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『きつねのおきゃくさま』全発問・全指示

きつねのおきゃくさま(その1)

国語で「きつねのおきゃくさま」という物語の学習に入りました。昨日からです。あまんきみこという童話作家が書いた作品です。今年から教科書が新しくなりましたが、この物語は今までの教科書には載せられていなかった新しい教材です。したがって、この物語を学習するのは今年の2年生が最初ということになります。
さてこの物語、2年生の子供たちにとっては、かなりの長文です。子供たちだけでどの程度読めるものなのでしょうか。
20分ほど時間を与え、2回ほど黙読させた後で尋ねました。
お話のなかみが大体わかるようになった人?

手を挙げた子は10名でした。残りの19名の子供たちは2回の黙読だけではなかみがよくわからないということです。
そこで、私が読んで聞かせることにしました。1回、私の精いっぱいの朗読を子供たちに聞かせた後、もう一度尋ねました。
お話のなかみが大体わかるようになった人?

今度は全員が大体わかるようになったと言います。
子供たちはこの物語に対し、どんな感想を持ったのかを知りたいと思い、簡単に感想を書いてもらうことにしました。

このお話の感想を3行くらいでいいですから、簡単に書いてください。

と指示を出し、原稿用紙半分に書いてもらいました。
子供たちが書いてきた感想を紹介します。
わたしが、おもしろかったところは、とっぴんぱらりのぷうです。それに、ひよこが春の歌を歌っているところがおもしろかったです。

ぼくが一ばんおもしろかったところは、おおかみとたたかったところです。

おもしろいところは、とっぴんぱらりのぷうです。はくりょくがあったのは、じつにじつに、いさましかったというところです。とってもおもしろかった。

きつねは、ひよことあひるとうさぎをそうともかみさまみたいにそだてた。このところはきつねもやさしい。

さいしょにきつねはひよこたちを食べようとしてたけど、おおかみとたたかってしんだから、先生よりゆうきのあるきつねだと思いました。

はらぺこきつねがひよこをねらってがぶりとやろうとして、ひよこが「きつねおにいちゃん」といったところがおもしろかった。

さいごのところがかなしかったです。なぜなら、きつねたいおおかみで、きつねがしんだからです。

親切なかみさまみたいなきつねがしんだから、かわいそうです。

最後にきつねがしんだのがかわいそうでした。

わたしは、きつねがしんでしまったところが、かわいそうだと思いました。だって、あのいいやさしいきつねくんがしんでしまったんですから、かわいそうだと思います。

おおかみとたたかうゆうきがあるなんて、すごいと思います。
さいごには、はずかしくてわらってしんだと書いてあるのでとってもかわそうでした。
天国できっとしあわせになっているでしょうね。

わたしは、「そのばん、きつねははずかしそうにわらってしんだ。」というところがかわいそうでした。
それは、おおかみはにげていったのに、きつねはしんでしまったからです。

おもしろかった。だけど、しんだところがおもしろくなかった。

わたしは、このおはなしでいちばんかわそうだったのは、しんだことです。
ちょっとはわるいことをしたけど、しんじゃうとちょっとかわいそうでした。

たたかったことがすごかった。しんじゃっとところがかわいそうだった。
さいごの「とっぴんぱらりのぷう」がおもしろかった。
春の歌と夏の歌がどんな歌か聞きたかった。

きつねはひよことあひるとうさぎをたすけて、なんでわらうのかな。だから、かわいそうだと思いました。

わたしはかわいそうだと思いました。かわいそうだと思ったところはきつねがなくなったところです。

おもしろかったのは、おおかみときつねがたいせんあことです。

ぼくがおもしろかったところは、つぎの2つです。
きつねははずかしそうにわらってしんだ。
とっぴんぱらりのぷう。

わたしは、かわいそうだと思います。くろくろ山のおおかみとたたかってしんでしまった。だけど、うさぎとひよことあひるがうめてくれたのでよかったです。

おもしろかったけど、さいごに一人しんでしまったところがかわいそうでした。
うさぎとひよことあひるがはかを作ってかわいそうだと思いました。

きつねがひよこをやさしくして、きつねは、とてもやさしいとわたしは思いました。
でも、さいごにはおおかみとたたかってしにました。とてもかわいそうでした。

ひよこがきつねに「おにいちゃん」といったことがおもしろかったです。いちばんかなしかったのは、きつねがわらってしんだことです。

さいごのほうの、「そして、せかい一やさしい親切な、かみさまみたいな、その上ゆうかんなきつねのためになみだをながしたとさ。」のところがかわいそうだった。

ぼくはしんだところがかわいそうだったです。そして、おおかみがにげていたのがおもしろかったです。「きつねおにいちゃん」といったところがおもしろかったです。

そのばん、きつねは、はずかしそうにわらってしんだ。のところがかわいそうでした。

ぼくは、かわいそうだと思います。なぜなら、死んでしまったからです。

わたしは、いちばんさみしかったところは、きつねが、はずかしそうにわらってしんだところです。

おもしろかったところは、「やあきつねおにいちゃん。」「おにいちゃん?やめてくれよ。」

きつねのおきゃくさま(その2)

