English Lesson Plan 5 (4th grade)

Sep 14, 2007(5th period)
指導者 教諭 渋谷 徹

<問題の所在>
 かつて,私は次の仮説の下で英語活動の実践を進めてきた。

@ 45分を5分×9パーツで構成し,リズムとテンポのある授業を具現する。
A 1単位時間の指導内容を少なくし,繰り返しを多くする。
B 様々なバリエーションのアクティビティにより,繰り返しに変化をもたせる。
C 練習は,全体→グループ→ペアの順で行う。
D オールイングリッシュ(all in Engl sh)の授業を志向する。
 上記5点を原則とした授業実践を通し,使えるダイアログを子供たちの内部に蓄積していけば,英語によるコミュニケーション能力を育成することができる。

 この考え方で行ってきた授業には,次のような特徴があった。

A 習得させたい言語材料(target language)がある。
B 習得とは「発話」を意味しており,授業のねらいはtarget languageを発話できるようにすることである。
C 「言語の習得→コミュニケーション活動」の順で授業がデザインされている。
※ ゲーム等のactivityを通してtarget languageを練習させ,練習したtarget languageを使ってコミュニケーション活動(インタビューやごっこ活動)を組織する。

 英語のスキルを重視した授業の典型である。現在行われている小学校英語活動の実践のほとんどは,このようなスキルベースの授業である。ここには,2つの問題がある。
 1つ目は,性急に発話を求めすぎているという点である。言語の習得は「聞く→話す→読む→書く」という順で行われる。この順序が逆転することはない。人は,17,000時間のinputを受けた後に母語をoutputすると言う。十分なinputが行われなければ子供たちがoutputすることはないのである。したがって,初めて英語という言語に触れる小学校段階で重視するべきは「話す」ことではなく「聞く」ことである。
 2つ目は,「言語の習得→コミュニケーション活動」という授業デザインは順序が逆だという点である。人は,言語を習得してからコミュニケーションをするのではない。コミュニケーションを繰り返す過程で言語を習得していくのである。小学校英語活動が目指すべきは「言語の習得」ではなく,「コミュニケーションの成立」である。
 『小学校英語活動の実践の手引き(文科省)』には,小学校英語活動のねらいについて,次の記述がある。

すなわち,言語習得を主な目的とするのではなく,興味・関心や意欲の育成をねらうことが重要である。

 「興味・関心や意欲の育成」がねらいなのである。これは「コミュニケーション能力の基礎」になる部分といってよい。しかし,「興味・関心や意欲」あるいは「コミュニケーション能力の基礎」という表現ではあまりにも漠然としすぎていて,何を目指したらよいのかが分からない。そこで,私は「コミュニケーション能力の基礎」を次のように定義している。

○ 相手の話す英語を聞いて,それを理解しようとする態度をもつこと(推測)
○ 相手に何らかの反応を示そうとする態度をもつこと(反応)

 「興味・関心や意欲の育成」を目指す授業のキーワードは,「推測」と「反応」である。「推測」と「反応」の繰り返しによって活動を組み立て,「聞く」ことによって「コミュニケーションの成立」が図られる授業を提案したい(コミュニケーションベースの授業)。

<スキルベースの英語活動観から>   <コミュニケーションベースの英語活動観へ>
@ 言語の習得がねらい
A 「発話できること」を求める
B 言語→コミュニケーション
@ コミュニケーションの成立がねらい
A 「聞いて分かること」を求める
B コミュニケーション→言語

このような授業を具現するためには,次の2つが必要である。

@ 子供が推測したくなったり反応したくなったりするような題材や活動の開発・構成
 コミュニケーションとは「意味内容の伝え合い」のことである。伝え合いたい意味内容がなければ,コミュニケーションは成立しない。まず,子供たちが推測したり反応したりしたくなるような「内容」がなければならない。それが題材や活動の開発である。
 また,1単位時間の授業をどのような活動で組み立てるのかによっても子供たちの意欲は変わってくる。本時では,子供たちの意欲を喚起する活動を複数用意し,それらを組み合わせることによって1時間を構成する。そうすることにより,授業にリズムとテンポが生まれ,子供たちの意欲が持続すると考えるからである。
A 子供の内容推測を可能にする手だて
 知らない言語を音声だけで100回聞いても分かるようにはならない。人がある言語を聞いて分かるようになるのは,理解不能な音声情報と共に理解可能な非音声情報が同時に与えられるからである。子供の内容推測を可能にする手だてとして特に重視したいのは,音声情報と共に視覚情報を与えることである。視覚情報は人間が得られる外部情報の70%程度を担っていると言われているからである。

 上記2点の手だての他に,私自身が課題としているのは「指導者が一定量の英語をinputする力」である。英語のinputを重視するのであるから,指導者は一定量の英語を発話しなければならない。
 これまでも,all in Englishの授業を志向してきたが,必ずしも発話量が十分とは言えなかった。授業の90%以上は英語で進めるとともに,発話の量と質を高めていきたい。

1 単元名
  Joyful English!

