほとんど行われていないと思います。
98年6月25日 私の中学時代の同級生が、子猫を拾ったのでみてほしいと電話があり、診察しました。生後2ヶ月ほどの痩せた黒猫でした。目やにがひどく、左目は角膜潰瘍がありました。結膜炎も起こしています。鼻炎もあります。これらは、ウイルス性の病気です。成猫もよく感染しますが、子猫は特にかかりやすいようです。皮膚には、たくさんのノミとシラミがいました。どちらも成虫を探すのは難しいですが、ノミの糞や、シラミの卵の塊(さなぎの抜け殻?)は簡単に見つかります。ノミの糞は、真っ黒な砂のようで、水に溶けると赤くなります(血の塊です)。検便をすると、コクシジウムと回虫の卵が見つかりました。コクシジウムは原虫の仲間で、ミジンコほどの大きさですから、肉眼では見えませんが、腸粘膜に寄生して炎症を起こします。回虫は4,5cmの輪ゴムのような虫ですが、妊娠中に母体から感染します。腸内寄生虫の駆虫薬2種類、ノミ、シラミ用の塗り薬、目薬と抗生物質の内服薬を渡して治療してもらうことにしました。
病気のオンパレードで、これほど種類が多い例はあまりありません。栄養のある食事を充分とって、治療していけば治ると思います。ノラ猫の生活環境は、いかに厳しいかおわかりいただけましたでしょうか。飼い猫が、外に出ていけばこれらの病気をうつされる場合があります。ただし、コクシジウムやシラミは成猫では滅多に見かけません。また、外猫は不潔であると考え、神経質になりすぎるのもあまりいいとは思えません。人にうつる病気は、カイセンや、真菌症などがありますが、さほど多くはありません。素人療法をはじめる前に、まず獣医に相談されることを勧めます。猫のカイセンが飼い主にうつり、人のお医者さんにかかっても診断できなかったこともありました。ダニに関して言えば、人体用の薬はいいのがなく、動物用の薬にはよく効いて、簡単に治る薬があります。
98年6月17日 先ほど昼過ぎに車に乗っていたら、おじさんが自転車に乗りパグの子犬を散歩させているのをみかけました。まだ、半年にも満たない痩せたパグでしたが、自転車の横を必死について走っていました。当院の患者さんではなさそうでしたが、すごく心配になりました。パグなどの短頭犬種は、ほとんどが上部気道狭窄症をもっており、体温調節がうまくできないので、暑い日に激しい運動をすると熱射病になりやすいのです。上部気道狭窄とは、鼻腔狭窄、軟口蓋過長症、気管低形成および気管虚脱などです。犬は汗をほとんどかかず、暑いときにはパンティング(ハアハアと激しい呼吸)を行い、体温を調節します。体の中の暑い空気を排出し、外の冷たい空気を吸入します。上部気道狭窄症の犬はこの空気の交換がうまくできず、体温が上がってしまうことがあります。体温が高くなったときには、まず水を飲ませてください。まだ呼吸が荒いときには、水を全身にかけてください。呼吸が落ち着くまで続けます。水風呂に入れるのもいいと思います。呼吸困難が続く場合には、気管拡張薬や抗炎症剤の投
与が有効です。軟口蓋過長症、喉頭麻痺、気管虚脱には外科手術を用いる場合もあります。
短頭犬種以外では、ポメラニアンやヨークシャテリアなどの小型犬は気管虚脱を発症しやすく、熱射病になりやすいです。肥満犬も熱射病になりやすいので注意してください。
98年6月9日 先日、当院によく犬を連れてこられる患者さんが、猫の爪とぎによる被害がひどいので、他の病院に連れて行って、猫の爪を根本から切除する手術を受けたという話をしていました。僕が、”今は爪をとるのではなく、指の腱を切断する手術方法がある”といったら、”そんな話は聞いていない。内の猫は凶暴であることは言ってあるのだから、手術を勧めるのが当然であり、ホームページにもそのようなことは載っていない。”と、クレームを受けてしまいました。猫の爪抜きは、爪を根本から切断し、延びてこないようにする方法ですが、少々残酷な気がするので、僕は1度もやったことはありません。変わりに、前足の指の下側の腱を切断する手術を行います。外見はほとんど変化はありませんし、爪に力が入らなくなるので、爪とぎはできなくなります。1mぐらいならジャンプもできます。ただ、この手術を受けられる方はあまり多くはありません。定期的な爪切りや爪とぎ器などで管理できるからだと思います。手術しないで済むならしない方がいいです。
