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平成16年度 校内研修計画

1 研究主題

コミュニケーション能力の基礎を育成する英語活動の指導

2 主題設定の理由

 平成11年のケルン・サミットで小渕首相(当時)が次の声明を発表した。

グローバル化時代の「読み書きそろばん」は外国語教育,コンピューター等を自由に操る能力の育成である

 また,平成12年10月には,大島理森文部大臣(当時)が「〜よりよい教育を目指して〜」と題した文章を発表した。その文章の冒頭で,「教育の目的」として第一に挙げられているのが次である。

 基礎的な学力(読み・書き・計算,世界の中で生きるための外国語や情報活用能力)の向上

 文部大臣が示した公の文章の中で,外国語が基礎的な学力であると明記されている。
 このような中,平成13年2月に文部科学省は『小学校英語活動実践の手引』を刊行し,さらに平成14年7月12日には「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」を発表した。その中には,構想の趣旨として次の文章が示されている。

 経済・社会等のグローバル化が進展する中,子ども達が21世紀を生き抜くためには,国際的共通語となっている「英語」のコミュニケーション能力を身に付けることが必要であり,このことは,子ども達の将来のためにも,我が国の一層の発展のためにも非常に重要な課題となっている。
 その一方,現状では,日本人の多くが,英語力が十分でないために,外国人との交流において制限を受けたり,適切な評価が得られないといった事態も生じている。同時に,しっかりした国語力に基づき,自らの意見を表現する能力も十分とは言えない。
 このため,日本人に対する英語教育を抜本的に改善する目的で,具体的なアクションプランとして「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」を作成することとした。あわせて,国語力の涵養も図ることとした。

 翌年3月には「戦略構想」が「行動計画」へと具体化され,次の目標が設定された。

【目標】
国民全体に求められる英語力
「中学校・高等学校を卒業したら英語でコミュニケーションができる」
○ 中学校卒業段階:挨拶や応対,身近な暮らしに関わる話題などについて平易なコミュニケーションができる(卒業者の平均が実用英語技能検定(英検)3級程度)
○ 高等学校卒業段階:日常的な話題について通常のコミュニケーションができる(卒業者の平均が英検準2級〜2級程度)
専門分野に必要な英語力や国際社会に活躍する人材等に求められる英語力
「大学を卒業したら仕事で英語が使える」
○ 各大学が,仕事で英語が使える人材を育成する観点から,達成目標を設定

 「行動計画」の中では,「小学校の英会話活動の支援」についても触れられており,次の目標が掲げられている。

【目標】
○総合的な学習の時間などにおいて英会話活動を行っている小学校について,その実施回数の3分の1程度は,外国人教員,英語に堪能な者又は中学校等の英語教員による指導を行う。

 さらに,今年3月,文科省は,小学校段階で英語を教科として必修化することの可否を検討する方針を決め,中央教育審議会の教育課程部会に専門家らによる調査グループを設置した。1年後をめどに基本的な方向を示すという。
 21世紀を生きる子供たちにとって「英語によるコミュニケーション能力」は必須の学力なのである。グローバル化が進む中で,多くの保護者も子供たちに英語によるコミュニケーション能力が育成されることを望んでいる。
 しかし,現段階では小学校英語は教科ではない。あくまでも「総合的な学習の時間」の枠内で行われる活動である。英語学習ではなく「英語活動(英会話活動)」である。英語学習が言語の習得を目指すものであるのに対し,「英語活動(英会話活動)」は,英語によるコミュニケーションに対する興味・関心や積極的な態度を育成することを目指している。これはコミュニケーション能力の基礎となる要素である。この点に関し,Tom Merner氏は次のように述べている。