2 単元の目標
 
(1) 相手が話している英語の意味を推測し,相手に反応しようとする。
 (2) 英語に関心をもち,英語を使った活動を楽しむ。

3 単元と児童

 (1) 単元設定の理由

 英語活動には,「スキル重視の考え方」と「コミュニケーション重視」の考え方がある(「中教審教育課程部会外国語専門部会審議の状況」による)。前者は言語をスキルとして習得させ,習得した言語を用いてコミュニケーションを成立させようという考え方である。一方,後者は実際のコミュニケーションを通して言語が習得されるという考え方である。本単元は,後者の考え方に立って設定した。英語活動は言語習得を目的とした英語学習ではなく,コミュニケーション能力の基礎である関心・意欲・態度を養うことがねらいだからである。
 本単元では「コミュニケーション能力の基礎」を次のように定義しておく。

○ 相手の話す英語を聞いて,それを理解しようとする態度をもつこと(推測)
○ 相手に何らかの反応を示そうとする態度をもつこと(反応)

 キーワードは,「推測」と「反応」である。「推測」と「反応」の繰り返しによって授業を組み立てることによって,子供たちに「聞いて分かる」体験を保証することができる。

 (2) 児童の実態(男子19名 女子12名 計31名)

 昨年度は,17時間の英語活動を行った。6時間がALTとのTT授業であり,11時間がHRT単独の授業である。HRTによる授業は「推測」と「反応」をキーワードとしたコミュニケーションベースの授業である。
 「推測」という語は難しいため,子供たちに向けては「推理」という語を使用し,「英語の時間は,先生が何を言っているのかを推理しながら聞くことが一番大切なのですよ。」と指導してきた。年間17時間という時数は十分な時数ではない。しかし,「推測」と「反応」をキーワードとした授業を繰り返すことによって,子供たちには「少しくらい分からなくても推理しながら聞こう。」という姿勢が身に付いてきた。
 今年度は,これまで4時間の英語活動を行ってきた。1時間目はALTの授業であり,2時間目から4時間目までがHRTの授業である。ALTの授業はどちらかというとスキルベースで組み立てられていた。しかし,この授業の中でも,子供たちは発話だけに意識が向くのではなく,ALTの発話内容を推測しながら聞こうとしていた。
 また,コミュニケーションベースで行った2時間目以降の学習でも,子供たちはHRTの発話内容を推測しながら,様々な活動を楽しんでいた。例えば,3時間目「数で遊ぼう」の授業の後,子供たちは次のような感想を書いている。

○ ちょっと分からないところもあったけれど,楽しくすいりできた。おもしろかったのは,絵本だった。理由は意外なてんかいがあったからだ。
○ 今日の英語活動は,とても楽しかった。すいりをしながら聞けてとてもよかった。むずかしいものもあったけれど,すいりしながら聞いていたらあたっていた。
○ これからも先生やネート先生の英語をすいりしながら勉強していきたいと思います。

 ここから,見えてくることは,子供たちに「推理しながら聞き,楽しみながら反応しよう」とする態度が身に付きつつあるということである。

4 指導計画(※ 別紙

5 本時の指導計画

 (1) 本時のねらい

    1. HRTの発話する英語を聞き,その内容を推測しようとしたり推測した内容に対して反応しようとしたりする。
    2. HRTの発話内容を推測しながら,「動物の名前や生息地を当てる活動」「時差を題材とした活動」の2つの活動を楽しむ。

 (2) 展開の構想

@ 「推測」「反応」への意欲を喚起する複数の題材で授業を構成する。

 コミュニケーションベースで行われる授業には,粗く言って次の2つのタイプがある。

○ タスクベース(task-based)の授業
 「工作を作る」「料理を作る」等の課題(task)を設定し,英語を聞きながらそれを遂行する授業。
○ コンテントベース(content-based)の授業
子供が興味をもちそうな内容(content)を英語を聞くことによって学習する授業。