行動上の問題で、手術を勧めることはあります。スプレー(壁などにしっこをかける)がひどいときは、去勢を勧めます。オス犬が凶暴でかみつく場合は、去勢(と犬歯の切断)を勧めます。無駄吠えが多い場合に、声帯切除をする先生もおられますが、僕はまだ開業以来やったことはありません。学生時代と代診時代にはありますが、ヒーヒーと言う声がでるので、ちょっと残酷なように感じています。犬の行動上の問題は、飼い方や躾の方法によって改善できることがおおいので、他の方のホームページも是非参考にしてほしいと思います。
98年5月22日 フィラリア予防が始まり、忙しい日が多くなりました。フィラリア予防は月に1度飲み薬を投与することによって予防できます。薬を飲ませ始める前に、血液検査を受けていただき、フィラリアに感染していないことを確認しています。フィラリアの仔虫(ミクロフィラリア)がいるワンちゃんにこの薬を飲ませると、副作用が出る場合が多いからです。先日、採血中に飼い主さんが”人間なみだねー”と言うのを聞いて、ちょっとおかしいかなと感じました。人間は毎年血液検査を受けるのでしょうか?私はここ20年ほど病気で病院にかかったことはありません。犬は人間以上に健康管理を受けているのかもしれません。
採血は、通常、前足の橈側皮静脈から行います。毛がいっぱい生えていますし、皮膚も分厚いですから肉眼で血管が見えることは滅多にありません。肘のあたりをゴム管で駆血して、膨れてきた血管を指で探り、血管が動かないように皮膚を左手で軽く引っ張り、右手で注射針を挿入します。中型犬はさほど難しくありませんが、小型犬になれば血管が細くなり、大型犬になると血管を固定することが難しくなります。飼い主の目の前で、ぶすぶす何度も針を刺すことはかっこよくありませんので、獣医師が最初に会得すべき技術です。1番難しいのは、小さな犬猫の血管に留置針を入れることです。私は体重500gまでの犬なら入れられると思いますが、それ以下ですと困難かもしれません。こんなワンちゃんですと、入れる管よりも血管の方が細く見えます。
98年5月6日 連休が終わり、フィラリア予防の季節が始まりました。今年の4月は暖かいので、例年よりも早めに始めてください。
私はラグビーのクラブチームに所属しており、5月3日に久しぶりに試合に出たのですが、前半に脳震盪を起こし退場となりました。倒れる前後数十秒の記憶がなくなっていました。長い間、ラグビーをやっていますが自分が脳震盪を起こしたのは初めての経験で、脳の障害とはこのようになるんだなーと実感しました。私が籍を置いている長寿医療研究センターには、アルツハイマーとか、パーキンソンなどの脳の研究をされている先生がたくさんおられ、私も脳の病気や、生理的な仕組みに少し興味を持ち始めています。小動物臨床の分野では、脳の研究をされている方は少なく、脳疾患の診断は、なかなか難しいのが現状です。脳波検査とか、CT検査は、特別な病院でのみ測定できるようになっていますので、必要があれば転院してもらうこともあります。正確な診断は難しいのですが、脳の病気は実はけっこうあるのです。”てんかん”は犬でけっこう多く、定期的に発作性痙攀がみられるので、長期間にわたり、痙攀抑制の飲み薬を飲ませてもらいます。当院の患者さんでは3年以上毎日3回飲ませておられる方もいます。パグは、犬種特異性の脳炎を起こすことが知られており、今通院されている