【2時間目の学習】
昨日、千春さんが、
「わたし『きつねのおきゃくさま』の本持っているよ。」
と声をかけてくれました。私は、
「じゃあ、明日持ってきてくれる?」
とお願いし、千春さんは忘れずに持ってきてくれました。

国語の時間です。
「昨日、みんなに感想を書いてもらう前に先生が読んでやりましたね。実は今日、先生は千春さんから本を借りたのです。教科書には、絵があまり入っていませんが、この絵本には全部のページに絵が入っています。」
こう言って「きつねのおきゃくさま」の絵本を子供たちに見せました。
「先生、読んで!」
子供たちの声です。もちろん読んでやりました。中には、
「私、死んじゃうところ見たくない!」
と言って顔を背ける子もいました。
子どもたちの方へ絵を見せながら、昨日と同じように読んでやりました。もう何回も読んでいるはずなのですが、子どもたちは最後まで真剣な顔で聞いていました。
さて、読み聞かせが終わった後で、こんな話をしました。
みんなは、保育所の子や1年生にこのお話を読んであげられますか。(「できない。だって、上手に読めないもん」の声)
そうか、じゃあ1年生や保育所の子に読んでやれるように練習しようね。

子どもたちもすっかりその気になったようです。

まず、最初のページ(6行あります。)を全員で声を揃えて読ませてみました。初めて一緒に読むにしては結構上手に読めているのですが、やはり練習不足は否めません。
「下手くそですねえ。先生と一緒に練習しましょう。先生の後についていらっしゃい。」

こんなふうに誘いかけて練習を始めました。
一通り読み終わったところで時計を見ると30分が過ぎています。残り15分は子どもたちに練習させることにしました。
全員起立。自分の早さでいいですから、音読の練習をしなさい。

このように、指示を出すと、子どもたちは一生懸命に音読の練習を始めました。中には、休み時間に入っても練習している子どももいました。

【3時間目の学習】
さて、昨日の時間表は2、3時間目と国語が続いていました。3時間目に前の時間の続きをやりました。
まず、全員で声を揃えて1回音読をさせました。上手になっています。1回読む度に子どもたちの読み方が変わっていくのが分かります。ここまでで、多い子どもはすでに8回、少ない子でも5回は読んでいます。
いよいよ、内容を読みとっていく学習に入ります。
登場人物は何人でしたか。

こう尋ねました。これは簡単です。

きつね、ひよこ、あひる、うさぎ、おおかみの5人です。29名全員の意見が一致しました。

そうですね。物語を読むときには、まずどんな登場人物が出てきたのかを考えるのです。では、この中で主人公は誰ですか。

これがおもしろい学習になりました。 〜次号へ〜

きつねのおきゃくさま(その3)

【3時間目の続き】
主人公は誰ですか。

これが問題でした。
最初は全員が「きつねである」と言ったのです。ところが、理由を言ってもらっているうちに子どもたちが迷ってきたのです。
星野敦くんがこんな理由を発表してくれました。
「題が『きつねのおきゃくさま』だから、きつねが主人公だと思います。」

これには、敢くんから次のような反論が出ました。
「『うしろのまきちゃん』を勉強したとき、題は『うしろのまきちゃん』だったけれど、主人公はたけしくんでした。だから、題は関係ないと思います。」

実はここから子供たちの悩みが始まったのです。なぜなら、題は『きつね』ではなく『きつねのおきゃくさま』だからです。
「もしかしたら、きつねが主人公なのではないのかもしれない。」
と言い始める子どもが出てきたのです。
「でもやっぱり、きつねが主人公である」と主張する子はわずかに2名になりました。残りの27名は迷っているわけです。
これはなかなかおもしろくなってきました。
ここで、淳君が、
「前に、一番活躍している人が主人公だと勉強したことがあります。このお話はきつねが一番活躍しているから、きつねが主人公だと思います。」

と発表しました。この淳君の意見でまた「きつね派」に戻った子どももいましたが、まだ迷っている子どもが多くいます。
このまま話し合いを続けていても、平行線をだどりそうです。そこで、私が助言をしました。
淳君の考えはすばらしいですね。でもまだ迷っている人もいるようです。主人公を考えには、淳君が言ってくれた他にもう一つ方法があります。それは、話者について考えてみるのです。


