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第5学年 国語科学習指導案

平成15年11月18日(火)5校時
指導者 教諭 渋谷 徹

1 単元名 地球環境について考えよう

教材名 「一秒が一年をこわす」(光村5年下)
「地球健康診断資料」(自作)

2 単元の目標

(1) 「一秒が一年をこわす」の要旨をとらえ,地球の健康状態に対する問題意識をもつことができる。(読むこと)
(2) 必要な情報を選択しながら,「はじめ」「なか1」「なか2」「まとめ」「むすび」の構成で意見文「地球健康診断書」「地球の処方箋」を書くことができる(書くこと)。
(3) 自分が選択した環境問題に対する処方箋を発表することができる。(話すこと・聞くこと)

3 児童と単元

(1) 児童の実態(男子16名 女子14名 計30名)

1 学力実態
 昨年度2月に実施した「教研式標準学力検査(NRT)」の領域別学力実態は次の通りである。

「話すこと・聞くこと」 通過率58.5 全国比96
「書くこと」 通過率54.2 全国比85
「読むこと」 通過率51.3 全国比101
「言語事項」 通過率54.4 全国比96

 「読むこと」以外は全国比100に達していない。また,学級全体として低いだけではなく,標準偏差が非常に大きい。下位に位置している子供が多いのである。下位の子供たちが「分かる」「できる」授業を具現していかなければ,全体としての学力向上を図ることはできない。

2 書くこと
 4月当初,「書くこと」に対して抵抗を感じる子供たちが多かった。書く経験が圧倒的に不足していることが原因である。「何を」「どのように」書いたらいいのかが分からないのである。
 しかし,5,6年生に保障されている「書くこと」の指導時数は55時間である。国語科の単元だけで「書く力」を育成することには限界がある。年間を通し,計画的に日常指導を行っていくことが必要となる。
 そこで,PDCAに対応した指導を具現できるよう『「書く力」を育てるための学年指導プラン(別紙)』を作成し,指導を継続してきている。
 9月単元「自分の考えを分かりやすく伝えよう」で,子供たちは,生活意見文を書いた。係活動を題材とした二つの生活意見文である。この単元では,意見文の基本的な文章構成「はじめ(テーマと結論)」「なか1(根拠)」「なか2(根拠)」「まとめ(結論)」「むすび(願い)」を学び,400字程度の意見文を書いた。さらに,「もし」「しかし」「例えば」「つまり」と行った接続詞を使いながら論理的に根拠を述べることを学んだ。しかし,子供たちの書いた意見文を読むと,具体的な事例を挙げることがうまくできていなかった。「例えば」以下の文章が自分の結論を支える具体的な事例になっていないのである。
 本単元で題材となる「地球環境」について,子供たちの中に蓄積された情報はほとんどない。「地球が危機に瀕している」という切迫感をもっている子供は皆無であるし,オゾン層破壊,地球温暖化現象,森林破壊,海洋汚染などといった個々の環境問題についての知識もほとんどもっていない。したがって,本単元では,9月単元で扱った「係活動」のように内部情報を根拠として文章を書くことはできない。図書資料やネット資料等の外部情報を利用することとなる。地球環境についての具体的な事実が書かれた外部情報を根拠として選択しながら,文章を構成できるようにしていきたい。

(2) 単元について

1 学習指導要領

 第5学年及び第6学年の「書くこと」に関する目標は次の通りである。

目的や意図に応じ,考えたことなどを筋道を立てて文章に書くことができるようにするとともに,効果的に表現しようとする態度を育てる。

さらに,学習指導要領解説に次の文章がある。

自分の考えた事などが効果的に表現できるよう,その根拠となる事柄や具体例などを適切に選択し配置する能力の育成が必要となる。

本単元では,上で述べられている能力の育成を指導の中核としていきたい。
したがって,中心となる指導事項は次である。

イ 全体を見通して,書く必要のある事柄を整理すること。
エ 事象と感想,意見などとを区別するとともに,目的や意図に応じて簡単に書いたり詳しく書いたりすること。

 上の指導事項について,指導要領解説では,次のように記述されている。

 指導に当たっては,「C読むこと」の(1)の「オ 必要な情報を得るために,効果的な読み方を工夫すること。」との関連を図り,学校図書館を中心として地域の図書館などとの連携を工夫し,必要な情報を収集・選択できるよう支援することも大切である。その際,ウ及びエの事項とも関連して文章全体の展開を想定し,目的や意図,必要性や効果などを考えながら材料の収集,選択,整理に当たることができるよう指導することが求められる。