患者さんは1年前から後肢がふらついていましたが、最近前肢もたてなくなってきています。老年性の脳疾患も増えています。脳軟化症でしょうか?今通院されている患者さんは、半年前から起きあがれませんが、尿道カテーテルを留置したまま、床ずれに苦しみながらがんばっています。症例報告でも紹介した、鼻腔内腫瘍のワンちゃんも、最近、脳を腫瘍が圧迫しているせいで、痙攀発作が起き、心配しています。猫の脳疾患は、伝染病による脳炎が圧倒的に多く見られます。猫伝染性腹膜炎ウイルスや猫免疫不全ウイルスが脳炎を起こします。昔は、ビタミンB欠乏症による神経症状が見られましたが、最近は全く見られません。
神経細胞は、死んでしまうと増えることはありませんので、重度の脳障害の場合、完全に治ることは無いと思いますが、原因によっては早期治療が効果を示す脳障害も多くありますので、どうぞご相談ください。また、正確な診断を受けたいと思われる方は、CT検査や脳波検査を受けてみられるのもいいかと思います。
98年4月24日 ”犬の飼い主さん、大雨、強風、雷の日には犬の失踪にご注意を。”という記事が朝日新聞に載っていました。このような日には、犬の失踪件数が通常の倍に増えることが、名古屋市動物愛護センターの調査でわかったそうです。スタジオ内に犬を入れ、雷や豪雨、強風の収録音を流すと、呼吸が荒くなり、尾を下に巻いておびえたり、逃げだそうとしたり、床にうずくまったりする動作を見せ、心拍数が20〜30%も急上昇したそうです。犬は人間に比べ、聴力で4倍、振動数の感知力でも3.5倍と音に敏感で、犬の失踪と音との間に密接な関係があることが裏付けられました。
じゃあ猫はどうなんだ、と気になるところです。猫も聴力はよさそうですが、雷などの音もあまり気にしないようにみえます。病院に連れてこられる猫の約半数が室内外飼育で、トイレは外にある猫も多いです。僕はできるだけ室内で飼うように指導しています。外に出れば、ケンカや伝染病、交通事故などの危険がいっぱいあるのです。出ていったきり帰ってこなくなったという話はよく聞きます。事故や病気で帰らないのか、家が嫌いになったのか、野生の本能に目覚めなわばりを変えようとしている(そのようなことがあるのかは知りません)のかわかりませんが、飼い主にとってみれば寂しいかぎりです。実は、家(病院ではない)で飼っていた猫が、6日前に風呂場の窓から出ていったきり帰ってきません。普段、外には出さないようにしていたんですが。自分で好きで出ていったのですから、猫の行動を尊重するという考えの人は、しようがないと思われるかもしれませんが、内の家族はみんな心配しています。早く帰ってきてよマメちゃん。(追記:5月6日に3週間ぶりに、近くの家で捕まりました。怪我や病気の兆候は見られませんでしたが、だいぶ痩せていま
した。どこかに隠れていたんでしょうね。探していただいた皆様ありがとうございました。)
98年4月15日 狂犬病の注射も忙しいのですが、最近、胃腸疾患のワンちゃんや猫ちゃんが多く来院されています。ラブラドールレトリバーの小腸腫瘍や、雑種の鞭虫症、1才チワワの巨大食道症、ヒマラヤン系猫のリンパ球プラズマ細胞性腸炎などは確定診断がつきましたが、確定診断が付かない例も多くあります。糞便検査、血液検査、腹部触診でなどで異常が認められない場合は、細菌性腸炎と仮診断して、対症療法にて経過を観察しますと、たいてい数日で回復します。治らない症例については、バリウム検査などを行う場合もあります。嘔吐が激しい場合は、胃に近い方に病変があり、何回も少しづつ排便するときは、大腸に病変がある場合が多いです。パルボウイルス腸炎は、白血球が減少する場合が多く、また、糞便から直接ウイルスを検出するキットもあります。細菌性腸炎は、O-157とかコレラとかは有名ですが、原因菌の種類は非常に多く、個々の症例について検査することはほとんどありません。糞便の細菌検査は技術的に難しいし、時間がかかり、費用がかかるからです。対症療法とは、輸液と抗生