このお話で話者はどこから見て話をしていますか。教科書の絵に話者の目を書き込みなさい。

このように尋ねたのです。話者の目を書き込むという学習は1年生の時に「花いっぱいになあれ」でやっていますから、子どもたちはできます。
3分ほど待ち、子どもたちの考える話者の位置を発表してもらいました。右の絵をごらんください。
ほとんどの子がアの位置から見ていると考えているようです。あやこさんはこんな理由を言ってくれました。
「『はらぺこきつねが歩いていると、やせたひよこがやってきた。』と書いてあるから、話者はきつねの方から見ていると思います。」
ところが、反対意見が出ました。イの場所に書き込んでいる子が11名いたのです。大くんから、代表して黒板に目を書き込んでもらいました。
そして、孝征くんが理由を発表してくれました。
「『きつねは、心の中でにやりとわらった。』と書いてある。話者がアの場所から見ていたのなら、心の中で笑ったことがわかるわけがないから、話者はきつねの心の中から見ていると思います。」

これは説得力があります。アだと言っていたこも全員イに意見を変えました。話者は登場人物の心の中にまで入ることができるわけです。昨年の学習が生きていたのか、ウだと言う子が一人もいなかったのはすばらしいことだと思います。
さて、話者はきつねの心の中から見てこのお話を話していることがわかりました。ここで、もう一度尋ねました。
主人公は誰ですか。

今度は全員が自信たっぷりの表情で「きつね」だと答えます。
この後、場面は全部で7つあることを確認し(場面間は行があいているのですぐわかるのです)、これからの学習では1場面から順番にきつねの心の中を詳しく読んでいこうということで、学習を終えました。

きつねのおきゃくさま(その4)

【4時間目の学習】

昨日までで子どもたちは、次のことを学習したことになります。

○物語を読むときにはまず、登場人物が誰なのかを調べる。
○登場人物のうち誰が主人公なのかを考える。
○主人公が誰かわかったら、主人公の心の動きに気をつけながら読んでいくことにする。

上の3つは物語を読むときの一つの学習パターンになります。このように学習の方法を学んでいくことによって、子どもたちは自分の力で物語を読んでいけるようになります。
さて、きょうからはいよいよ、主人公の心の動きに着目しながら、読んでいく学習になります。
1場面の学習です。
まず、全員を起立させ、それぞれ自分にあった早さで1音読させました。そして、その後、今度は声を揃えて全員で音読です。多少、声にばらつきがありましたので「98点です。」と告げ、
「明日は100点になるようにがんばろうね。」
と声をかけました。

子どもたちに問います。
1場面では、きつねの心は変わっていますか。それとも、同じですか。

「変わっている」という子どもは3名、「変わっていない」という子が26名でした。それぞれの理由は次の通りです。

変わっている
○最初はひよこを食べようと思っていたのに、ぼうっとなったから。
○最初はひよこを食べようと思っていたのに、終わりの方では「それはやさしく、食べさせた。」と書いてあるから。

変わっていない
○1場面では最初から最後まで太らせてから食べようと思っているから。
○最後に「ひよこはまるまる太ってきたぜ。」と書いてあるから。

話し合いが、心の変化の内容にまで入ってきましたので、もう少しくわしく文章を調べさせることにしました。

きつねの心の中を調べるには、いい方法があります。前に「つばめ・ひよこ」で勉強したことです。(「わかった。対比だ。」の声)そうです。対比です。1場面の中できつねの心の中が対比されているところを探してごらんなさい。

子どもたちは取り組み始めたものの、少々手こずっているようでした。
5分ほどたったところで、晃一くんが発表してくれました。
「がぶりとやろうと思ったが、」と「太らせてからたべようと」

なるほど、対比にも思えますが、実はこれは両方食べようと思っていることには変わりがないわけですから、類比になります。そのことを私が説明すると、子どもたちは全員「そうだ、これは類比だ。」と納得しました。
結局、子どもたちが対比としてあげてきたのは、次の3つです。
にやりとわらった。→ぼうっとなった。
太らせてからたべようと→ぼうっとなった。
「おにいちゃん?やめてくれよ。」→ぼうっとなった。

〜次号へ〜

きつねのおきゃくさま(その5)

【4時間目の学習の続き】

ここまでわかったところでもう一度尋ねました。
1場面できつねの心は変わっていますか。それとも同じですか。

今度は28名が「変わった」と言います。和美さんだけが「変わっていない」という意見でした。(この和美さんの意見が後で生きてきます。)
じゃあ、ほとんどの人たちは変わったというんだね。では聞きますが、1場面できつねの心が変わったのはどこですか。

このように尋ねてみました。
子どもたちからは2通りの意見が出ました。
ア 「きつねおにいちゃんってやさしいねえ。」
「やさしい?やめてくれったら、そんなせりふ。」
でも、きつねは、生まれてはじめて「やさしい」なんて言われたので、少しぼうっとなった。

