NO.104[2006/12/25]

NHK『わくわく授業』Q&A

NHK『わくわく授業』のWebサイト用記事としてQ&Aの原稿を書いた。あの授業の背景を述べたものであり、現在の私の小学校英語活動に対する考えでもある。ここにも加筆修正して書いておくことにする。
(なお、QはNHKが設定したものである。)

Q0 先生のプロフィールを教えてください

・教師歴 (20)年
・専門 国語
・趣味 サッカー観戦、ギター、ホームページ、ブログの運営
・好きな色 オレンジ
理由
『アルビレックス新潟』のチームカラーだからです。

・教師としてのモットーは?

 あまり考えたことがありませんね。敢えて言うなら、「教室の事実で語る」ということでしょうか。

・あなたにとって「理想の授業」とは?

 次の二つの条件を満たした授業です。

1 子供に向上的変容がある。
(※ 「向上的変容」とは尊敬する野口芳宏先生の言葉です。)
2 子供が夢中になって学んでいる。

 「楽しい」だけでは授業ではありません。授業は子供を楽しませるために行う行為ではないからです。まず大切なのは、子供が「プラスの方向に変容」することです。これが最も大切なことだと思っています。その上で、子供が「楽しい」と夢中になって学んでいれば、それが理想の授業ですね。道遥か遠しです。


Q1  今回の授業を始めた「きっかけ」を教えてください。
また、この授業は、いつごろから取り組み始めたのですか?

 英語活動の授業を始めて、7年目になります。7年前というと、現行の学習指導要領が施行される前です。日本中の学校が試行錯誤しながら、「総合的な学習の時間」の計画を作り始めていました。
 私が勤務していた学校では、校長のリーダーシップの下、その中に英語活動も入れようということになりました。そして初年度である平成12年度は3,4年生を対象にしようということになったのです。そのとき私は4年生の担任。まさに英語活動の当事者とならざるを得なくなったのです。それまでは、英語とはまったく無縁の生活を過ごしていました。
 最初の3年間は、今とは異なる授業スタイルで英語活動に取り組んでいました。ターゲットとなる言語材料を用意しておき、歌やゲームを通して、その言語材料を「発話できる」ようになることをねらいとした授業をしていたのです。そうすることが小学校英語活動の在り方であると考えていましたし、そのようなスタイルの授業しか知らなかったのです。
 現在はそのようなスタイルの授業はしていません。子供が英語を「発話できる」ようになることを目指すのではなく、まずは「聞いて分かる」体験を積み重ねることをねらっています。いかなる言語であれ、「聞く」ことを抜きにして、「話す」ようになることはあり得ないからです。小学校段階では、もっともっと「聞く」活動を重視するべきだと考えています。そのためには、子供が英語を聞くことを楽しめるような活動をつくっていくことが必要となります。

Q2  今回の活動にかけた授業時間は全部でどれだけですか?
    また、その全体の流れを教えて下さい。
(撮影させていただいたのは、そのうちのどの部分になりますか?)

 今回の授業では、「形」をトピックとして設定し、2時間分の授業を計画しました。子供たちにとっては、今年度に入って11時間目と12時間目の英語活動の学習となります。
 11時間目の授業(1日目の授業)では、子供に形の名称をinputするために、次の四つの活動を用意しました。

1 歌“I See A Star”・・・歌に出てくる形を聞き取って楽しむ。
2 What's Missing?・・・歌から聞き取った形カードを使ってゲームを楽しむ。
3 Storytelling・・・絵本“Fuzzy Yellow Ducklings”の読み聞かせを楽しむ。
4 Optical Illusion・・・スマートボードに錯視図形を投影し、目の錯覚を楽しむ。

 子供に形の名前を覚えさせるのではなく、四つの活動を楽しむ過程で、いつのまにか形の名前を覚えてしまっている、そんな意図をもって授業をデザインしました。
 12時間目(2日目の授業)は、「歌」「絵本の読み聞かせ」「タングラム」「ぬりえ折り紙」の四つの活動で構成されています。いずれも、前の時間にinputされた「形」を使って遊ぶ活動です。この時間も、子供は「形を覚えよう」とはしていません。「活動を楽しもう」としています。つまり、子供は「英語を学習している」のではなく、「活動を楽しんでいる」のです。これが中学校以降の英語学習と小学校での英語活動の大きな違いです。
 今回の授業も含め、数年分の年間指導計画とレッスンプランを私のサイトで公開しています。ご覧ください。
『教室通信 Bittervalley』 http://www001.upp.so-net.ne.jp/bittervalley/