物質の投与が中心で、制酸剤、整腸剤、ビタミン剤なども投与することもあります。輸液は、通院の場合は、皮下にリンゲル液などを投与します。一時的にラクダのこぶのように背中がふくれますが、半日ぐらいで吸収されます。重傷の場合は、入院して腕の血管に留置針をいれ、24時間点滴を続けます。
細菌性腸炎は、いつ、どこで、感染したのかがわからない場合が多いので、予防のしようがありませんが、散歩時の拾い食いはやめさせるよう注意した方がいいと思います。嘔吐、下痢がみられたとき、獣医に連れて行くべきかどうかの判断は、しばしば悩みますが、どうも元気がないと思われた場合は、行った方がいいです。元気があっても、症状が持続したら行った方がいいです。症状が軽度の場合は、自宅でよく観察し、消化の良いものを少しずつ与えて経過を観察する様にしたらいいと思います。
98年4月8日 春になり、狂犬病集合注射の季節になりました。狂犬病予防注射は、犬を飼っておられる方に年に1度接種が義務付けられていまして、厚生省の委託を受けて、各地の公民館などで集合注射を行っています。ただし、館内に入れてもらえず、たいていは軒先や、自転車置き場などで行います。私は慣れてきましたが、昼間に白衣を着たおじさんが、駐車場で椅子に腰掛けてぼけーっとしている姿は、知らない人が見たら、ちょっと滑稽に見えるかもしれませんね。4月と5月に9日間出かけていきます。1日あたり300から400頭ほどの犬に注射を打ちます。今日は、知多半島の先っぽの南知多町に行ってきました。漁業と観光中心の町で、犬を連れてこられるおばさん方は、おおらかで、力強い人が多く、注射をいやがる犬をたいていしっかり押さえてくれるので、注射は比較的うまくいきます。軽トラックの助手席に犬を載せて連れてこられる方が多く、そのような方は、犬を車に乗せたまま注射します。今日、注射が終わった後、犬を車に残したまま降りたところ、犬が内側からドアをロックしてしま
った事件が起きました。キーははずすべきでしたね。また、うまく押さえることができなくて、犬にかみつかれてしまうこともあります。そのような時には、フェンスに犬を縛り付けてお尻に注射します。牙をむきだして抵抗している犬を、無理矢理押さえてつけることは、動物虐待のようで、あまりいい気持ちはしません(普段から、私たちのしていることはいつも動物からは歓迎されていませんが)。白衣を着たおじさんを見ても怒らないように、普段からしつけをきちんとしていただいきたいと思います。
98年3月19日 臨床獣医師にとって1番うれしいことは病気が治って、飼い主さんからも感謝されることですが、治らない病気を診断することも獣医師の仕事です。その場合たいてい飼い主さんからは感謝されないか、あるいは病院を変わって行くでしょう。最近そのような例が2例ありました。1例は16才の雑種犬で、悪性リンパ腫でした。胃腸症状が主で、元気が全くないわけではありませんでした。血液中に、異形リンパ球が多数出現しており、また脾臓が部分的に腫大し腫瘤となり、その部位の針生検の結果、腫瘍が確認されました。診断を告げ、通院して化学療法を勧めましたが、飼い主さんは、かわいそうで見てられないから安楽死をしてくれというのです。私は、飼い主さんがワンちゃんを非常に大事に飼っておられることを知っていますし、ワンちゃんも今まさに死にそうで苦しんでいるようには見えなかったものですから、治療を進めるべく説得しましたが聞き入れられず、それ以降来院されていません。