 本単元では,二つの教科書教材の他,地球健康診断資料(自作)の活用を図りながら,自分の結論の根拠となる事例を選択・整理できるようにしていきたい。

4 指導の構想

(1) 「読むこと」教材からの題材設定
 主教材「一秒が一年をこわす」は,人間がいかに短期間に地球の環境を破壊してきたかを訴えた文章である。これは,地球環境を破壊している人間社会への警告である。
 しかし,子供たちは,この警告の重大さについてまでは理解できないはずである。警告の重大さを理解するには,この文章に含まれる情報量が少なすぎるからである。この文章だけでは具体的な事例に関する理解がほとんど得られない。
 本文中では人間の行ってきた環境破壊について「森林破壊」「野生動物の滅亡」「海洋・大気汚染」「地球温暖化」の4つの事例が挙げられている。しかし,それぞれの事例に関する説明は極わずかである。それぞれの環境問題がどの程度進行しているのかについての記述はほとんどない。
 また,「人類が,これ以上おごりたかぶると,地球からは大きなしっぺ返しを食うにちがいない」と結論づけられているが,それが具体的にどんなしっぺ返しなのかまでは述べられていない。
子供たちは,読後に次のような疑問をもつはずである。

・今,地球はどの程度の状態なのだろう。
・どこの森林がどのくらい破壊されているのだろう。
・どんな野生動物がどのくらい滅びていっているのだろう。
・海や空気はどのくらい汚れているのだろう。
・地球の気温が上がるとどんな困ることが起こるのだろう。
・他にはどんな環境問題があるのだろう。
・このままでいくと,地球はいったいどうなってしまうのだろう。
・環境問題を解決するためには,何をすればいいのだろう。

 主教材を読むことから生じたこれらの疑問を出発点とし,次の二つの題材を設定する。

 1 地球の健康診断書を書こう。
 2 地球の処方箋を書こう。

 ただし,子供たちが,すべての環境問題について調べることは難しい。そこで,主教材に例示されている四つの事例から一つを選び,自分が選択した問題に限定して「自分はこう診断する」という意見文を書かせたい。

(2) 情報の提示(「地球健康診断資料」の提示)
 論理的な文章を書くためには,主張と整合した具体的な事例を述べることが不可欠である。具体的な事例を述べることにより,実証性が保障されるからである。
 しかし,子供たちは環境問題に関する具体的な事例を内部情報としてはほとんどもってはいない。したがって,子供たちがもっている内部情報だけで,地球の健康状態を診断ことは不可能である。診断の根拠を書くためには,図書資料等による外部情報が必須となる。
 「図書館を利用する」「インターネット情報を検索する」等,子供たちに外部情報を獲得させるための方法は多々ある。しかし,今回は子供たちに情報を収集させるのではなく,こちらから提示することとする。宇佐美寛氏の次の言に賛同するからである。

 例えば,「『道徳』の資料と徳目の関係」という題だけを与えて作文させるとする。これでは,学生は文章を書く前に様々な作業をしなければならない。つまり,次のような問いに対する答えを得ておかねばならない。どのような概念が関わるか,どのような問題群が含まれるのか,例としてどのような事実があるのか。答えを得るためには,学生はいろいろな書物を調べなければならない。調べているうちに,時間もエネルギーも,大半は費されて(ママ)しまう。文章を書くという作業そのものは,圧縮され,いいかげんになる。
 もちろん,私は「調べて書く」ということの意義を一般論として否定しているわけではない。しかし,この場合,大学三年生という未熟さ,半年間という時間の乏しさがある。作文指導を重視するなら,素材となる事実は,与えるべきである。
「宇佐美寛・問題意識集6 論理的思考をどう育てるか(明治図書)」