Q3  今回の授業のためにどんな準備をしたか、なるべく具体的に教えてください。

 3年生の子供を惹き付けるために、どんな活動で授業を構成するか。これがいちばん難しいところであり、おもしろいところです。同じ「形」をトピックとした授業であっても、どんな活動をもってくるかによって、授業は大きく異なってきます。
 私はまず、「形」を題材とした絵本を探してみました。絵本は優れた教材になると考えているからです。絵本を読み聞かせることによって、言語情報とともに視覚情報を与えることができます。絵があることによって、子供は耳に入ってくる英語の意味を推測することができるのです。また、優れた絵本は子供を一気に惹き付けます。そして、何度読んでやっても飽きません。絵本の読み聞かせは、高学年の子供であっても喜びます。
 次に、書店を回ったりネット上を検索したりしながら、「形を使った遊び」を探しました。3年生が夢中になって取り組めるような活動が欲しかったからです。結果的に、「これは使える!」と判断したものが三つ残りました。「錯視図形」「タングラム」「ぬりえ折り紙」です。これらの教材化を図り、2時間に分けて授業を組み立てました。
 このような作業は、学級担任だからこそできることです。例えば、「タングラム」は算数の実践の中から見付けた教材です。他教科の内容を教材として持ち込むことができるのは、他教科も指導している担任だからできることです。また、子供の実態を知っていなくては、子供を惹き付ける教材か否かを判断できません。これも担任の大きなアドバンテージです。
 小学校英語活動の授業づくりは、ALTではなく学級担任が中心となって行うべきです。学級担任は、英語については素人ですが、授業を作ることについては専門職のはずです。必要な部分、足りない部分をALTにサポートしてもらえばよいのです。

Q4  今回の授業のポイント、一番工夫した点はどんなところですか?

 繰り返しになりますが、次の二つです。

1 子供を惹き付ける教材を用意し、授業を組み立てること
2 その教材を使って、「聞いて分かる」体験を具現すること

 1については、前述したとおりです。
 「聞いて分かる」体験を具現するために考えなければならないことは、英語という言語情報をinputするときに、どのような非言語情報を一緒に与えるかということです。言語情報だけでは、子供は内容を理解することができません。「絵を見せる」「ジェスチャーを示す」「表情で伝える」等々の非言語情報が一緒に与えられるから、子供は英語の内容を推測できるわけです。人は、情報収集の90%を視覚に頼っていると言われています。今回の授業でも、いかに子供の視覚に訴える情報を与えられるかを考えました。

Q5  今回、授業を行ってみての感想(手応え!・反省点?)をお聞かせください。

二日間の授業の後、子供はこんな感想を書きました。

「えいごはとても楽しいです。今日やった形パズルとぬりえおりがみがとても楽しかったです。形パズルは、いろいろな形をかんがえて作りました。ぬりえおりがみは、テントウ虫をつくりました。またやりたいです。」
「さいしょは意味がわからなかったけれど、だいたいわかりました。なぜかというと、推理したからです。英語は、はっきりはわからないけれど、頭の中でよく考えると、だいたいわかります。」
「先生が何をいっているのかわからなかったけれど、ひょうじょう見てことばをよく聞くとわかりやすかったです。ゲームや絵本の意味がわかってうれしくなったので、えいごが好きになりました。すいりすることが楽しくなりました。」

 これらの感想から分かることは、「子供が活動を楽しんでいたこと」「子供が英語の内容を推測しようとしていたこと」です。私がねらっていたのは、まさにこの二点ですから、その意味では大きな手応えを感じています。
 ただ、子供の反応に対し、こういう切り返しをしたいと思っても、それを英語にすることができず、歯がゆい思いをした場面もありました。私自身の英語力アップは大きな課題ですね。

Q6  今後、今回の授業をどのように発展させていきたいですか?また、他にはどんな授業に取り組んでみたいですか?

 英語活動は、教材がすべてと言っても過言ではありません。子供が喜ばない教材では、魅力的な活動をつくることはできないからです。もっともっとたくさんの教材化を図っていく必要があります。今回の「形」にしても、6年生に同様の授業が可能かと言えば、必ずしもそうではありません。3年生と6年生では、発達段階が大きく異なるからです。様々なトピック、様々な学年に対応する教材や活動をつくっていきたいですね。