もう1例は、生後6ヶ月のペルシャ系雑種猫で、元気がなくなってきたとの主訴で来院しました。食欲はあったそうです。血液検査では、重度の貧血(PCV:7%)がみられ、骨髄検査では、赤血球系の骨髄細胞が1%に満たないという、pure
red cell aplasia(真性赤血球系無形成)という骨髄疾患であると診断されました。この病気は、猫白血病ウイルス感染症においてはみられる病態ですが、それ以外では非常に珍しいと思われました。清書にも、詳細には書かれていません。予後は、おそらく良くないであろうが、不明な点が多いだけに治る可能性もあると告げましたが、それ以降、来院されません。私の説明を十分聞こうともしない飼い主さんでしたので、理解してもらえなかったかもしれません。
安楽死は私はできるだけ避けたいと考えており、明らかに生きていることが辛く、治る見込みが全くない場合用いることがあります。今回の例などでは、癌の告知も考えなければならなくなってきました。私の言い方も少し冷たかったかもしれません。私たちは、病気の診断と予後の判定について、勉強をし、経験を積み、設備を整える努力をしていますので、もし病気の予後が悪いと診断されても、その診断技術ぐらいは評価してほしいなあ、という希望があります。
98年3月7日 今年はノミ駆除の新薬がたくさんでて来る年で、あれからまた2社が発売する情報が入りました。いずれの薬も、値上げをしてきたので、三共製薬だけ悪口を言っては不公平になるので、バイエルと日本全薬の薬も紹介します。バイエルは以前よりチグホンスポットという製品を販売してきており、背中に2,3滴薬を垂らすと、1ヶ月は成虫が死んでゆく薬です。5kgまでの犬猫に投与するタイプで,4本セットで2500円でした。今度出るタイプは、即効性に優れ長期間効くという商品で、成分が変わったのですが、値段がなんと倍以上!4kgまでの犬猫で、4本セットで5400円になるそうです。大きい犬用の商品もあり、値段も少しづつ上がっていきます。最悪なことに、従来の商品は、製造中止になるということです。この値段では、とても当院の患者さんに処方することはできないので、頭が痛いところです。チグホンスポットは、ノミ取り首輪をいやがる猫などに多く出していましたので、無くなるのは辛いです。
日本全薬は昨年、新製品(フロントライン)を出し、その有効性と1頭あたりの単価が安いので、猫の多頭飼育の方中心に良く勧めていました。製品紹介のホームページもありますので興味のある方はご覧になってください(ノミの生態などの説明もあります)。100ml液1本で、猫8頭分ぐらいありますが、3000円で処方していました。今年の新製品は、バイエルと同様にスポットタイプです。猫は1ヶ月に1回、犬は2ヶ月に1回垂らせば効果があるそうです。値段は、猫が3回分で3600円、犬(体重10kgまで)3回分が4200円ぐらいになりそうです。昨年出た液状タイプは、全身にスプレーを行うので、いやがる猫が多く、飼い主も面倒がっていたのが欠点でしたが、今年の製品は投与しやすくなりましたが、高すぎます。
今回紹介した製品は、いずれもノミの成虫を駆除する薬で、三共の製品とは作用機序が全然違います。ノミがなぜつくか?なぜ無くならないか?ノミ取り首輪ではだめなのか?については、近い内に詳細なレポートを作りたいと思っています。ちなみに、一般に薬局などで売られている商品は、ほとんど駆虫効果がないと思いますよ。
