English Lesson Plan 10 (4th grade)

Dec 14, 2007(5th period)
指導者 教諭 渋谷 徹

<問題の所在>
  11月7日付「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」を読む。次の言及がある。

 小学校段階における英語活動については,現在でも多くの小学校で総合的な学習の時間等において取り組まれているが,各学校における取組には相当のばらつきがある。このため,外国語活動(仮称)を義務教育として小学校で行う場合には,教育の機会均等の確保や中学校との円滑な接続等の観点から,国として各学校において共通に w導する内容を示すことが必要である。
 「共通に指導する内容を示す」と言う。「ばらつき」をなくすためにである。どのような指導内容が示されるのか。少なくとも,習得すべき語彙や会話文等の言語材料ではないはずである。なぜなら,「目標」については次のように書かれているからである。
 このため,小学校段階では,小学生のもつ柔軟な適応力を生かして,言葉への自覚を促し,幅広い言語に関する能力や国際感覚の基盤を培うため,中学校段階の文法等の英語教育を前倒しするのではなく,国語や我が国の文化を含めた言語や文化に対する理解を深めるとともに,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図ることを目標として,外国語活動(仮称)を行うことが適当と考えられる。

 外国語活動(英語活動)の目標は次の2つだと言っているのである。

1 国語や我が国の文化を含めた言語や文化に対する理解を深める。
2 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図る。

 国が指導内容を示すのは,「各学校における取組には相当のばらつきがある」からである。では,「均等」にしなければならないのは何か。目標に照らせば明らかである。次の2つということになる。

^ 言語や文化に対する理解
_ 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度

 ^は分かりやすい。理解を深めるべき「言語や文化」の具体が示されればよいからである。試案として示された指導内容には,次の「言語や文化」が挙げられている。

「世界の様々な挨拶」「自己紹介の仕方」「いろいろなものの名前」「自分たちの生活と世界の子どもたちの生活」「世界の数遊び」「日本と世界の服装」「様々なジェスチャー」「日本と世界の食べ物」「道案内の仕方」「世界の子どもたちの夢」

 問題は_である。「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」の中身が曖昧だからである。育成すべきものが曖昧のまま,指導内容を開拓することは難しい。
 私は現在のところ,「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」を次のように定義している。

○ 相手の話す英語を聞いて,それを理解しようとする態度をもつこと(推測)
○ 相手に何らかの反応を示そうとする態度をもつこと(反応)

 言語の習得は「聞く→話す→読む→書く」の順で起きる。この順序が逆転することはない。したがって,初めて英語という言語に触れる小学校段階で重視するべきは「聞く」ことである。聞いて,相手が何を言っているのか推測しようとすることである。
 しかし,推測しただけではコミュニケーションは成立しない。一方通行だからである。コミュニケーションが成立するためには,推測した内容に対して「反応」を返す必要がある。ただ,ここで求められる「反応」は必ずしも「英語で発話する」ことではない。英語に初めて触れる小学校段階の児童が,英語という言語だけで双方向のコミュニケーションを行うことは不可能だからである。「母語で応える」「ジェスチャーで応える」「作業で応える」・・・。これらすべてがここで言う「反応」である。
 このような「推測」と「反応」が,「審議のまとめ」の中で述べられている「中・高等学校においてコミュニケーション能力を育成するための素地」であると考えている。
 「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」を考えるときのキーワードは「推測」と「反応」である。したがって,次の指導内容を開拓することが求められる。
 子供が推測したくなったり反応したくな チたりするようなコミュニケーション活動
 私は,コミュニケーションとは「意味内容を伝え合うこと」であると考えている。伝え合いたい意味内容がなければ,コミュニケーションは成立しない。コミュニケーションが成立しない状況で「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」を育成することは不可能である。開拓するべき内容は,子供たちが推測したくなったり反応したくなったりするようなコミュニケーション活動なのである。
 「形」といったトピックや「circle, square, triangle」といった言語材料だけでは指導内容にはならない。これだけが示されて「積極的にコミュニケーションを図ろう」とすることはないからである。具体的な授業レベルでのコミュニケーション活動が示されて,初めて,その活動が子供たちの「推測したい」「反応したい」という意欲を喚起する活動であるか否かが検討可能となるのである。
 本時では,「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」が示す2つの目標に正対したコミュニケーション活動を提案する。

1 単元名
  Joyful English!