 作文指導の対象が小学生であるのならば,なおさらのこと「素材となる事実は,与えるべきである」。情報検索,情報収集については別な場で指導すればよい。
 そこで,本単元では,素材となる事実が含まれている教材(自作教材)を提示し,その中から自分の診断の根拠を選択させるようにしたい。
 
(3) 文章構成に沿った書く過程のスモールステップ化

【「地球健康診断書」の文章構成】
「はじめ」 問題提起・結論
「なか1」 診断の根拠1(具体的事例1)
「なか2」 診断の根拠2(具体的事例2)
「まとめ」 根拠のまとめ(事例の共通性)
「むすび」 結論

【「地球の処方箋」の文章構成】
「はじめ」 問題提起
「なか1」 解決策1(具体的事例1)
「なか2」 解決策2(具体的事例2)
「まとめ」 根拠のまとめ(事例の共通性)
「むすび」 呼びかけ

 上の文章構成を示し,段落ごとに文章を書かせる。段落ごとに確認と指導を加えることにより,指導と評価の一体化を図るためである。

5 単元の指導計画(本時5/12)

学習活動
評価基準
●主教材『一秒が一年をこわす』を読み,地球環境に対する問題意識をもつ。(4)
・通読し,要旨を把握する。
・文章構成をまとめる。
・意味段落1の一字読解を行い,細部を読む。
・地球環境に対する問題意識をもつ。
・題の意味と提示された数直線とを対応させることができる。
・三つの意味段落にキーワードを含んだ小見出しをつけることができる。
・一字読解で8割以上正答することができる。
・主教材に対する疑問を三つ書くことができる。
●教材から情報を選択し,地球健康診断を書く。(3)
・環境問題の具体的事例(原因・現状・結果)についての情報をもとに,診断を決定し,「はじめ」「なか1」を書く。
・「なか2」「まとめ」を書く。
・「むすび」を書き,読み合う。
・「地球健康診断資料」の中から、自分の診断の根拠となる事例を二つ選択することができる。
・選択した事例を整理しながら、「なか1」「なか2」を書くことができる。
・二つの事例の共通性を考えながら、「まとめ」を書くことができる。
●教材から情報を選択し,処方箋を書く。(3)
・環境問題解決のために自分たちができる具体的な方法について情報を選択する。
・「はじめ」「なか1」「なか2」を書く。
・「まとめ」「むすび」を書く。
・自分が選択した環境問題の解決策に関する情報を選択することができる。
・選択した事例を整理しながら「なか1」「なか2」を書くことができる。
・二つの事例の共通性を考えながら「まとめ」を書くことができる。
●「地球環境会議」を開く。
・3次で書いた処方箋をもとに、環境問題の解決策を発表する。
・自分が選択した環境問題に対応した解決策を発表することができる。

6 本時の指導計画

(1) 本時のねらい
・モデル文を比較・検討することにより,事例選択の観点が分かる。
・自分の診断を支える具体的な事例を選択し,「なか1」を書くことができる。
(2) 展開の構想
1 『地球健康診断資料』の提示
 前時で,子供たちは「一秒が一年をこわす」の記述を根拠に,次の三つの中から自分の診断を仮決定した。

A 医者に行って薬をもらう必要がある。
B 今すぐ大手術が必要である。
C すでに手遅れの状態である。

 しかし,この診断は『一秒が一年をこわす』の筆者の意見が根拠となっている。『一秒が一年をこわす』には,地球の健康状態を診断するための具体的な情報が含まれていないためである。子供たちが自分の考えで診断を下すためには,環境問題に関する具体的な情報が必要である。
 そこで,本時では,「森林破壊」「野生生物の絶滅」「海洋・大気汚染」「地球温暖化」の四つの事例について,「原因」「現状」「結果」の三つの観点から具体的な情報を提示する。
2 三つのモデル文の比較・検討
 本時では,自分の下した診断の根拠となる事例を資料の中から選択し,「なか1(根拠)」を書く。しかし,多くの子供たちはどのような観点で根拠を選択すればよいかが分からないはずである。そこで,次の三つのモデル文を提示する。