イ きつねは、ひよこに、それはやさしくたべさせた。そして、ひよこが「やさしいおにいちゃん」と言うと、ぼうっとなった。

この後、それぞれ理由を発表させたのですが、なかなか言えません。自分がなぜそう考えたのかを自問することは大切なことですので、しばらく待つことにしました。(子どもたちには、日頃から「なぜ?」に強くなれと言っています。)
あやこさんと泰士くんが口火を切りました。二人ともほぼ同じような理由です。
「『それはやさしくたべさせた。』のところだと思います。なぜなら、最初はがぶりとやろうと思っていたのに、最後はやさしく食べさせているからです。」

この意見に対し、ひろみさんは次のように発表しました。
「でも、『生まれてはじめて「やさしい」と言われてぼうっとなったのだから、ここだと思います。』

ここで、あやこさんがまた意見を出しました。
「どちらもまちがっていないと思います。なぜなら、どちらも『やさしい』と言われてぼうっとなったからです。どっちもいいと思います。」

これは、全員の賛成を得ました。ただ、一つ確認しておきたいと思い、わたしは尋ねました。
どちらがいっぱいぼうっとしていますか。

ここで、「あっ」いう声が聞こえました。アは「少しぼうっとなった。」と書いてあるのに対し、イは、「ぼうっとなった。」と書いてあるからです。
これで、子どもたちはきつねの心はだんだんと変わってきたのだということに気づいてきました。
私はさらに揺さぶりました。
みんなは、ひよこをがぶりとやろうと思っていたきつねの心が変わってきたと言いましたが、1場面の最後では食べようとは思わなくなったのですね。

子どもたちは、「ちがう。まだ食べようと思っている。」と答えます。つまり、「1場面できつねの心は変わっていない。」と言った和美さんの意見もまちがっていないことがわかったわけです。
まだ、食べようという心はあるけれど、ひよこが言った「やさしい」という言葉できつねの心はだんだん変わってきた。

この時間に学習した1場面のきつねの心をまとめると上(略)のようになります。
最後に子どもたちに尋ねました。
昨日より、きつねの心がわかってきた人?

29名全員が手をあげました。
次の時間は、2場面のきつねの心の中を読んでいくことを確認し、学習を終えました。

きつねのおきゃくさま(その6)

【5時間目の学習】
この時間は2場面のきつねの心の中を読み取っていく学習です。前の時間と同じく、自分のペースで1回音読させた後、全員で声を揃えて音読させました。
子供たちに尋ねます。

2場面で、きつねの心は変わっていますか。変わっていませんか。

「変わっている」と答えた子が6名、「変わっていない」と答えた子が21名でした。理由は次の通りです。
〈変わっている〉
○1場面では、ちょっといいきつねになってきたのに、2場面では「はあん。にげる気かな。」と書いてあるから、また悪い気持ちが出てきた。
○「はあん。にげる気かな。」と言っていたのに、「きつねは、ひよことあひるに、それは親切だった。」と書いてある。
○「それは親切だった。」と書いてあるのに、最後にまた「あひるもまるまる太ってきたぜ。」と書いてある。

〈変わっていない〉
○最後に「あひるもまるまる太ってきたぜ。」と書いてあるから、きつねは2場面でも食べようと思っている。

理由を発表してもらったところで、それぞれ反論を言ってもらいました。
「私は、変わってないと思います。なぜなら、『あひるもまるまる太ってきたぜ。』と書いてあるから、きつねは、ずっと食べようと思っていると思います。親切にしたのは、太らせてから食べようと思っているから親切にしたのだと思います。」(ひろみさん)
「ぼくは、ひろみさんに反対です。太らせてから食べようという気持ちはあったけれど、親切にしたのは、ひよこやあひるに『親切』と言われたからだと思います。」(敢くん)

【6時間目の学習】
この二人の相反する意見で、論争が起こったのです。論点は次の1点です。
きつねが親切にしたのは、ひよこやあひるに「親切」と言われたからか、それとも、「太らせてから食べよう」と思ったからか。

