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第6学年 国語科学習指導案

平成14年7月8日(月)2校時
指導者 教諭 渋谷 徹

1 単元名

作品と出会う,作者と出会う(光村6年上)
【教材名】
「やまなし」
「イーハトーブの夢」
「永訣の朝」「松の針」「無声慟哭」「白い鳥」
(子供が自分で選択した他の賢治の作品)

2 単元の目標

(1) 叙述に基づいて情景を想像したり,二枚の幻灯を対比的に検討したりしながら「やまなし」を読むことができる。
(2) 宮沢賢治とその作品に関心をもち,いろいろな作品を読むことができる。
(3) 「やまなし」と宮沢賢治の他の作品を比較しながら読むことにより,「やまなし」の象徴性について自分の考えをもつことができる。
(4) 不明な語句を辞書で調べたり,新出漢字を正確に読んだり書いたりすることができる。

3 児童と単元

(1) 児童の実態(男子18名 女子14名 計32名)

【学力実態】

昨年度3月に実施した「教研式標準学力検査(NRT)」の領域別学力実態は次の通りである。

「話すこと・聞くこと」 通過率72.5(69.4)全国比104
「書くこと」 通過率63.0(61.3)全国比103
「読むこと」 通過率59.1(61.3)全国比96
「言語事項」 通過率64.8(62.5)全国比104
※( )内は全国通過率

 「読むこと」領域だけが,全国通過率を下回っている。「読むこと」に関わる実態をさらに細かく見る。
必要な図書資料を選んで読むこと 通過率70.8(71.7)全国比99
心情や場面描写を読み取ること 通過率46.0(48.3)全国比95
要旨や文章構成を読み取ること 通過率68.2(71.3)全国比96
 統計的に明らかな有意差が出るほどに落ち込んでいるわけではないが,「読むこと」に関する学力が低いことは確かである。
 このような結果になった最も大きな要因は,読書量の圧倒的な不足であると考えている。子供たちの図書館の利用率も極めて低い。6月末現在,図書カードが2枚目の子供は皆無,1枚目の裏にようやくたどり着いた子供がわずかに数名という体たらくである。
 このような実態を改善するため,例えば,次のような手だてを講じてきた。

・ 折りに触れ,積極的な読書を促す。
・ 教室内に図書を持ち込む。
・ 学級通信や懇談会を通して,保護者に低調な実態と読書の必要性を伝える。
・ テスト終了後等の隙間時間に読書をさせる。
・ 朝学習時に読書タイムを設定する。

 このような手立てと,昨年度末の「ハリーポッター」効果により,一部の子供たちに読書熱が高まってはきたが,前述した図書館利用状況をみても分かるとおり,依然として低調な実態が改善されたとは言えない。
 もちろん,国語科の指導方法にも要因はあったのだろうが,教科書に載せられている程度の文章量や限られた授業時数で,読書量不足を補うことは不可能である。本単元をきっかけに,より一層の読書意欲喚起を図っていきたい。

【読むこと】

「読むこと」に関する学力(読む力)を子供たちが自覚的に身に付けることができるような指導を心がけてきた。例えば,4年生「ごんぎつね」の学習で学んだ「読む力」を,5年生「大造じいさんとガン」の学習で自覚的に適用できるような指導を心がけてきたのである。「ごんぎつね」は分かったけれど,どのような「読む力」を学んだのかが分からないようでは,学力を形成したとは言えないからである。
 そこで,ある教材文で学んだ「読む力」を子供たちが他の文章を読むときにも自覚的に適用できるよう,用語として教室前面に常掲し,意識化させてきた。子供たちは既習の「読む力」をすべて身に付けているとは言えないが,繰り返し使ってきたものについては,自ら他の文章にも適用しようとする姿が見られるようになってきている。

【音読】

 教材文を淀みなく音読できることは,「読むこと」における学習の最優先指導事項である。全員に保障しなければならない基礎学力である。家庭学習に委ねることなく,授業の中で保障するという構えで指導を進めてきた。次のようにである。

・ 教材文の題の横に○を十個書かせ,一回通して音読する毎に赤鉛筆で塗りつぶさせる。
・ 単元の学習終了までに,すべての○を塗りつぶすことを目標とする。
・ 授業時間内の音読練習の場をできる限り確保する。
・ 学習の段階や子供たちの実態に応じて,様々なバリエーションで音読練習をさせる。
・ 家庭での音読練習を勧める(ただし,宿題にはしない)。