98年3月2日 私は、5年ぐらい前から野鳥の会に入り、バードウォッチングを始めました。長男が、2才の頃から異常に鳥に興味を持ち始めたので、一緒に勉強したのです。息子は努力のかいあって、テレビに小さな鳥博士として紹介されるまでになりましたが、私は初級の域を脱しません。鳥の名前を覚えることは、結構大変で、今でも図鑑は手放せません。バードウォッチングを覚えると、野外に対する視野が広がるばかりか、季節感も味わえるようになりますので、ぜひ、皆さんもやってほしいと思います。冬は寒いので野外に出たくはなくなりますが、バードウォッチングには、最適な季節で、木の葉が落ちているので小鳥が確認しやすく、山からメジロなどが里に下りてきており、カモなどの渡り鳥がシベリアから来ているのです。うちの庭にも、バードテーブルをおいて、小鳥がくるようにはしています。ただ、残念ながら、今年はさっぱり来ません。メジロ、アオジ、ツグミなどがたまに来ますが、ジョウビタキ、シジュウカラは家では見られませんでした。隣町の東海市の大池公園も先日行って来ましたが、
カモ類は少なく、ヤマガラとコゲラ(キツツキの仲間)を間近でみられたのが唯一の収穫でした。昨日、大府の公園に犬の散歩もかねていきましたが、双眼鏡をのぞく機会もないほど鳥がいませんでした。当院に来る患者さんからの話では、豊田市の方に行ったら、イスカとか、ミヤマホウジロとかがみれたよ、などと聞きますので、行くべきところへ行けばたくさん見られるとは思います。
バードウォッチングを全くやられたことのない方に1つアドバイスをします。ヒヨドリとムクドリとツグミの3種類を区別できるようにされるといいです。前2種類は、年中います。ツグミは冬鳥です。3種類とも普通に見られますので、探してみられてはいかがでしょうか。
98年2月20日 昨日、製薬会社の営業マンが新しい薬の説明にうちの病院にやってきました。ノミの予防が注射でできるという商品です。従来は飲み薬の形状で、1月に1回のませるとノミの卵が孵化しなくなるという変わった薬です。これを注射すると6ヶ月間その効果が持続するそうです。今回は猫に対する商品で、犬については数年後になるそうです。犬や猫を飼ったことがない方は、今時ノミなんているのかしら?と思われるかもしれませんが、ノミはごく普通に見られますし、開業以来ほとんど減っていません。つまり、ノミがいったん犬猫に発生すると駆除は結構大変で、外に遊びに行けば簡単にうつされてくる物なのです。ノミの駆除が難しい一番の問題は、ノミの卵が駆除しづらいことにあります。ノミの成虫は3週間しか生きられないそうですが、その間にたくさん卵を生みます。その卵は、殺虫剤ではなかなか死なず、また半年以上は生きています。卵さえ増えなければ、ノミは減ってゆくのです。この薬は、このような点で、非常に有効で、また生体にも人にも非常に安全なのですが、最大の欠点は高
い!ことです。当院では、体重4.4kgまでの猫、体重10kgまでの犬には1回分が1000円です。3ヶ月投与すれば、90%ほどの例で駆除できるそうです。今度出た注射薬は、4kgまでの猫で、1本6000円です。8kgまでの猫で、7000円になります。これは、飼い主にとって見ればかなりつらいのではないでしょうか。そればかりか、実は、病院にとってみても利益率が少ないのです。これを売っている会社は三共(株)といって人体薬でもトップメーカーなのです。いい薬だとは認めますが、値段も何とかしてほしいと思います。この会社には他にも頭に来ているところは多いので、今年は何とか、他社の薬に力を入れ、ささやかな抵抗をしてみようと思っています。
98年2月18日 昨日、厄年のお払いをしてもらうために、滋賀県の多賀大社(おたがさん)に同年の友人たちとお参りに行って来ました。私は、今40才で、今年41になります。数え年だと42才になるのかな?本厄だそうです。初老とも言うそうです。みんなでお金を出し合って、神社に石畳を奉納したり、節分の豆まきをしたり、秋のお祭りには櫓の上からもち投げをしたりします。犬や猫の厄年(初老)は何歳でしょうね?老化現象(たとえば白髪)が見られ始めるのは7才から8才位からですね。腫瘍、心臓病、腎臓病など成人病が見られ始めるのもこのころからです。15年ほど前では、フィラリアの予防をされる方も少なかったためもありますが、5才をすぎると死んでゆくワンちゃんが多かったですが、最近では、15才以上のワンちゃんは普通に見られます。猫は、外見上年をとりませんね。腎臓病と猫エイズに気をつけて、運良く癌にならなければ20年くらいは楽に生きられるような気がします。うちの猫も、10年をすぎましたので、ずっと低蛋白食を与えています。皆さんにもぜひ食事療法をお勧