全体の人数を確認しました。「太らせてから食べようと思っているから」という子が5名ほど、残りの子供は「親切と言われたから」と言います。
敢くんが主張します。
「最初は、『にげる気かな』と思っていたのが、ひよこに『きつねおにいちゃんはとっても親切なの。』と言われて、ちょっといいきつねになって、親切にしたんだと思います。でも、まだ食べようという気持ちはあるから、『あひるもまるまる太ってきたぜ。』と書いてあるんだと思います。」
ひろみさんが反論します。
「でも、最後に『あひるもまるまる太ってきたぜ。』と書いてあるんだから、きつねは、ずっと食べようと思っているんだと思います。だから、親切にしたんだと思います。」
山本淳くんが言います。
「『親切』と言われたきつねは、うっとりして、『親切なきつね』ということばを五回もつぶやいたし、『親切なおにいちゃん』の話をしているのを聞くと、ぼうっとなったんだから、『太らせてから食べよう』という気持ちだけじゃないと思います。」
ここで子供たちの考えを整理しました。
「太らせてから食べようと思っていたから」 1名
「親切と言われてうれしかったから」 0名
「両方の気持ちが混ざっている」 26名

盛り上がってきたのですが、時間になってしまいましたので2場面でのきつねの心の中は次の時間にまとめることにしてこの時間の学習を終えました。

きつねのおきゃくさま(その7)

【7時間目の学習】
前の時間にまとまらなかった2場面でのきつねの心ですが、結局次のようにまとまりました。
きつねの心は、ひよことあひるの「親切なおにいちゃん」という言葉でだんだん変わってきた。でも、まだ食べようという心はある。

さて、3場面のきつねの心です。子供たちは「3場面でもきつねの心はかわっているのだろうか?」という問題意識で学習に臨んでいます。
きつね心は3場面でも変わっているんでしょうかねえ。変わっているか、変わっていないかを調べるにはどうすればいいのかな。(対比を探す!という子供の声)では、3場面のきつねの心の対比を探してごらん。

子供たちが見つけてきた対比は下(略)の通りです。

対比というのは2つのものを比べたときの違いのことを言います。それに対し、類比は2つのものを比べたときの共通点です。例えば、渋谷と高橋先生を比べたとき、「渋谷は男だが、高橋先生は女」というのが対比になり、「2人とも教師である。」というのが類比になります。
子供たちは前に学習していますのでほぼわかっています。

さて、ここで考えているのは3場面でのきつねの心です。3場面の最初に、「はあん。にげる気かな。」という文があります。そして、3場面の最後に「うさぎもまるまる太ってきたぜ。」という文があります。この2つは「ひよこたちを食べようとしている」という意味で類比です。
しかし、ひよことあひるの言葉で「うっとりしてきぜつしそうになったり」、「3人をかみさまみたいに育てたり」、「ぼうっとなったり」しているわけですから、きつねの心は動いているわけです。
さて、ここまでわかったところで尋ねました。
きつねの心が動いたのはどこですか。

子供たちからは3つ出ました。
A.「ううん。きつねおにいちゃんはかみさまみたいなんだよ。」
それをかげで聞いたきつねは、うっとりしてきぜつしそうになったとさ。
B.そこで、きつねは、ひよことあひるとうさぎを、そうとも、かみさまみたいにそだてた。そして、三人が「かみさまみたいなおにいちゃん」の話をしていると、ぼうっとなった。
C.うさぎもまるまる太ってきたぜ。

Cは「いいきつねになってきたけれど、やっぱりまだ食べようと思っている。」という意味で全員の賛成を得ました。
問題は「食べようと思っていた心が、揺れ動いたのはどこか。」ということです。Aなのでしょうか、Bなのでしょうか。
子供たちの意見は全く半々に分かれましたが、
「AもBも、『かみさまみたい』ということばでうっとりしたり、ぼうっとなったりしている。どちらも、まちがいではない。」

という意見が出て、全員が賛成しました。
しかし、Aはひよことあひるの二人があひるに言った言葉であるのに対し、Bの方は、ひよことあひるとうさぎの三人が言った言葉であるので、どちらかというと、Bの方が「食べない」という心に近づいているということになりました。最後は子供たちみんなで、3場面のきつねの心を次のようにまとめてこの時間の学習を終えました。
きつねの心は、ひよことあひるとうさぎの「かみさまみたいなおにいちゃん」という言葉でだんだん変わってきた。でも、まだ食べようという心はある。

【8時間目の学習】
昨日までで、1場面から3場面までのきつねの心の様子を学習したことになります。今日は、いよいよ4場面のクライマックスと行きたいところなのですが、ちょっと、これまでの学習を整理することにしました。1場面から3場面までのきつねの心の動きがわかっていないと4場面での学習が大きく変わってくるからです。
子供たちに尋ねました。
これまで1場面から3場面までのきつねの心を勉強してきましたね。みんなは1場面から3場面までで、何場面のきつねが一番好きですか。

これは、全員が「3場面」だと答えました。
○1場面はひよこ、2場面はひよことあひるだけれども、3場面ではひよことあひるとうさぎの三人が「かみさまみたいなおにいちゃん」と言っている。3場面のきつねが一番いいきつねになっていると思うから。
○「食べよう」と思っていたきつねの心がだんだん「食べない」に近づいてきて、3場面が一番「食べない」という心に近づいたと思うから。