2 単元の目標
 
(1) 相手が話している英語の意味を推測し,相手に反応しようとする。
 (2) 英語に関心をもち,英語を使った活動を楽しむ。

3 単元と児童

 (1) 単元設定の理由

 英語活動には,「スキル重視の考え方」と「コミュニケーション重視」の考え方がある(「中教審教育課程部会外国語専門部会審議の状況」による)。前者は言語をスキルとして習得させ,習得した言語を用いてコミュニケーションを成立させようという考え方である。一方,後者は実際のコミュニケーションを通して言語が習得されるという考え方である。本単元は,後者の考え方に立って設定した。英語活動は言語習得を目的とした英語学習ではなく,コミュニケーション能力の基礎である関心・意欲・態度を養うことがねらいだからである。
 本単元では「コミュニケーション能力の基礎」を次のように定義しておく。

○ 相手の話す英語を聞いて,それを理解しようとする態度をもつこと(推測)
○ 相手に何らかの反応を示そうとする態度をもつこと(反応)

 キーワードは,「推測」と「反応」である。「推測」と「反応」の繰り返しによって授業を組み立てることによって,子供たちに「聞いて分かる」体験を保証することができる。

 (2) 児童の実態(男子18名 女子15名 計33名)

 昨年度は,17時間の英語活動を行った。6時間がALTとのTT授業であり,11時間がHRT単独の授業である。HRTによる授業は「推測」と「反応」をキーワードとしたコミュニケーションベースの授業である。
 「推測」という語は難しいため,子供たちに向けては「推理」という語を使用し,「英語の時間は,先生が何を言っているのかを推理しながら聞くことが一番大切なのですよ。」と指導してきた。年間17時間という時数は十分な時数ではない。しかし,「推測」と「反応」をキーワードとした授業を繰り返すことによって,子供たちには「少しくらい分からなくても推理しながら聞こう。」という姿勢が身に付いてきた。
 今年度は,これまで9時間の英語活動を行ってきた。3時間がALTの授業であり,6時間がHRTの授業である。HRTの授業は,すべてコミュニケーションベースの授業であり,ALTの授業はどちらかというとスキルベースで組み立てられている。しかし,スキルベースの授業の中でも,子供たちは発話だけに意識が向くのではなく,ALTの発話内容を推測しながら聞こうとしていた。これは,コミュニケーションベースの授業の中で「コミュニケーションを図ろうとする態度」が育成されつつあることを示している。
 コミュニケーションベースで行った学習後,子供たちは次のような感想を書いている。

○ ちょっと分からないところもあったけれど,楽しくすいりできた。おもしろかったのは,絵本だった。理由は意外なてんかいがあったからだ。
○ 今日の英語活動は,とても楽しかった。すいりをしながら聞けてとてもよかった。むずかしいものもあったけれど,すいりしながら聞いていたらあたっていた。
○ これからも先生やネート先生の英語をすいりしながら勉強していきたいと思います。

 子供たちに「推理しながら聞き,楽しみながら反応しよう」とする態度が身に付けつつある。

4 指導計画(※ 別紙

5 本時の指導計画

 (1) 本時のねらい

    1. 「絵本を楽しもう」「干支の順序は?」「読めるかな?」「日本語と中国語」の4つのコミュニケーション活動を楽しむ。
    2. 4つの活動を通して,英語の内容を推測したり推測した内容に対して反応したりできる。

 (2) 展開の構想

 本時は,次の4つのコミュニケーション活動で構成する。
@ 絵本“Dear Zoo”
 優れた絵本は,次の点でinput教材として適している。
ア コンテンツ(絵本の内容)自体の魅力が,子供たちの「聞こう」とする意欲を喚起する。
イ 絵という視覚情報が意味推測を補助する。
 “Dear Zoo”は仕掛け絵本となっており,子供たちは「この動物は何かな」と考えながら絵本を楽しむことができる。ヒントとなる英語の内容を推測しながら,登場する動物を推測することとなる。この推測の二重構造が「英語を聞いて楽しむ」ことを具現する。
A 干支の順序は?
 4年生の子供たちにとって,「干支」は「知っているようで知らないもの」である。干支の順序は知っている子供も多いだろうが,干支を表す漢字とその漢字が意味する動物がすべて一致している子供は少ないであろうし,干支が時刻や方位をも表していることを知っている子供は皆無であろう。「知っているようで知らない」というこの題材は子供たちの「知りたい」「聞きたい」という意欲を喚起するはずである。また,英語によって日本の文化を初めて知るという体験にも子供たちはおもしろさを感じるだろう。
※ この活動は光村教育図書から出版されている『JUNIOR COLUMBUS 21』所収の題材を使ったものである。この題材を使った渋谷の先行実践は光村教育図書のWebサイトに掲載されている。
http://www.mitsumura-tosho.co.jp/Kyoka/eigo/eigo_s/katudou/katudou_01.asp
B 読めるかな?
 アルファベットが表音文字であるのに対し,漢字は表意文字である。これは「漢字」という言語文化がもつ大きな特徴である。本時では「海」という文字を含む5つの難読漢字をクイズとして出題する。「海老」「海星」「海月」「海豚」「海馬」である。表意文字である漢字は,漢字自体がヒントとして機能する。「海に住む星の形をしたもの=ヒトデ」のようにである。ここに英語のヒントを加えながら「難読漢字を読む」という活動を楽しませたい。
C 日本語と中国語
 漢字は中国から伝わった文化であるが,日本語と中国語とでは同じ漢字であってもその意味が異なるものがある。この活動は日本語と中国語の意味の違いを楽しむクイズである。これも活動AB同様,言語文化を楽しみながら,英語によるコミュニケーションを具現できる活動である。