■小学校の英語活動が目指すもの
 問題の一つとして上げられるのが,小学校英語活動が目指しているものは何かということです。多くの小学校の先生からは,「『総合的な学習の時間』,また,『国際理解』の枠組みの中の英語活動とは何か?」そして,「その具体的な目標は何なのか?」という疑問がよく聞かれます。「小学校英語活動実践の手引」の中にもあるように,小学校における英語活動は言語習得を主な目的とするのではないことから,英語「学習」ではなく「活動」として区別されており,その目標は体験的な学習を通して英語でコミュニケーションを図ろうとする興味・関心や意欲を育てようとするものです。これは,中学校や高等学校の英語が目指している英語によるコミュニケーション能力育成の下地とも言えるでしょう。 

 それでは,具体的にこのような英語によるコミュニケーションに対する興味や態度を育てるにはどのような授業が考えられるのでしょうか?中学年においては,英語の歌が歌えるようになったことや英語でのゲームができたこと,また,クイズなど簡単な英語でのやりとりができたことで英語に対する興味をもつことも可能と考えられます。このような活動は,英語に触れることで興味をもつという意味ではよい活動ですが,これをコミュニケーションの道具としての英語へとつなげていくためには,実際にコミュニケーションが行われている環境に子どもたちを置く必要があります。よく見られる活動としては,決まったパターンのロール・プレーやごっご遊びという活動形態ですが,これらは,はたしてコミュニケーションが行われている環境と呼べるのでしょうか?また,完成された発話のやり取りが練習を通してできるようになったということで,コミュニケーションが成立したと言えるのでしょうか?
 小学校段階における英語でのコミュニケーションでまず大切なのは,発話ではなく,目的と意味のある英語を聞いて,それを理解しようとする態度をもつことと,そのような場面において相手に何らかの反応を示そうとする態度をもつことだと考えます。
(NHK『スーパーえいごリアン』のサイトより引用)

 以上のような理由から,表記の主題を設定し,英語によるコミュニケーション能力の基礎を育成するための研修を進めていくこととした。

3 研修内容

(1) 年間指導計画の作成と蓄積
 各学年とも,次の時数で指導計画を作成する。

・3年生〜6年生 年間35時間程度(かがやきタイム)
・1,2年生 年間10時間程度(特別活動+生活科)
※ 1,2年生は15分×30回

ア 文法事項や文型中心に言語材料を選択して配列する文法シラバス
イ 「学校で」のように場面を選択して配列する場面シラバス
ウ 「あいさつ」「謝る」などのように言葉の働きを選択し配列する機能シラバス
エ 「聞くこと」「話すこと」などを構成する「言葉の要素」,例えば,正しく発音することなどを選択して配列する技能シラバス
オ 与えられたタスク(作業)を遂行することで言葉を学習するタスクシラバス
カ 各教科等で学習する内容を英語を通して学習する内容シラバス

 『小学校英語活動実践の手引』には,上のシラバス(カリキュラム)のタイプが示されており,「小学校における英語活動は,イ〜カを重視した混在型のシラバスが適している」とされている。
 アの文法シラバスは小学校英語のシラバスとして論外である。エ,カの技能シラバス,内容シラバスを授業化することも現状の私たちの指導力量では難しい。そこで,イ,ウ,オの混在型シラバスを採用することとする。また,ゼロから指導計画を作成することも困難であることから,次の四つを組み合わせて指導計画を作成することとする。

A NHK「えいごリアン」の指導計画
B NHK「スーパーえいごリアン」の指導計画
C 渋谷実践の指導計画
D その他の指導計画

 A,Bについては,「ビデオ教材」「1時間のレッスンプラン」「Webサイト上での教師サポート」がそろっており,CもWebサイト上に「指導計画」「1時間のレッスンプラン」「簡易授業記録」を公開している。

 具体的には,各学年が次のように指導計画を作成する。

・1,2年生 ALTとのゲーム,英語を使った遊び等
・3年生 「えいごリアン(2000年度放送分)20時間」+15時間
・4年生 「えいごリアン(2001年度放送分)20時間」+15時間
・5年生 「スーパーえいごリアン(2003年度放送分)20時間」+15時間
・6年生 「スーパーえいごリアン(2002年度放送分)20時間」+15時間
※ +15時間分については,C,Dを使う。
※ 実施前に35時間分を作るのではなく,1時間ずつ蓄積していき,3月末の段階で指導計画ができあがっていることを目指す。
※ 指導計画の形式は「研修通信」NO.2で示したとおりとする。