これが、子供たちが「3場面のきつねが好きだ」という主な理由です。きつねの心を図にかくと次(略)のようになるわけです。子供たちは、1場面から3場面までのきつねの心の動きについては理解してきているようです。
これまで、場面ごとに「きつねの心の様子」をカードに書いて掲示板に貼ってきたのですが、そこに「食べよう」「食べない」のカードを加え、掲示板に貼ってあるカードは次(略)のようになっています。
上の図を見てわかる通り、3場面までのきつねは、だんだん変わってきてはいるものの、まだひよこたちを「食べよう」という心を持っているわけです。
さて、問題は4場面ではどうかというところです。4場面はきつねがおおかみと戦った場面です。この物語のクライマックスです。4場面のきつねは「食べよう」から「食べない」に変わったのでしょうか。次の時間へのお楽しみです。
(今日、全校の先生方とお客様をお迎えして、4場面の学習を行いました。詳細は次号でお伝えします。)

きつねのおきゃくさま(その9)

いよいよクライマックス。4場面の学習です。実際の学習の様子をお伝えします。
4場面でもきつねは、ひよこたちを食べようとしてるのだろうか。

これが子どもたちの問題となっていたわけです。
全員で声を揃えて4場面を音読してもらった後尋ねました。
4場面できつねはまだ、食べようという心があるのだろうか。それとも、もう食べようという心はなくなったのだろうか。

「なくなった。」と言う子が28名、「まだある。」と言う子が1名でした。その理由はそれぞれ次の通りです。

〈なくなった〉
○「〜も太ってきたぜ」ともう書いていないから。
○食べようと思っているなら、おおかみと一緒に食べちゃうだろう。
○「じつに、じつに、いさましかったぜ。」というのは、「まもろう」と思ったからだろう。
○「きつねはとび出した。」のは、「まもろう」と思ったからだろう。
○「はずかしそうにわらってしんだ。」は、「まもろう」と思っていたからだろう。

〈まだある〉
○せっかく太らせたひよこたちをおおかみにとられたくなかったから、戦ったのだろう。
○「ゆうきがりんりんとわいた。」のは、おおかみに勝てると思ったからだろう。

子供たちからは、このような意見が出てきました。子供たちの対立点ははっきりしてきました。
きつねがおおかみと戦ったのは、ひよこたちを守ろうと思ったからか、それとも、おおかみにとられるのが嫌だったからか。

これをもっと考えさせればよかったのですが、私はここで次のように子供たちに投げかけました。
「食べようという心はもうない」と言った人達に聞きますが、3場面までは「食べよう」と思っていたんですよね。では、食べようという心がなくなったのはどこなのですか。

「食べようという心はもうない」と言った子供たちがあげてきたのは次の3箇所です。
○「いや、まだいるぞ。きつねがいるぞ。」
○きつねはとび出した。
○ある日、くろくも山のおおかみが下りてきたとさ。

大くんが「いや、まだいるぞ。きつねがいるぞ。」で変わったのだろうと発表してくれました。それに賛成して、晃一くんが、
「きつねは、ひよこたちを守ろうと思ったからそう言ったのだろう。」
と発言してくれました。
ここで次のことが問題となりました。
「いや、まだいるぞ。きつねがいるぞ。」と言ったのはおおかみなのか、きつねなのか。

大くんと私以外の全員が「これは、おおかみが言った言葉だ。」と言います。ここから、話し合いは混沌としてきました。 〜次号へ〜

【9時間目の続き】
「いや、まだいるぞ。きつねがいるぞ。」と言ったのはおおかみなのか、きつねなのか。

4場面のきつねが「まだ食べよう」と思っているのか、もう思っていないのかは、上の問題の答えが大きく影響します。
晃一くんが考えを変えて「きつねが言った言葉だ」という意見になりました。「きつねは、ひよこたちを守ろうとしてこう言ったのだ。」と言うのです。ただ、他の子供たちはなかなか納得しません。「これはおおかみの言葉だ」と言い張ります。「きつねが自分のことを『きつね』と言うはずがない。」というわけです。
私が説明しました。

「いや、まだいるぞ。きつねがいるぞ。」の後の『きつねはとび出した。』という文を見てください。上が一ますあいていないでしょう。だから、これはきつねが言ってとび出したのだと思いますよ。

これは、随分下手くそな説明の仕方です。今考えてみれば、子供たちはこの説明ではわかるわけがありません。文脈に沿って説明すればもっとわかりやすく説明できるのですが、それでは「4場面のきつねの心」私が説明してしまうことになってしまいます。やはり、これは子供たちに考えさせなくてはなりません。
問題がゴチャゴチャしすぎて、子供たちの思考を混乱させてしまったようです。私が子供たちの考えをもっとうまく整理してやらなくてはいけなかったのです。
ここまで考えさせたところでタイムリミット。続きは次の時間にやることにしました。
次の時間には、問題を次の点に絞って話し合いをさせたいと考えています。