めします。市販されているものには、サイエンスダイエットのシニア、病院で扱っているものには、ベッツプラン1、k/d、ロープロテインなどがあります。
98年1月28日 昨年、鼻腔内腫瘍に罹患したゴールデンレトリバー(メス、8才)を、三重県の南動物病院に紹介し、CT検査をしてもらいました。また、そちらで放射線療法を勧められ、1日おきに16回の放射線治療を受け、帰ってきました。概要は、症例報告のページに載せてあります。CT検査は、人医療においては当然のように用いられていますが、獣医医療においてはほとんど用いられていません。当院から一番近い大学である岐阜大でも導入された話は聞きません。その理由は、まず設備が非常に高額であるためです。飼い主全般の動物医療に対する要求が、高額な検査を希望するレベルではないのです。南先生は、年齢は僕とほとんど変わらないのですが、麻布大学やUSAで勉強し、組織検査の会社を作ってしまう努力家です。僕らのような町医者と同じ感覚では評価しづらいですが、CTや放射線治療装置を個人で導入する事は、非常に大きなリスクを負うことになるでしょう。ちなみに今回のCT検査は約3万円でした。毎日撮影しても減価償却は難しいと思いますが、病院がつぶれないようにがんば
ってほしいと思います。
98年1月16日 動物病院クイズの全問正解者からのメールがついに届きました。
Hiroyuki/Keiko
Hayashiさん、全問正解おめでとうございます。獣医師なら全問正解は当たり前でしょうが、一般の方は難しかったと思います。家内の友人の息子さん(中学生)は、難しすぎると悲鳴を上げたそうです。動物の病気は学校では教えてくれませんからね。
98年1月12日 あけましておめでとうございます(ちょっと時期をはずしてるかな)。お正月は4日間のみ休診にしましたが、さほど急患をみることもなく過ごせました(近所の病院には、少し迷惑をかけましたが)。例年のことですが、この時期には重傷例が多いようにかんじます。また、猫の発情シーズンですので、避妊手術や、ケンカ傷の外傷も増えてきます。今入院しているのは、12才の秋田犬と、約12才のポメラニアンと、7才の雑種です。秋田犬は、低体温(32度以下)で動けなくなっており、基礎疾患として重度のフィラリア症と全身性の皮脂腺炎があります。甲状腺機能障害の疑いがあるため、ホルモン剤を投与して反応を観察中です。ポメラニアンは、重度の歯周病から、顎の骨が溶けてしまい、口が閉じられなくなっていまいました。ステンレスのプレートを埋め込み補修手術をしたら、少しは顎を動かせるようになりました。しかし、口は開いたままです。この例は非常にユニークなので、症例報告のページに載せようと考えています。雑種犬は、どうも副腎器質機能低下症の疑いがあり、現在
検査結果待ちです。Na(130mEq)、K(7.1mEq)、BUNやのクレアチニンの中等度増加、好酸球数の増加などがそれを疑わせます。今日コルチゾールの測定を行いました。もし、副腎器質機能低下症ならば、これからずっと高い飲み薬(1日800円以上)を使わねばならず、飼い主さんの負担が大変なことになるかもしれません。
今年も、いろんな病気の動物がこられると思いますが、日々勉強し、できるだけいい治療をしたいと思います。皆さんまたこのホームページに遊びに来てくださいね。そして、たまには感想のメールをください。