(3) 本時の展開(授業教室:3F多目的教室)

Min. Activities Notes
10 1 Storytelling
We have a tortoise in this classroom. Do you have any pets?
“I have a dog.” “I have a cat.” “I have a bird.”
(飼っているペットを尋ね,挙手させる。)
Look at this book. The title of this book is “Dear Zoo”.
 ペットがほしいので,「私にペットを送ってください。」と動物園に手紙を書きました。動物園はどんなペットを送ってきたのでしょうか。
Can you guess what animal this is?
・ライオンだと思う。
Are you sure? OK. Let's read the book.
(以下,動物を当てさせながら読み進める。)
“Dear Zoo”
(Rod Campbell)

・絵本の状況設定を日本語で説明してから,読み聞かせに入る。
・絵本に出てくる動物を当てさせながら読み進める。絵本本文のヒントだけで分からない場合には,ヒントを追加する。
■絵本の展開を楽しみながら,出てくる動物を当てる活動を楽しんでいる。
(自己評価カード)
15 2 What comes after the mouse?
(「子」を提示)
What's this? Can you read this?
・「こ」かな。「し」かな。
(十二支の漢字カードをすべて黒板に貼る)
What are these? Do you know?
・何だろう。分からないな。
・干支かな。
Yes. They are eto. How many cards are on the board? Let's count them together. There are twelve cards. What's twelve in Japanese?
・12。
Yes, that's why we call them 十二支. They are animals. Do you know all of them?
・いくつかは知っているけれど,全部は分からないなぁ。
(『巳』の漢字カードを示しながら)
I know this one. This is my eto. Can you read this kanji? This is 巳(み). What animal is this? It's a snake.
What's your eto?
・「丑」
・「寅」
Which one is your eto? Can you point to the card? This one?
・どの漢字だろう。
What animal does it mean?
(以下,十二支カードを指しながら,何の動物かを当てさせながら確認していく。)
Let's say them together.
・絵カードを見ながら干支を言う。
・漢字カードを見ながら干支を言う。

(十二支時計の枠を掲示)
How many spaces are there?
・12。Twelve.
So, all the eto signs go into these spaces.
Here is the mouse.
(「子」(mouse)カードを貼る。)
What eto comes after the mouse?
・丑。
Good. The cow comes after the mouse.
(以下同様に十二支の順序を確認していく。)
・干支の順序ってどうだっただろう。
・干支の順序なんて分からないな。
(カードを順に貼り終えたところで)
Let's say them together.
Let's say them in Japanese.
(教室の時計を指しながら)
That's a clock and this is a clock, too.
(子を指しながら)What time is it?
・12時。
Yes. It's twelve o'clock.
(午を指しながら)What time is it?
・12時。
No. They're different.(通常のアナログ時計と十二支時計を比べながら話す)
This point is twelve o'clock. It's midnight. You're usually sleeping at this time. This point is twelve o'clock. It's noon. It's time for lunch.
・そうか。ふつうの時計とは少し違うのだ。
(昼の12時に貼られている午の絵を指しながら)
Do you remember this kanji?(カードを裏返し「午」の漢字を確認。)It means noon. So you say 午前 before this time and you say 午後 after this time.