ア 診断と整合しない事例が述べられている。
イ 診断と整合し,具体的な数値データが含まれている。
ウ 診断と整合してはいるが,具体的な数値等は含まれていない。

 この三つのモデル文を比較・検討させることにより,事例を選択するための次の二つの観点を獲得させたい。

1 診断と整合した事例を選択すること。
2 できるだけ具体的な数値データの含まれた事例を選択すること。

3 書く過程のスモールステップ化
 「はじめ」「なか1」を書く過程を次の四つにスモールステップ化する。

1 「地球健康診断資料」をもとに,自分の診断を決める。
2 「はじめ」に自分の診断を書く。
3 資料の中から適切な事例を一つ選択する。
4 「なか1」を書く。

 ステップごとに評価と指導を加えることにより,本時のねらいへの達成率を高めたい。

(3) 本時の展開

学習活動 教師の働きかけと児童の反応 留意点
具体的な環境問題の原因と現状を知り,「はじめ」を書く。
(14分)
■「地球健康診断資料」をプロジェクターで提示した後に,資料を配付する。
自分の診断を決めて「はじめ」を書いてごらんなさい。

●2行で「はじめ」を書くことができる。
三つのモデル文の比較・検討を行う。
(10分)

■モデル文ア,イ,ウを提示し,範読する。

ア,イ,ウの中で,いちばん説得力がないのはどれですか。一つだけ選んで記号を書きなさい。

・ アに説得力がない。 

それはなぜですか。

・ 手洗い,うがいをしなかったからといって,医者に行く必要はない。
・ ひろしさんが風邪をひいているとは限らない。

イとウでは,どちらに説得力がありますか。

・イの方が説得力がある。
 それはなぜですか。
・ ウは,理由にはなっているけれど,具体的な数字が入っていない。
・ イは,具体的な数字が入っているので,なぜそう診断したのかが分かりやすい。
■「整合性」「具体性」という二つの観点を整理する。

●結論と根拠が不整合な文章の記号を選択することができる。

○三つのモデル文を同時に検討させると混乱するため,最初に説得力がないものを選ばせる。

○「診断と整合している」「具体的な数値が入っている」という二つの条件を確認する。

自分の診断の根拠となる事例を選択する。(5分)
自分の診断の根拠となりそうな項目を一つ選んで,赤鉛筆で線を引きなさい。

・資料の中から二つの条件に合致したものを選択し,赤鉛筆で線を引く。
■赤鉛筆で線を引き終えた子供からもってこさせ,評価と指導を加える。
■どうしても正しい選択ができない子供には,教師が教える。

●二つの条件に合った資料項目を選択することができる。
「なか1」を記述する。(15分)
赤鉛筆で線を引いた例を入れて,「なか1」を7行で書きます。イの「なか」を参考にしながら書いてごらんなさい。

・選択した項目を入れながら,原稿用紙に「なか1」を書く。
■書き終えた子供から持ってこさせ,4名程度の子供たちに黒板に書かせる。
・自力で文章化できない子供は,モデル文イや友達が黒板に書いた文章を真似しながら書く。
・時間に余裕のある子供は,二つ目の資料を選択する。

○「なか1」だけに限定して記述させ,評価と指導を行う。
●「なか1」に,具体的な数値データが入っている。
●「なか1」が5行以上書かれている。
次時予告をする。(1分)
次の時間は,もう一つ資料を選び,「なか2」を書いてもらいます。
 

(4) 評価基準(B基準)
・「はじめ」に書かれた診断と選択した「事例」が整合している。
・「なか1」に具体的な数値データ等が根拠として記述されている。
・「なか1」が5行以上記述されている。

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