(2)  1時間毎のレッスンプランの作成と蓄積
 1時間のレッスンは5分×9パーツで構成することを基本とする。次の理由による。

・5分のパーツで構成することにより,授業にリズムとテンポが生まれる。
・パーツの組み合わせを変化させることにより複数の授業が考えられるため,レッスンプランが立てやすい。

※ もちろん,活動によっては2,3パーツ(10分,15分)で1活動ということがあってよい。
※ レッスンプランの形式は「研修通信」NO.2で示したとおりとする。

(3) 教材の作成と蓄積
 『えいごリアン』『スーパーえいごリアン』のVTR及び英語カルタ,フラッシュカード等の他,授業のために作成した教材は蓄積していくものとする。指導計画,レッスンプラン,教材の三つがそろうことにより,翌年以降の追試や修正が可能となるからである。

(4) 指導法研修の実施
 先に「行動計画」に示されている次の目標を引用した。

【目標】
○総合的な学習の時間などにおいて英会話活動を行っている小学校について,その実施回数の3分の1程度は,外国人教員,英語に堪能な者又は中学校等の英語教員による指導を行う。

 これは,逆に考えれば,3分の2は学級担任が授業しなければならないということである。また,ALTは文字通りAssistant Language Teacherであり,授業のプロフェッショナルではない。授業を運営していくのは学級担任である。(1)〜(3)及び実際の授業実践を通して,学級担任の指導力量を向上させていかなければならない。

4 研修方法

(1) 学級担任全員が1回以上の公開授業を行う。
(2) 指導案検討は学年部+研究部+希望者で行う。ただし,外部より指導者を招く場合は,全員検討とする。協議会は,すべての授業について全員で行う。
(3)  授業者は研究協議会を受けて,実践を評価・反省し,その成果と課題を明文化する。
(4) 「年間指導計画」「レッスンプラン」「教材」の三つをまとめることをもって,今年度の研修のまとめとする。
(7) 授業者が明文化した「成果と課題」を共有できるかたちで整理する(研究部)。

5 指導に当たっての基本方針及び留意事項

(1) ねらい
 英語を使った活動を通して,英語に対する興味・関心を高めると共に,英語によるコミュニケーションの基礎を育成する。

<目標とする姿の具体例>
・積極的に英語を使って,ゲームやごっこ遊びに参加できる。
・間違いを気にせず,大きな声で英語を真似しようとする。
・英語が完全に聞き取れなくても,何とか理解しようとする。
・聞き取れた英語を手がかりに,意味内容を類推しようとする。
・ALT等,外国人と積極的にコミュニケートしようとする。
(「手引き」より)

(2) 指導体制
ア HRTによる授業
イ HRTとALT(Assistant Language Teacher)によるTT(Team Teaching)
※ アとイを隔週で行う。
※ ALTとのTTの場合も,HRTがレッスンプランを作成する。

(3) 基本方針
・言語習得を目的とするのではなく,興味・関心や意欲の育成をねらう。
・「聞く・話す」(音声言語活動)を中心とする。「読む・書く」(文字言語)は,高学年において子供たちの実態が適合した場合のみ,扱うこととする。
・無理に話させることはせず,英語を聞く活動を十分に行うようにする。
・覚えるための単調なドリル学習は避け,コミュニケーション活動を重視した学習を行う。
・「できた・できない」を数値で評価するのではなく,活動への参加意欲を重視した評価を行う。

(4) 留意事項
・逐一日本語に訳さない
・英語の発音をカタカナに置き換えない
・無理に覚えさせない
・誤りは細かく訂正しない
・一斉授業だけでなく,いろいろな学習形態を工夫する。

4 研修日程

※ 別紙計画による

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