(方位磁針を見せながら)
What's this?
・方位磁針だ。
How do you say this in English? Do you know? It's a compass. This is a compass, too. It has four letters. What letters does it have?
・N, S, E, W
・分からないな。
Which way is north? What eto is north?
・どっちだろう。(どの動物だろう。)
The mouse is north.
(以下,4方位を当てさせながら,十二支時計にN,S,E,Wの四つのアルファベットを書いていく)
Look at this compass.
We can see these kanji in this compass.
・十二支のカードは片面に漢字,もう片面に動物の絵をプリントしたものを使う。
・子→申→未→午→卯→巳→酉→戌→寅→丑→亥→辰の順に提示する。

・最初にHRTの干支を示し,干支が動物を表していることを知らせる。

・子供たちの干支は2つに限定されているので,双方の干支について,該当する漢字を尋ねる。


・それぞれの干支の子供を指名し,該当の漢字を指摘させる。



・挙手→指名の形式で進める。

・絵カードを見て干支を発話させるだけでなく,漢字カードを見て干支を発話させることにより,中学年の知的な面を刺激する。

・十二支時計にカードを貼っていくときには,絵の面が見えるように貼っていく(裏面は漢字)。

・分かる子供に自由に発言させながら進めていく。

・十二支の順序が確定したら,「英語の動物名→漢字」の順で確認していく。




・ジェスチャーや絵を示し,真夜中と正午の違いが対比的に理解できるようにする。








・方位を扱う際,時間に余裕があり,子供たちが十分に理解できているようであれば,国語辞典を使いながら子午線についても触れる。
・干支の漢字が使われている方位磁針を紹介する。

■干支を題材とした活動を楽しんでいる。(自己評価カード)
■干支の漢字が表す動物や干支の順序を当てようとしている。また,HRTの発話内容を推測しながら聞こうとしている。
(授業中の見取りと自己評価カ ド)
10 3 Can you read this kanji?
I'll give you some kanji quiz. If you know the answer, raise your hand. The first question is easy.
^ 「海老」
(「海」だけを示して)What's this kanji?
・海だ。
Yes, I live in the ocean. I'm a small shellfish. I have a long tail and many legs. You eat me as sashimi.
・エビだ。
Good. The answer is ebi. How do you say ebi in English? Shrimp. Let's say it together.
_ 「海星」
This means the ocean and this means stars. We call this starfish in English. I look like a star. How do you read this kanji?
・ヒトデかな。
` 「海月」
How about this? It means the ocean and it means the moon. Do you know the answer? Do you want some hints? I have a clear and soft body. I sting you. We call this jellyfish in English. I look like an umbrella.
・クラゲだ。
a 「海豚」
This means a pig. I can swim very fast. I can jump up very high. I'm very smart. You can see me in aquarium.
・イルカだ。
How do you say iruka in English?
・Dolphin!
b 「海馬」
The last question is difficult. What's this animal? I live in the ocean. I'm big. We call this sea lion in English. I look like azarashi.
・トドかな。
・「海」を使って表現される生き物について5題のクイズを出題する。1問目は多くの子供たちが知っているであろう問いにする。

・表意文字である漢字の利点を生かし,一つ一つの漢字の意味から答えが推測できそうな生き物を出題する。(「海星」「海月」)

・日本では海の馬と表現され,英語では海のライオンと表現されるトドを出題し,両言語の表現の違いを楽しむ。

・それぞれの漢字について,英語ではどのように表現するのかにも触れ,いっしょに発話してみる。

■難読漢字の読み方を当てる活動を楽しんでいる。(自己評価カード)
■難読漢字が表す生き物を当てるため,HRTの発話する英語の内容を推測しながら聞いたり,答えようとしたりしている。(授業中の見取りと自己評価カード)
10 4 What does it mean in Chinese?
^ 「走」
Can you read this character?
It means "run" in Japanese. (It's "run" in Japanese.)
But it has a different meaning in Chinese. What does it mean in Chinese? (What is it in Chinese?) You can answer in Japanese.
It's "walk" in Chinese.
_ 「湯」
It's "hot water" in Japanese. But it's not "hot water" in Chinese. What is it in Chinese?
It is "soup" in Chinese.
` 「電車」
It's "an electric train" in Japanese.
What is it in Chinese? It's "a bus" in Chinese.
a 「娘」
It's "a young woman" in Japanese.
What is it in Chinese? It's "mother" in Chinese.
b 「手紙」
It's "a letter" in Japanese.
What is it in Chinese? It's "toilet paper" in Chinese.
・「走」→「歩く(中国)
・「湯」→「スープ(中国)
・「電車」→「バス(中国)」
・「娘」→「母(中国)」
・「手紙」→「トイレットペーパー(中国)」
・分かってもすぐに声に出させず,手を挙げて答えるよう指示する。

■中国と日本の漢字の意味の違いに関心をもちながら活動を楽しんでいる。(自己評価カード)
・表意文字である漢字のよさを日本語で伝えて授業を終える。
授業記録へ