  本時では,1時間の中に複数のタスクとコンテントを設定した。複数の活動を組み合わせることによって,授業にリズムとテンポが生まれ,子供たちの活動への意欲が持続しやすいと考えるからである。
 本時では,子供たちが「推測」したり「反応」したりしたくなる活動として,大きく次の2つを用意した。
A 動物の名前や生息地を当てたり予想したりする活動
 この活動では,2つのinformation gapを利用する。1つ目は「逆さ絵」の提示である。馬の絵を提示しながら,“What animal is this?”と尋ね,「馬」という子供の答えを否定すれば「あれ」と思うはずである。そして「なんだろう。」と不思議に思い,その後に教師が発話するヒントを聞いてみたくなる。子供がもっている情報と教師がもっている情報の差を利用し,「聞きたい」という意欲を引き出すのである。
 2つ目は,「漢字」の提示である。「猫熊」は,「パンダ」を表す中国語である。漢字は表意文字であるので,それ自体がすでにヒントとなっている。しかし,漢字を見ただけで動物を当てられる子供は皆無であろう。そこで,続いてヒントを提示していく。
 動物を当てさせる際は,それぞれの生息地についても考えさせ,動物を窓口に世界へと目を向けさせていきたい。その際,この夏,エジプトに旅行し,駱駝に乗ったりピラミッドを見たりしてきたY男の写真を提示しながら,子供たちの関心をさらに高めていく。
B 時差を題材とした活動
 前時で,子供たちは自分たちの生活を題材に「時刻」をテーマとした活動を行った。本時では,日本の時刻と世界各地の時刻を比べながら「時差」を題材とした活動を行いたい。この活動の中では,「時差時計を作る」という簡単な工作も取り入れる。これは,「英語を聞いて何かを作る」というタスクベースの活動となる。
 時差時計を作る。時差時計を操作したりインターネットサイトの画像を見たりする。このような活動によって,子供たちは楽しみながら時刻を表す表現に触れることができるはずである。

A 子供の内容推測を可能にする視覚情報を提示する。

 子供たちの内容推測を補助するため,本時では次の視覚情報を提示する。

A 逆さ絵のピクチャーカード
B 自作のスライドショー
C Google Earthの画像
D サイト「世界の窓」の画像
E 教師が示すジェスチャー

 これらの視覚情報を活用し,音声による英語のinputと併せてタイミングよく提示していくことにより,子供たちが内容を推測できるようにしたい。

(3) 本時の展開(授業教室:3F多目的教室)

Min. Activities Notes
10 1 What animal is this?
^ 逆さ絵を提示して尋ねる。
What animal is this?(ペンギン)
・「馬」か「牛」と答えてくるだろう。
No. It's not a horse. It's not a cow. What animal is it?
・えっ,馬でも牛でもないの。何の動物だろう。
I'll give you some hints.
“I can slide on the ice. I like to play on icebergs. I can dive into the ocean. I can swim well.”
・氷の上を滑ったり,泳いだりできるの。
“I'm a bird. I cannot fly in the sky. I don't like carrots. I like fish. I walk like this. What animal am I?”
・鳥だけど,飛べないの。ペンギンかな。でも,絵は全然ペンギンに見えないな。
“I'm a penguin.”
(逆さ絵をひっくり返し,ペンギンの絵を提示する。)
Where do penguins live? Do you know? Do penguins live in Japan? Do penguins live in Africa?
・どこに住んでいるのかを聞いているのかな。
・南極かな。
Look at the screen. They live in Antarctica.

What animal is this?(キリン)If you see the answer, raise your hand but DO NOT say it.
・逆さ絵だと分かった子供たちは,首を曲げて見始めるだろう。
I'll give you some hints. “I'm a big animal. I have a long neck. My body is yellow.”
・分かった。キリンだ。
Where do giraffes live?
・キリンってどこに住んでいるのだろう。
Look at the screen. They live in Africa.
Can you write KIRIN in Kanji?
This is the answer.(麒麟)
_ 漢字を提示して尋ねる。
(「熊猫」という漢字を提示する。)
What animal is this?
・熊みたいな猫のことかな。
・そんな動物いたかな。
Do you want hints? OK. I'll give you some hints.
“I'm a big animal. I eat bamboo. You can see me at UENO ZOO. I live in China.”
・上野動物園にいるということはパンダだ。
Where is China? Can you point to China? China is here.
(「駱駝」という漢字を提示する。)
What animal is this?
・全然読めないな。
“I have one or two humps on my back. Yuhei rode on this animal this summer. I'm a camel.”
・Y男くんはいいな。私も乗ってみたいな。
・『くるりんぱ@ だ〜れ?』(マルタン著 フレーベル館)に収められている絵を使用する。この絵本の絵は,逆さまにすると,見えている動物とは別の動物が見える逆さ絵になっている。

・答える際は,動物の名前を日本語で答えてもよい。ただし,指導者は英語でfeedbackしてやる。

・ヒントを出す際は,ジェスチャー等を示し,子供たちが内容推測できるように補助する。

・答えが分かっても,口には出させず,手を挙げることを英語で指示し,徹底させる。

・漢字を示して,動物を当てさせる。表意文字である漢字はそれ自体がヒントとなる。

・それぞれの動物を当てさせた後,それぞれの生息地を考えさせ,世界地図で示す。

・Animal World(生息地地図を提示)



