NO.56[2001/8/25]

小学校英語は無駄か?

21日(火)〜23日(木)まで連続三日間、市の教育センターにて『小学校教員実践英会話講座』が行われ、参加してきた。小学校教員を対象とした英会話の官制研修が実施されるのは県内初ということで、連日のように新聞社、地元テレビ局の取材があった。

さて、私は講座一日目に「実践発表」を行ったのだが、私の発表に先立って、新潟大学教育人間科学部助教授の松沢伸二先生の講義をお聞きした。
松沢先生は、白畑知彦先生(静岡大学助教授)の論文を引用しつつ、現状の小学校英語に対しネガティブなお考えを示された。
白畑先生は、Ex(研究開発学校で『小学校英語活動実践の手引』のような授業を年間35回、小学校4・5・6年次3年間の合計105回、ALT主導の授業をうけて中学校に入学した学習者集団)とNon-Ex(小学校で英語教育を一切うけずに中学校に入学した学習者集団)の英語運用能力を比較した研究結果を発表されたという。
白畑先生の調査課題は次の通りである。

英語授業を週1回3年間、合計105時間行うと、次のような効果が期待できるのではないか。
(a)ExはNon-Exよりも音素識別能力に優れる。
(b)ExはNon-Exよりも英語発音能力に優れる。
(c)ExはNon-Exよりも英語で積極的に話そうとし、発話数も多くなる。

結果はどうであったか。白畑先生は言う。

今回の実験結果は、ここにあげた予想を全て否定するものとなった。すなわち、Exの英語能力も、Non-Exの英語能力も同質だったということである。
(中略 渋谷)
直接的にであれ、間接的にであれ、A小学校で実践された授業方法が英語能力の伸長に効果がなかった理由は、とても単純だと筆者には思える。それは、英語に接触する時間が言語習得をするためには、あまりにも少なかったからであろう。週1回で、教師からの発音指導もほとんどなく、ビンゴゲームやフルーツバスケットなどの遊びの要素の強いゲームを中心とした活動では、年35時間で、たとえ3年間継続しても、効果が期待できないということである。特に、今回の実験結果では、年少者の方が年長者よりも優位だという経験的に信じられている音声習得においても、効果がないことが判明した。たとえ、学年を下げて1年生から英語学習を開始しても、授業方法が同じならば大同小異だと筆者は予測する。早く始めれば、つまり小学校から英語教育を開始すれば、どんな授業形態を採用しても、日本の子ども達がみんな高い英語能力を身につけることができるなどと考えない方がよいことを今回の実験データは教えてくれたような気がする。

(現在、私の手元に白畑論文はない。上の引用は松沢先生が紹介して下さった資料に基づいたものである)

松沢先生は、このような論文を資料として提示され、次のようなことを述べられた。

英語の専門教育を受けていない、いわば英語については素人である小学校教師が英語の授業を行うことは、効果がないばかりでなく、逆に中学校教師に負担をかけることにもなりかねない(正しい発音に矯正しなければならないために)。

※ 上の松沢先生の言葉は渋谷が講義を聴いて取ったメモをもとにしたものであるため、松沢先生の真意ではないかもしれない。したがって、文責は渋谷にある。

このような講義のあとで、私の実践発表である。やりづらいことこの上ない。しかし、与えられた1時間の枠内で責任は果たさなければならない。
私は、本サイトでも公開している「指導計画」「指導案」「授業記録」そして「授業ビデオ」を資料に、

素人の小学校教師でもできる小学校英語の授業

を提案した(つもりである)。

その晩、私は眠れなかった。松沢先生のおっしゃったことが一方では理解できつつも、納得できないこともあったからである。考えれば考えるほど、眠れなくなった。
そして、夜中にむくりと起きあがり、松沢先生にご指導への御礼と共に質問メールをしたためた。

(以下、次号へ)