4場面できつねがおおかみと戦ったのは、「ひよこたちを守ろうとした」からなのか、それとも「ひよこたちをおおかみにとられたくなかった」からなのか。

この問題に絞って考えさせれば、論点もはっきりし、きつねの心の様子についてもわかってくることでしょう。

さて、わざわざ来ていただいた教育センターの笠井先生からは、次のようなお話をいただきました。

2年生とは思えない勉強ぶりにびっくりしました。
まず第一に音読が上手です。すばらしいと思います。
次に子供たちの答え方です。教科書に書かれている文章を根拠にし、一生懸命に発表していました。2年生の子供たちがあれだけできるとは思いませんでした。

一緒に見ていた我が校の先生方も同じような感想を持ったようでした。
私の目から見ても子供たちは本当に一生懸命に学習し、すばらしい姿を見せてくれたと思います。

きつねのおきゃくさま(その11)

【10時間目の学習】

前の時間に子供たちの考えを混乱させてしまいましたので、この時間は次の問題に絞って考えてもらいました。
4場面できつねがおおかみと戦ったのは、「ひよこたちを守ろう」と思ったからか、それとも「ひよこたちをおおかみにとられたくなかった」からか。

最初に手を挙げさせてみたところ、「守ろうと思ったから」という子が8名、「おおかみにとられたくなかったから」という子が21名という結果でした。

では、自分の考えをしゃべってごらん。

という私の言葉で討論が始まりました。

敦くんが口火を切ります。
「58ページの最後に『じつに、じつにいさましかったぜ。』と書いてあります。これは、きつねがひよこたちを守ろうとしたからだと思います。」
山本淳くんが続きます。
「3場面までは、『〜もまるまる太ってきたぜ。』と書いてあるけれど、4場面にはもう書いていない。だから、もうひよこたちを食べようとは思っていないと思います。」
さらに、敢くんです。
「6場面に『きつねは、はずかしそうにわらってしんだ。』と書いてあります。死んでしまったら、ひよこたちを食べられないから、4場面ではもう『食べよう』という心はなくなっていると思います。」

今度は、「おおかみにとられたくない」という側の考えです。
和美さんです。
「敦くんは、『じつに、じつに、いさましかったぜ。』を『守ろう』と思ったからだと言ったけど、これは、『おおかみをやっつけてひよこたちを食べよう』と思ったからだと思います。」
そして、ひろみさん。
「『はずかしそうにわらってしんだ。』のは、ひよこたちを食べたくても食べられなかったからだと思います。」

ここまで討論が進んできたところで、手を挙げさせ、全体の考えを確認しました。
「守ろうと思ったからだ」と考えている子が22名、「とられたくないからだ」と考えている子が7名です。この時間の最初の数字と比べてください。子供たちの考えは随分と変化しています。
友達とお互いの考えを話し合いながらよりより考えを持っていく。これが学習なのだと思います。

「とられたくない」側でがんばっていた和美さんが考えを変えました。
「7場面で、『せかい一やさしい、親切な、かみさまみたいな、そのうえゆうかんなきつねのためになみだをながしたとさ。』と書いてあるから、やっぱり『守ろう』としたんだと思う。」
あやこさんも考えを変えた子の一人です。
「3場面までで、ひよこやあひるやうさぎが言った『やさしいおにいちゃん』『親切なおにいちゃん』『かみさまみたいなおにいちゃん』という言葉できつねの心が変わってきたから、自分の心を変えてくれたひよこたちを守ろうとしたんだと思います。」
この時間の最後には、「守ろうとしたから」という子供が27名、「とられたくないから」という子が2名になりました。

【11時間目の学習】

昨日の討論の続きです。
きつねがおおかみと戦ったのは、「守ろう」と思ったからか、「とられたくたい」と思ったからか。

昨日の段階では、「守ろう」派が27名、「とられたくない」派が2名でした。それが、今日になって聞いてみると、「守ろう」派が28名、「とられたくない」派が1名となりました。

「守ろう」派の子供たちが主張します。
「『そのばん。きつねは、はずかしそうにわらってしんだ。』と書いてあるから、戦ってから死ぬまでは時間があったはずです。もし、きつねが「とられたくない」と思っているのなら、その時間にひよこたちを食べていると思います。」
1名の子はもちろん反論します。
「死ぬくらい、傷ついているのだから、もう食べる元気はないと思います。」
別の意見が出ます。
「死んでしまったら、きつねはひよこたちを食べれないのだから、戦ったときはもう食べようとは思っていないと思います。」
反論です。
「きつねは、おおかみに殺されるとは思っていなかったと思います。」

