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第5学年 国語科学習指導案

平成15年9月19日(金)5校時
指導者 教諭 渋谷 徹

1 単元名

自分の考えを分かりやすく伝えよう
題材 わたしたちの学校生活(光村5年上)

2 単元の目標

(1) 「係活動」について,以下の条件を満たした400字程度の意見文を二つ書くことができる。
・ 「何について書くのか」というテーマが記述されている。
・ 「係活動」に対する自分の考え(結論)が一文で明記されている。
・ 結論と整合した根拠が二つ記述されている。
・ 「はじめ(テーマと結論)」「なか1(根拠)」「なか2(根拠)」「まとめ(結論)」「むすび(願い)」の文章構成になっている。
・ 常体に統一されている。
・ 一文が40字以内で,主述のねじれ等がない。
・ 既習の漢字を使用している。
(2) 書き上げた意見文をもとに,1分程度のスピーチをすることができる。

3 児童と単元

(1) 児童の実態(男子16名 女子14名 計30名)

1 学力実態
 昨年度2月に実施した「教研式標準学力検査(NRT)」の領域別学力実態は次の通りである。

「話すこと・聞くこと」 通過率58.5 全国比96
「書くこと」 通過率54.2 全国比85
「読むこと」 通過率51.3 全国比101
「言語事項」 通過率54.4 全国比96

 「読むこと」以外は全国比100に達していない。また,学級全体として低いだけではなく,標準偏差が非常に大きい。下位に位置している子供が多いのである。下位の子供たちが「分かる」「できる」授業を具現していかなければ,全体としての学力向上を図ることはできない。

2 書くこと
 4月当初,「書くこと」に対して抵抗を感じる子供たちが多かった。書く経験が圧倒的に不足していることが原因である。「何を」「どのように」書いたらいいのかが分からないのである。
 しかし,5,6年生に保障されている「書くこと」の指導時数は55時間である。国語科の単元だけで「書く力」を育成することには限界がある。年間を通し,計画的に日常指導を行っていくことが必要となる。
 そこで,PDCAに対応した指導を具現できるよう『「書く力」を育てるための学年指導プラン(別紙)』を作成し,指導を継続してきている。指導事項に対する1学期の評価は別紙の通りであり,十分に身に付いたとは言えないが,書くことに対する抵抗は減ってきている。
 子供たちは,本単元で扱うような生活意見文を書いた経験はない。本単元の指導によって,意見文の基本的な文章構成を学ばせていきたい。

3 言語事項
 言語事項の指導の中でも,特に漢字の読み書きは,家庭学習に委ねることなく,学校で保障しなければならない最優先指導事項である。採用している教材「あかねこ漢字スキル」を核とした漢字学習システム(後述)によって,指導を継続してきた。最低9割以上の習得率を目指してきたが,未だ到達目標には達しているとは言えない。

(2) 単元について

1 学習指導要領及び『「書くこと」の指導計画(郡市プラン)』

 第5学年及び第6学年の「書くこと」に関する目標は次の通りである。

目的や意図に応じ,考えたことなどを筋道を立てて文章に書くことができるようにするとともに,効果的に表現しようとする態度を育てる。

本単元がねらうのは,上の目標の前段「目的や意図に応じ,考えたことなどを筋道を立てて文章に書くこと」である。表現の効果まではねらわない。
したがって,本単元に関わる内容は次の事項である。

イ 全体を見通して,書く必要のある事柄を整理すること。
ウ 自分の考えを明確に表現するため,文章全体の組立ての効果を考えること。

また,『「書くこと」の指導計画(郡市プラン)』に示されたA,B学力についても,以下の事項に限定して定着・育成を図る。

【A学力(基礎学力)】
・1つの事柄を1つの段落で書くことができる。
・「はじめ・中・終わり」のように文章全体の組立があることがわかる。
・句読点を適切に打つことができる。
・段落の始め,会話の部分などの必要な箇所は行を改めて書くことができる。
・接続語を適切に使って文章を書くことができる。
・新出漢字の全てを読むことができ,これまでに習った漢字が書け,文章の中で適切に使うことができる。
【B学力(基礎・基本)】
・「だれに」「なにを」「なんのために」という相手意識,目的意識を明確にもてる。
・書き出し・中(動機・体験,事例・結果)(課題・体験,事例)結び(感想,考え)の展開で,4〜5段落構成で600字程度の文章を書くことができる。
・文や文章,段落のつながりを考えて,接続語を適切に使うことができる。
・伝えたいことがよく分かるように書いているかと,表記について見直すことができる。
・必要な語句について,辞書を利用して調べることができる。
・書いた文章の内容を,相手や目的,時間に応じて見直し,常体から敬体の話し言葉に直すことができる。
【C学力(生きる力)】
・これまでの学級生活を振り返り,学級生活をよりよくするための提言をすることができる。