 授業の中で様々なバリエーションの音読練習を繰り返しながら,単元の学習終了時にはほとんどの子供たちが淀みなく音読できるようになっている。

【漢字】

 漢字の読み書きも,音読同様,家庭学習に委ねることなく,学校で保障しなければならない最優先指導事項である。採用している教材「あかねこ漢字スキル」を核とした漢字学習システム(後述)によって,子供たちの漢字習得率はほぼ満足できる状態にある(下表参照)。

1 2 3 4 5 50問 6 7 8 9 10 50問
97.7 95.8 98.7 94.5 96.5 94.3 97.8 97.7 97.9 98.7 97.1 93.2
※ 漢字スキルテストの平均点

(2) 単元について

【学習指導要領】

新学習指導要領国語科の領域は,「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」「言語事項」の3領域1事項に改められ,その指導時数が次のように明示されている。

「話すこと・聞くこと」 25単位時間
「書くこと」 55単位時間
「毛筆書写」 30単位時間

「読むこと」「言語事項」については時数は示されていない。6年生の年間指導時数は175時間であるから,175−(25+55+30)=65時間の中で,「読むこと」「言語事項」を指導することになる。「読むこと」に使える指導時数はかなり限定されている。しかし,依然として最も多い時数が配当されており,新学習指導要領において「読むこと」の指導が軽視されているわけではない。
 第5学年及び第6学年の「読むこと」に関する目標は次の通りである。

` 目的に応じ,内容や要旨を把握しながら読むことができるようにするとともに,読書を通して考えを広げたり深めたりしようとする態度を育てる。

この目標は,本単元の目標^_に直結している。
また,本単元に関わる内容としては,次の事項が示されている。

ア 自分の考えを広げたり深めたりするために,必要な図書資料を選んで読むこと。
ウ 登場人物の心情や場面についての描写など,優れた叙述を味わいながら読むこと。
オ 必要な情報を得るために,効果的な読み方を工夫すること。

本単元では主に次の学習活動を通して,上の事項を指導していく。

ア 「やまなし」の象徴性を探るため,教師から提示されたり自分で選択したりした賢治の他の作品を読む。
ウ 「やまなし」に描かれている二枚の幻灯を叙述に即し,対比的に検討する。
オ 図書館等で関連書籍を探して読む。

【教材】

 主教材「やまなし」は次の点で,6年生の「読むこと」教材として適している。
一人で読んだだけでは,100%の子供が「分からない」。
読んだだけでほとんどの子供が「分かる」のであれば,そもそも授業などしなくてもよい。しかし,「やまなし」はその主題や象徴性を考えようとすると,非常に難解な物語である。だからこそ,授業する価値のある教材である。授業することによって,「分からない」から「分かる」へ変容させることができるからである。
「やまなし」のような教材を指導する場合,その方向は二通り考えられる。

A 言葉の象徴性を考えさせながら,作品の主題に迫る
B 独特の造語やオノマトペのおもしろさ等を読みながら,作品の世界を楽しむ

 本単元ではAの方向をとる。第一に,子供たちのほとんどは一読後「分からない」という感想を述べるだろうからである。「分からない」という状態を「分かる」状態に変えるのが授業である。第二に,分かろうとする過程で,賢治の他の作品を読む必然性が生まれるからである。このような難解な教材は滅多にあるものではない。是非,Aの方向での学習を体験させたい。Bの方向を取るのであれば,他の教材でもできる。

4 指導の構想

(1) 「読むこと」の指導

「やまなし」を読むときに,子供たちが主に活用する「読む力」は『対比的思考力』と『象徴性を考える力』である。
「やまなし」の二枚の幻灯は対比的に描かれており,叙述をもとにその対比性を抽出することで,二枚の幻灯それぞれの世界を明らかにすることができる。
しかし,「やまなし」のもつ象徴性を考えようとすると,この作品だけでは理解できない要素があまりにも多い。
そこで,「やまなし」と同時期に書かれた賢治の他の作品(四編の詩)を提示する。「やまなし」は賢治の妹トシの死の直後に書かれた作品である。妹の死を直接的に描いた四編の詩を提示することにより,子供たちなりに「やまなし」の象徴性を考えることが可能になる。
一人の作家の作品を複数読むことにより,一作品への理解が深まることを体験した子供たちは,宮沢賢治という作家への関心を高めるはずである。
このような子供たちに,教科書に掲載されている賢治の伝記「イーハトーブの夢」を読ませ,さらに図書館等を利用して賢治の多作品に触れる時間を設定することにより,読書生活の広がりを期待したい。

