実践のまとめ

1 「読みの観点」をもたせ,多読を促すための「読むこと」の指導
2 全員が淀みなく読めるようにするための音読指導
3 全員90点以上を保障する漢字指導

上が,本実践の提案であった。以下,成果と課題を述べる。

1 「読みの観点」をもたせ,多読を促すための「読むこと」の指導
 下は,単元終了後にA男が書いた「学習のまとめ」の一部である。

3 象徴性(クラムボン,イサド,かわせみ,やまなし)
クラムボン,イサド,かわせみ,やまなしの象徴性は何か。
クラムボンは,賢治の妹のトシの象徴だと考える。
まず最初に,『やまなし』と賢治の心象スケッチ『春と修羅』を重ね合わせてみよう。
なんと,妹トシとクラムボンが死んだということについて一致している。しかも,この二つの作品は,妹トシが死んだ次の年とその次の年に発表している。ということは,クラムボンは妹トシを象徴しているということは十分にある。だから,ぼくはクラムボンの象徴性は妹トシだと考える。
イサドの象徴は,林だと考える。
また,『やまなし』と『春と修羅』を重ね合わせてみよう。『春と修羅』の「松の針」で賢治は「おまへは林へ行きたかつたのだ」と書いている。これは,
かにのお父さん=賢治
かにの兄弟=妹トシ
に照らし合わせて,『やまなし』に「もうねろねろ。あしたイサドヘ連れていかんぞ」と書いたのだと思う。だから,イサドの象徴は林だと思う。
ぼくは,かわせみと五月の象徴は,さみしさだと考える。
同じように,『やまなし』と『春と修羅』を重ね合わせてみよう。『春と修羅』の「白い鳥」では,妹トシの思い出と白い鳥とをさみしそうに照らし合わせている。何度も言うが,これは妹トシが死に,さみしくなってこんなことを書いているのではないか。
しかも,かわせみに魚を食われたとき,かにの兄弟をお父さんはなぐさめている。だが,お父さんはうろちょろしている魚がいなくなり,本当はさみしいのではないか。
だから,ぼくはかわせみと五月の象徴はさみしさだと思う。
最後に,やまなしと十二月は「妹トシが生まれ変わる」ことの象徴だと思う。
今度は,『やまなし』をみてみよう。川の中では左図のようになっているのではないか。
五月の中では魚は妹トシで,かわせみに連れて行かれる。つまり,かわせみは「死」ということになる。
十二月だと,やまなしが落ちてくる。川の流れで進んでいく。それから木にひっかかる。そして,かにのお父さんが言う。
「待て待て。もう二日ばかり待つとね,こいつは下へしずんでくる。それから,ひとりでにおいしいお酒ができるから。さあ,もう帰ってねよう。おいで。」
ここで,やまなしを妹トシ,かにのお父さんを賢治にする。父さん,つまり賢治が「もう二日ばかり待つとね,こいつは下へしずんでくる」と言っているのだ。つまり,「妹トシは天国から自分たちの世界へもどってくる」とかにのお父さんが言っているのと同じである。こうすると,話とぴったり合うではないか。
だから,ぼくはやまなしと十二月の象徴は「トシが生まれ変わる」ことだと思う。

4 宮沢賢治は『やまなし』で何を描こうとしたのか
宮沢賢治は「生き物はみんな生まれ変わる」ということを書きたかったのだとぼくは思う。
なぜなら,『やまなし』は妹トシが死んだ後に発表している。しかも「五月」には魚が死ぬ。そして「十二月」にやまなしがしずんでくる。ぼくが象徴性で書いたことと同じだ。
しかも,『春と修羅』の「永訣の朝」で妹トシが(またひとにうまれてくるときは・・・)と言っている。これに心を打たれ,賢治は「生き物はみんな生まれ変わる」ということをみんなに知らせたくて『やまなし』を書いたと思う。
だから,賢治は「生き物はみんな生まれ変わる」ということを『やまなし』で書いたのだろう。

おわりに
「賢治は,こういうことを書きたかったのだな。」
これが,今評論文を書いて知ったことである。ぼくは,今賢治の心にすごく近づいたと思う。ぼくはこの評論文で「賢治はすごい人だ」とさらに実感した。
これがぼくの「心象」である。
おしまい。

 A男は,「対比」という読みの観点をもって,賢治の複数作品を多読し,「象徴性」という観点をもって自分の考えを論理的に述べている。本単元で育てたい力が育った一例である。すべての子供たちに,このような文章を書ける力を育てられるよう実践を重ねていきたい。
 なお,本単元の市販テスト「読むこと」の平均点は85.5点であった。今後は平均点90点以上を保障できるように指導を改善していく必要がある。

2 全員が淀みなく読めるようにするための音読指導と全員90点以上を保障する漢字指導
 本単の市販テスト「言語事項」の平均点は97.1点であった。ほぼ,満足できる成果が上がったと考えている。
 音読・漢字は国語科の学習において,基礎中の基礎である。学校で最低限保障しなければならない学力である。指導案に述べたような学習システムを構築することにより,家庭学習に委ねることなく学力を保障することができることが明らかとなった。一連のシステムとして機能していたからこそ,可能であったのだと考えている。

3 今後の課題
 今後は,以下の3点を課題として実践を進めていきたい。

・ 学習した漢字の活用能力を高めるための漢字指導システムの構築
・ 年間を通した名文の暗唱指導システムの構築
・ 年間50冊以上を保障する読書指導システムの構築