2 題材
 使用している教科書(光村5年上)では,「わたしたちの学校生活」という題材で,自分が体験してきたことを「家の人や下の学年の人に伝えてみよう」という単元を組んでいる。しかし,教科書の単元構成では,自学級の子供たちにとって,次の点で学習が成立しにくい。

・一言で「体験したこと」といっても,子供たちが自分の体験の中から人に伝えるべきテーマ設定をすることは困難である。
・「家の人や下の学年の人に伝えてみよう」というだけでは,相手意識・目的意識をもたせにくい。
・子供たちの体験は多岐に渡っている。体験を題材として設定すると,子供たちの書く内容があまりにも多様になってしまう。結果,「何を書くべきなのか」「どのように書くべきなのか」を指導しにくい。
・教科書では,「伝えたいことをカードに書き出す」→「組み立てを考えてカードを並べ替える」→「カードの順序に従って文章を書く」という学習過程が示されている。しかし,どのような観点にしたがって組み立てを考えればよいのかは示されていない。子供たちがどのような「体験」を設定し,どのような文種を書くのかによって,組み立てもまた多様になるからである。これでは,文章構成について学ばせることができない。

 そこで,本単元では「係活動」に限定して題材を設定し,意見文を書かせることにする。題材を限定することにより,「何を書くべきなのか」が明確になり,文種を限定することにより,「どのような構成で書くのか」も学びやすくなるからである。

4 指導の構想

(1) 「書くこと」の指導

1 題材設定
 高学年では,当番活動(学級において日常的に必要な仕事)と係活動(学級を楽しくするための創造的な仕事)は分離して考えるべきである。しかし,1学期は一人一役の当番活動だけしか機能しておらず,係活動は組織してこなかった。そこで,当番活動とは性質の異なる係活動を教師から紹介し,その必要性や具体的な係の内容について意見文を書かせる。
「学習指導要領解説(国語)」に次の文がある。

指導に当たっては,学校生活や日常生活の中で書く目的や意図を明確に設定できるような題材を工夫して学習を展開できるようにするとともに,自分の考えが効果的に伝わっているかどうかを実感できるような,言葉で伝えあう場面を設定することが望ましい。

「係活動」という題材は,上述の内容に合致していることも含め,次の点で有効である。

・子供たちの学校生活に直結した問題であり,書く目的や意図が明確になる。
・学級の友達に自分の意見を主張することが目的となるので,相手意識・目的意識がはっきりする。
・自分の主張を友達に伝えるための論理性が求められる。

2 1単元2題材配当
 教科書に示された学習活動例では,11時間の配当のうち,7時間を「書くこと」の学習に充て,600字程度の文章を書く計画になっている。しかし,この時間配当では,自学級の子供たちの書く意欲を持続させることは難しい。
 そこで,「係活動の必要性」「具体的な係の提案」という二つの題材を設定し,400字程度の文章を二つ書かせることにしたい。それぞれに充てる時間は3時間ずつである。この方が,子供たちの書く意欲を持続させることができ,また,「書く技能」の習熟を図ることもできるからである。

3 書く過程のスモールステップ化
 400字の意見文を一度に書かせることはしない。「はじめ」「なか」「まとめ」「むすび」の部分ごとに書かせ,その都度確認と指導を行っていく。子供たちに文章構成を考えさせるのではなく,文章構成は教師から与え,部分ごとに書かせていくのである。そうすることにより,「何を書いたらよいのか分からない子供」や「どのように書いたらよいのか分からない子供」に対応することでき,多くの子供を目標に到達させることができるからである。

4 「話すこと・聞くこと」との連携
 第1時に「係活動は必要か」という論題で,討論を行う。討論を行うことにより,次の内容が明確になる。

・自分の考えはどちらか。
・その根拠は何か。
・自分と同じ考えをもっている友達が根拠としていることは何か。
・自分と違う考えをもっている友達が根拠としていることは何か。