(2) 音読指導

前述した音読指導を本単元においても継続する。ふだんの授業の中で使っている音読指導の主なバリエーションは次の通りである。

・ 追い読み(一文ずつ教師の後について読む)
・ 交代読み(一文ずつ教師と交代で読む)
・ 一斉読み(まとまった範囲を全員で読む)
・ リレー読み(グループが交代で読む)
・ 個人読み(一人一人が自分の早さで読む)
・ スピード読み(できるだけ速いスピードで読む)
・ 指名なし読み(一文毎に読みたい子供が起立して読む)
・ 連続読み(つっかえるまで一人が連続して読む)

 上のようなバリエーションを学習段階や子供たちの実態を見ながら適用していくことにより,すべての子供たちが淀みなく音読できるようにしていきたい。

(3) 漢字指導

 「漢字指導」と書いたが,新出漢字を一つ一つ丁寧に指導することはしない。子供たちが漢字を習得するための「学習システム」をつくり,それを徹底させる。次のように行う。

1 漢字スキル右ページの練習(授業時間内の5分間程度)
ア 指書き(画数を唱えながら机の上に書いて形を覚える)
イ なぞり書き(画数を唱えながらお手本をなぞる)
ウ うつし書き(画数を唱えながら自分で書いてみる)
エ 空書き(画数を唱えながら全員で空中に書く)
2 漢字スキル左ページの練習(授業時間内の5分間程度)
ア 横に練習していく(全員が最低一回は練習できる時間を保障するため)
イ 再下段は答えを隠して書いてみる。
ウ 右ページと左ページを丁寧にやってあるかを教師が確認する。
3 練習テスト(授業時間内の5分間程度)
ア 問題ページを見ながらノートに自分でテストをしてみる。
イ 自分で採点し,間違えた問題は再度練習する。
4 本番テスト(授業時間内の10分間程度)
ア テストページを切り離し,一斉に行う(3分程度)。
イ 隣同士で交換し,採点をする。明らかに正解の問題のみに○をつけ,怪しい文字や間違えている文字があったら,教師のところへ持ってくる。
ウ 友達から返されたテストを列毎に一人一人教師に見せに来る。
エ その間,正解した問題にはシールを貼り,間違えた問題は再度練習する。
オ 名簿順に名前を読み上げ,点数を報告させる(全員の前で言いたくない子供は教師のところへ報告に来る)。
カ テストをノートに貼る。
キ 100点を取れなかった子供は,間違えた問題のみ再テストを行う(休み時間か放課後)。
5 50問テスト,100問テスト
ア 漢字スキルが5番終わったら50問テストを行う。
イ 10番終わったら100問テストを行う。

5 単元の指導計画(本時5/14)※ 教科書指導書の配当は16時間

学習活動
漢字学習
・黙読・音読後,短く感想を書いて発表する。(1)
・追い読みを中心に音読練習をする。(1)
・題と物語の舞台を検討する。(1)
12右
12右
12左
・二枚の幻灯を対比的に検討する。(3)
・「私の幻灯」を検討し,賢治の年譜を読む。(1)
12練テ
12本テ
13右
・四編の詩を読み,言葉の象徴性を検討する。(2)
・「やまなし」の象徴性について自分の考えを書く。(2)
13右
13左
13左
・「イーハトーブの夢」を読み,賢治の他の作品に関心をもつ。(1)
・賢治の他の作品を選んで読む。(2)
13練テ
13本テ
14右

6 本時の指導計画

(1) 本時のねらい

@ 「五月」と「十二月」二枚の幻灯を読み比べ,対比的叙述や対比の内容を指摘することができる。
A 「十二月」を淀みなく音読することができる。
B 漢字スキル13の新出漢字を正しく書くことができる。

(2) 展開の構想

【漢字指導】

 本時における漢字指導は,漢字スキル12の本番テストと13の右ページ練習である。
 テストは3分程度で行う。十分に漢字学習がなされていれば,遅い子供でも3分で書くことができる。採点は隣同士で行う。隣同士で採点することで,漢字学習に緊張感が生まれる。また,正しい文字を書くための目が養われる。
 13右ページの練習時は,「画数をきちんと唱えながら練習しているか」「なぞり書きは丁寧に行っているか」の二点をしっかりと確認する。テスト時に間違える子供は,この二点が疎かになっていることが多いからである。