・パンダは,生息地自体をヒントとして提示する。
・中国の場所を尋ね,指ささせる。





・Y男が駱駝に乗った写真を提示する。

10 2 Let's go to Egypt!
(Y男が駱駝に乗った写真を提示)How tall was this camel? What country did Yuhei go?
Yuhei went to Egypt this summer.
(ピラミッドの写真を示し)Do you know what this is? It's a pyramid. How tall is this pyramid? Can you guess?
・ピラミッドってどのくらいの大きさなんだろう。
・Y男くんの写真に写っているミラミッドはずいぶん大きそうだな。
(NEXT21とピラミッドの写真を提示)Which is taller?
・NEXE21とどっちが高いのだろう。
NEXT21 is 125m tall. The pyramid is 144m tall.
・大昔の墓なのにNEXT21より高いなんてすごいな。
・ぼくも見てみたいな。
Do you want to go to Egypt? Do you want to see pyramids? OK. Let's go to Egypt.
・私もエジプトに行ってみたいな。
(Google Earthの画面を提示)
This is the earth. Can you find Japan? Point to Japan. Where is Egypt? Can you point to Egypt?
・エジプトってどこにあるのだろう。
Look at the screen. Egypt is here. Let's go to Egypt and watch pyramids. Wow, we can see some pyramids here.
・すごい。ピラミッドが見える。大きいな。
Let's go to another country.
・Y男が駱駝に乗った写真を提示し,他の子供に国の名前を当てさせる。






・最大のピラミッドとNEXT21の高さを比べることにより,ピラミッドの大きさを実感させる。


・Google Earthを起動し,地球の絵を回転させながら,日本やエジプトの場所を探させる。
・Google Earthの検索ウインドウにピラミッドと入力し,ピラミッドの画像を提示する。
10 3 What time is it in Mexico?
(逆さま絵を見せて)What country is this?
・どこの国だろう。
・サボテンがたくさんあるな。
・メキシコかな。
It's very hot. This is the sun. The sun is shining everyday. They are cactuses. How many cactuses do you see in this picture?
・サボテンは何本あるのかな。数えてみよう。
This country is Mexico. In Mexico many people play soccer. There are a lot of good soccer players in this country. Look. They are playing soccer.(と言いながら絵を逆さにする。)
・あれ,サボテンの絵がサッカーの絵に変わった。
Wow, this is not the sun. It's a soccer ball.
Look at the clock. What time is it? It's 2:30 p.m. in Japan. But it's not 2:30 in Mexico. What time is it in Mexico? Can you guess what time it is in Mexico?
Let's go to Mexico.
(サイト「世界の窓」の画面を提示)
Look at the screen. It's 1:30. It's midnight.
・再び,逆さま絵を提示する。サボテンの絵を示し,どこの国かを当てさせる(この絵は,逆さまにするとサッカーをしている絵になる)。







・日本とメキシコでは時差があることを知らせ,メキシコでは今何時なのかを予想させる。
・サイト「世界の窓」のライブカメラの画像を提示し,日本との時差を実感させる。

15 4 Let's make a world clock.
This is a world clock. It's 3 o'clock in Japan. It's 12 o'clock in Mexico. It's midnight.
Let's make a world clock.
(時差時計を作るための工作用紙を配布)
・私たちも作ってみたいな。
・どうやって作るのだろう。
I'll explain how to make a world clock.
First of all, cut out two circles along these lines with your scissors. Good. Now you have two disks.
Which disk is bigger? Put the smaller disk on top of the bigger disk like this.
Make a hole in the middle of the disks with your compass.
Pass a pin through the hole like this.
・作り方は分かったぞ。簡単にできそうだ。
・早速作ってみよう。
Where is New York? New York is here.
What time is it in New York?
(London, Paris, Honolulu, Cairo)
・この時計を使うと,世界の時刻がすぐに分かるな。
・そう言えば,体育館の入り口にも世界時計があったぞ。
・子供たちに作らせる前に,教師が英語で説明しながら作ってみせる。






・時差時計に示されている都市の場所は世界地図で確認する。
・拡大版の時差時計を黒板に掲示し,子供たちと一緒に動かしながら世界の時刻を確認していく。
・可能な限り、ライブカメラの映像も提示する。
・活動後,体育館前の時差時計を紹介する。

(4) 評価規準

A HRTの発話内容のおおよそを推測したり,推測した内容に対して反応したりしている。
B HRTの発話内容の一部を推測したり,推測した内容に対して反応したりしている。
C 友達の発する母語や友達の動きを見ながらHRTの発話内容を推測している。

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