これ以上、続けていても子供たちだけでは無理があると考え、次のように助言をしてみました。
昨日、かずみさんが『せかい一やさしい、親切な、かみさまみたいな、そのうえゆうかんなきつねのためになみだをながしたとさ。』と書いてあるといってくれましたが、『せかい一やさしい、親切な、かみさまみたいな、そのうえゆうかんなきつね』と言っているのは誰なのですか。

子供たちは「話者だ。」と答えます。ここで、晃一くんが発言しました。
「話者は、きつねの心の中がわかっているのだから、もう食べようとは思っていないと思います。」
しかし、この意見も「とられたくない」派の1名の子には受け入れられません。「今は、4場面の勉強をしているのだから、4場面だけで言ってください。」と言うのです。
そこで、ここで無理に結論を出さず、保留にして次の場面を学習していくことにしました。
私が問いました。
はずかしそうにわらってしんだとき、きつねはどこを見ていたでしょうか。

全員が、「ひよことあひるとうさぎの3匹」だと言います。しかし、理由はいろいろです。
「3匹を守ったから、3匹を見ていたと思います。」
「食べようと思っていたけど、食べられなかったから、残念そうに3匹を見たと思います。」
「傷ついてしまったから、はずかしそうにわらって3匹を見たのだと思います。」
ここで、きつねが「はずかしそうにわらっった」理由が問題となってきました。ほとんど全員の子供が「傷ついてしまったから恥ずかしそうに笑ったのだ。」と言います。
子供たちからは反論が出なかったので、私が反論しました。
きつねは、命をかけてひよこたちのために戦ったのです。そのために傷ついても全然はずかしくはないはずです。きつねが恥ずかしそうに笑ったのはそんな理由ではありません。

〜次号へ〜

【11時間目の続き】

きつねは、命をかけてひよこたちのために戦ったのです。そのために傷ついても全然恥ずかしくはないはずです。きつねが恥ずかしそうに笑ったのはそんな理由ではありません。
1場面から3場面まではきつねはひよこたちを食べようと考えていましたね。そんな自分を恥ずかしいと思ったのではないですか。

本当は子供たちから出してほしかったのですが、私の方から上のように話しました。これを聞いた子供たちはみんな「そうか。」と言って納得していました。

次はいよいよ最後の場面です。4場面の勉強をしているときに問題となったところです。
「そして、せかい一やさしい、親切な、かみさまみたいな、そのうえゆうかんなきつねのためになみだをながしたとさ。」
この一文です。ほとんどの子供たちは「この一文があるから、4場面できつねはもう食べようという心から、守ろうという心へ変わったのだ。」と主張していました。
つまり、4場面を読んだだけでは「ひよこたちを守るために戦った」のか、「おおかみにとられたくないから戦ったのか」という決め手がなかったのが、最後の場面を読むとわかるというのです。
「きつねの心を知っているはずの話者がこう言っているのだから、きつねはもうひよこたちを食べようと思っているわけがない。」
というわけです。

ここまで学習したところで、もう一度子供たちに尋ねました。
では、きつねが「食べようという心」から「守ろうという心」へ変わったのはどこなのですか。

子供たちから出されたのは次の3つです。
A. 「いや、まだいるぞ。きつねがいるぞ。」
 きつねはとび出した。
B. 「いや、まだいるぞ。きつねがいるぞ。」
C.きつねはとび出した。

みんな同じ所をいっています。AはBとCを一緒にした考えです。
理由を尋ねると、AもBもCもほぼ同じ理由が返ってきました。
○「おおかみが下りてきて、ひよこたちを食べようとしていたから、きつねは守ろうと思って、『いや、まだいるぞ。きつねがいるぞ。』と言ったのだと思います。そして、とび出したのだと思います。」
○1場面から3場面までできつねの心はだんだん変わってきたけど、まだ食べようという心はあって、それが4場面でおおかみがひよこたちを襲おうとしたところで「守ろう」という心に変わったのだと思います。

ここで私は不思議に思いました。「いや、まだいるぞ。きつねがいるぞ。」はきつねが言った言葉か、おおかみが言った言葉か、意見が分かれていたはずなのです。そのことを子供たちに確認してみると、今度は全員が「これは、やっぱりきつねが言った言葉だ。」と言います。最後の場面まできつねの心の動きを勉強してみて、考えが変わった子供が多かったのでしょう。
さて、これで「きつねの心の様子」を読み取っていく学習はほぼ終わりました。次の時間は「きつね」に手紙を書いてもらうことにしてあります。子供たちが書いた手紙は次号で紹介致します。(略)