【音読指導】

 本時における音読指導の場は,「指名なし音読」と「『十二月』の通読」である。「指名なし音読」は発表や討論のための訓練でもあり,緊張感を伴う音読練習の場でもある。「『十二月』の通読」は,淀みなく読むための練習の場であり,速読の訓練の場である。授業の終末にこの場を設定することにより,速読への意欲を高めることができる。

【「読むこと」の指導】

 「二枚の幻灯」の対比的叙述を探す活動は,前時で行う。まとまった時間を取り,じっくりと本文に向かわせたいからである。本時は,個々が見つけた対比的叙述の発表と対比内容の検討が「読むこと」に関わる主な学習活動となる。対比的叙述を十分に見つけられなかったり,対比内容を挙げることができなかったりした子供には,友達の考えをしっかりノートに記録させるようにする。このような学習活動の繰り返しで,徐々にできるようになっていくと考えるからである。

(3) 本時の展開

学習活動 教師の働きかけと児童の反応 留意点
漢字スキル12の本番テストを行う。

漢字スキル12本番テストを行います。時間は3分です。

・ 漢字テストに挑戦し,採点し合う。
・ 点数を報告し,間違えた漢字を練習する。

・ 4指導の構想(3)に述べた順でテストを行う。
漢字スキル13の右ページを練習する。

漢字スキル13の右ページを練習します。今日は「枚」から「熟」までの4文字です。時間は5分。用意始め。

・ 「指書き」「なぞり書き」「写し書き」の順に練習を進める。
・ 全員で空書きをする。

・ 画数を唱えながら,ていねいに練習するよう促す。
・ 空書きをして確認する。
「十二月」の音読練習をする。

赤丸がいくつになったか確認します。

・ 自分が該当する数に挙手する。

「十二月」を音読します。指名なしです。自信のない人からどうぞ。

・ 一人ずつ起立して音読する。

・ 通して音読できた回数を挙手で確認する。
・ 一人一回は必ず音読の場を与える。
二枚の幻灯を対比的に検討する。

「五月」と「十二月」の対比を発表してもらいます。見つけた数が少ないなあと思う人からどうぞ。

・ 春←→冬
・ 昼←→夜
・ 日光←→月光
・ かわせみ←→やまなし
・ かにの子供が小さい←→成長した
・ クラムボン←→出てこない
・ 魚←→出てこない
・ かばの花びらが流れる←→やまなしが流れる

・ できるだけ多くの子供に発言を促す。
・ 自分が見つけられなかった対比はノートに付け加えさせる。
発表された対比の内容を検討する。

この物語で,いちばん重要な対比はどれですか。ノートに☆印を付けなさい。

・ かわせみ←→やまなし
※題に着目してこのように答える子供が多いであろうと思われる。

「かわせみ」と「やまなし」の対比をもっと具体的に指摘しなさい。どのように対比されているのですか。

・ 動物←→植物
・ はじが黒い←→黄金のぶち
・ とがっている←→丸い
・ 魚の命を奪う←→かににいいにおいとお酒を与えてくれる。

・ 「かわせみ←→やまなし」以外の対比を選択する子供が多かった場合は討論させる。
・ 対比を発表させた段階で,「かわせみ」と「やまなし」に関する具体的な対比内容が発表された場合はこの発問はしない。
次時の学習内容を知る。

「五月」と「十二月」二枚の幻灯の世界をそれぞれ,ズバリとまとめてごらんなさい。何の世界と何の世界ということができますか。

・ 暗い世界←→明るい世界
・ 怖い世界←→平和な世界
・ 恐怖の世界←→安心な世界

・ 時間的余裕があれば,発表させる。
次時の学習内容を知る。

どう考えるのがよさそうか,次の時間に検討することにしましょう。
全員起立,「十二月」を音読した人から終了です。

ストップウォッチで音読の時間を計る。

a 評価基準
@ 二枚の幻灯を比較し,対比的叙述を三つ以上指摘することができる。
A 「かわせみ」と「やまなし」の対比内容を複数指摘することができる。
B 「十二月」を4分程度で音読することができる。
C 漢字スキル12の漢字をすべて正しく書くことができる。

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