 討論で出されたこれらの内容を教師は整理して板書し,子供たちはノートに記録する。このことにより,自分では考えられなかった根拠や,自分とは違う立場からの意見が情報として蓄積される。つまり,討論自体を取材活動の場にするのである。
また,最終時にスピーチ大会を設定することにより,相手意識・目的意識だけでなく,場面・状況・条件意識ももたせていきたい。

(2) 漢字指導
新出漢字を一つ一つ丁寧に指導することはしない。子供たちが漢字を習得するための「学習システム」をつくり,それを徹底させる。次のように行う。
1 漢字スキル右ページの練習(授業時間内の5分間程度)

ア 指書き(画数を唱えながら机の上に書いて形を覚える)
イ なぞり書き(画数を唱えながらお手本をなぞる)
ウ うつし書き(画数を唱えながら自分で書いてみる)
エ 空書き(画数を唱えながら全員で空中に書く)

2 漢字スキル左ページの練習(授業時間内の5分間程度)

ア 横に練習していく(全員が最低一回は練習できる時間を保障するため)
イ 再下段は答えを隠して書いてみる。
ウ 右ページと左ページを丁寧にやってあるかを教師が確認する。

3 練習テスト(授業時間内の5分間程度)

ア 問題ページを見ながらノートに自分でテストをしてみる。
イ 自分で採点し,間違えた問題は再度練習する。

4 本番テスト(授業時間内の10分間程度)

ア テストページを切り離し,一斉に行う(3分程度)。
イ 隣同士で交換し,採点をする。明らかに正解の問題のみに○をつけ,怪しい文字や間違えている文字があったら,教師のところへ持ってくる。
ウ 友達から返されたテストを列毎に一人一人教師に見せに来る。
エ その間,正解した問題にはシールを貼り,間違えた問題は再度練習する。
オ 名簿順に名前を読み上げ,点数を報告させる(全員の前で言いたくない子供は教師のところへ報告に来る)。
カ テストをノートに貼る。
キ 100点を取れなかった子供は,間違えた問題のみ再テストを行う(休み時間か放課後)。

5 50問テスト(全校月例テスト),100問テスト

ア 漢字スキルが5番終わったら50問テストを行う。
イ 10番終わったら100問テストを行う。

5 単元の指導計画(本時3/9)※ 教科書指導書の配当は11時間

学習活動
評価基準
○「係活動は必要か」というテーマで討論を行い,そこで出された意見をノートに整理する。(1) ・テーマに正対した自分の考え(結論)をもつ。
・結論と整合した根拠を1つ以上挙げる。
・討論で出された意見をノートに整理する。
○「係活動の必要性」を題材に意見文を書く。(3)
・構成メモと「はじめ(テーマと結論)」を書く。
・「なか1(根拠)」を書く。(本時)
・「なか2(根拠)」「まとめ(結論)」「むすび(願い)」を書く。
・各段落一文程度で5段落の構成メモが書ける。
・テーマが記述されている。
・結論が一文で記述されている。
・結論と整合した根拠が二つ記述されている。
・5段落構成になっている。
・40字以内の短文で構成されている。
○「私の提案する係」を題材に意見文を書く。(3)
・自分の提案したい係を決め,構成メモと「はじめ」を書く。
・「なか1」「なか2」を書く。
・「まとめ」「むすび」を書き,スピーチの練習をする。
・各段落一文程度で5段落の構成メモが書ける。
・テーマが記述されている。
・結論が一文で記述されている。
・結論と整合した根拠が二つ記述されている。
・5段落構成になっている。
・40字以内の短文で構成されている。
○意見文「私の提案する係」をもとに,スピーチ大会を行う。(2)
・個人やグループでスピーチの練習をする。
・スピーチ大会を行う。
・提案したい係を一文で述べている。
・根拠を二つ以上述べている。
・敬体で述べている。
・適切な声量で述べている。

6 本時の指導計画

(1) 本時のねらい
・ 二つのモデル文を比較・検討し,モデル文Bの根拠を書き加えることにより,根拠の書き方が分かる。
・ 題材「係活動は必要か」について,根拠1(「なか1」)を5行以上書くことができる。

(2) 展開の構想

1 モデル文の提示(クリックするとモデル文が別ウインドウで開きます)
 前時までに,すべての子供が五つの段落の構成メモを書いている。したがって,結論を支える根拠については,書くことができるはずである。しかし,「なか1」「なか2」はそれぞれ7行が割り当てられている。一文程度は書けたとしても,一つの根拠につき7行を書くことは困難な子供が多いことが予想される。
 そこで,本時では次の二つのモデル文を提示し,「根拠」の書き方について指導する。

モデル文A・・・「子供に小遣いは必要ない」という考えで,7行の根拠が記述されたもの
モデル文B・・・「子供に小遣いは必要だ」という考えで,根拠が一文しか記述されていないもの

 書かれた文章だけを比べれば,「子供に小遣いは必要ない」という考えのモデル文Aの方が説得力をもつ。根拠が具体的に記述されているからである。しかし,大方の子供は「子供にも小遣いは必要」と考えているだろう。したがって,モデル文Bの根拠をより具体的にしたいという意欲を喚起できる。
 モデル文Aの「なか1」は「もし」「しかし」「例えば」「つまり」という順で,論理が展開されている。これは一つの思考の型である。モデル文Aの型を参考にしながら,モデル文Bの根拠を書き加えさせることにより,思考の型を学ばせることができる。これは自分が実際に意見文を書くときにも適用できる思考の型となるはずである。

2 書く過程のスモールステップ化
 本時で子供たちが書くのは「なか1」の1段落である。子供たちが「なか1」を書き終えた段階で,評価と指導を行う。「なか1」「なか2」を続けて書かせるのではなく,書く過程をスモールステップ化することにより,小刻みな評価・指導が可能となるからである。
 また,小刻みな評価・指導により,下位の子供たちの学力を保障することができる。全文を書いてからの指導では,下位の子供たちはどこをどう直せばよいか分からなくなるであろうし,書き直そうという意欲も低下するに違いない。

(3) 本時の展開

学習活動 教師の働きかけと児童の反応 留意点
二つのモデル文の比較・検討を行う。(9分)
■この時間は「なか1」を書くことを告げる。
■「お小遣い」について書いた二つのモデル文を提示する(モデル文Aを先に提示する)
さゆりさん(モデル文A)とたかしさん(モデル文B),どちらの文章に説得力がありますか。

さゆりさんの方が説得力がある。

それはなぜですか。

・ たかしさんの方は,理由(なか1)が一文で終わっているけれど,さゆりさんの方は理由が詳しく書いてある。
・さゆりさんの方は,具体的な例が書いてある。
■モデル文Aの「もし」「しかし」「例えば」「つまり」という構成に着目させる。

「小遣いは必要ない」という考えで書いたモデル文の方に説得力をもたせて提示する。モデル文Bにも説得力をもたせようという意欲を高めるためである。

・「もし」「しかし」「例えば」「つまり」について,子供たちが言及することがなければ,教師が教える。
モデル文Bの根拠を書き加える。(20分)

たかしさんの「なか1」を詳しく書き直してみましょう。「もし」に続けて一文書き加えてごらんなさい。

■以下,同様に「しかし」「例えば」「つまり」についても一文ずつ書き加えさせる。
■書けなかった子供には,黒板を写すよう指示する。
■「もし」「しかし」「例えば」「つまり」という順で思考し,記述すると説得力をもった理由が書けることを確認する。

・一度にすべて書かせるのではなく,一文ずつ書き加えさせ,確認する。

・早くできた子供には,黒板に書かせる。
「なか1」を記述する。(15分)

では,自分の作文を書いてもらいます。まずは,「なか1」だけを書きます。三文書き終えたら見せにいらっしゃい。

■「もし」「しかし」「例えば」「つまり」四つの言葉全てが使えなくとも,よしとするが,「もし」「例えば」の二つは必ず使うように指示する。
・「もし」「しかし」「例えば」「つまり」の思考方法を使って,「なか1」を記述する。
・「なか1」を書き終えた子供は,「なか2」の記述に入る。

・「なか1」だけに限定して記述させ,評価と指導を行う。

・(4)に示した基準のみについて評価・指導する。誤字・脱字等についての指導は加えない。

・10分が経過した時点で見せに来ない子供には,途中段階でも持ってこさせ,指導を加える。
次時予告をする。(1分)

次の時間は,「なか2」「まとめ」「むすび」を書いて作文を完成させます。さあ,どちらの考えが説得力をもっているでしょうね。
 

a 評価基準
1 「はじめ」に書かれた結論と「なか」に書かれた「根拠」が整合している。
2 「なか1」が5行以上記述されている。
3 「もし」「例えば」「しかし」「つまり」のうち,「もし」「例えば」の二つを使用している。