NO.105[2007/1/21]

『わくわく授業』の舞台裏

 先週、東京で行われた研修会で「『わくわく授業』の舞台裏」というテーマで話す場をいただき、1時間ほどの発表をしてきた。参加された方々からご要望をいただいたので、発表の概略を記しておく。(プレゼンファイルは、QuickTimeムービーとして『図書室』の書庫にアップしてある。)

 昨年、思いもかけずNHK『わくわく授業』のお話をいただきました。
自分の授業が全国に放映されるなど、とんでもないことだったなぁと、 今考えても、冷や汗が出て参ります。私にとっては『わくわく授業』どころではなく『どきどき授業』でした。
 今日は、その『わくわく授業』の舞台裏について話せということですので、番組も見ていただきつつ、番組では放映されなかった部分についてもお話しさせていただきたいと思っております。
 まずはじめに、私自身の「小学校英語活動」に対する考え方をお話しいたします。
 英語活動の実践を始めて、今年で7年目となります。私の英語活動に対する考え方は、前半の3年間と後半の4年間で大きく異なっております。私のサイトで公開しているレッスンプランを比較していただくと一目瞭然です。3年目と4年目の間に転換点があるわけですが、それは、『スーパーえいごリアン』によってでした。このプロジェクトに参加させていただくことで、英語活動に対する考え方が変わったのです。
 最初の3年間行ってきた英語活動は、完全に「スキル重視の授業」でした。学ばせたい言語材料をゲームなどを通して繰り返し練習させ、子供たちが英語を発話できることをねらいとする授業です。市川先生の御著書のタイトルの真逆、まさに「子供に英語を教えていた」わけです。
 ところが、このような考え方で「スーパーえいごリアン」という番組を見ると、授業での使い方が分からないのです。「えっ、この番組をどうやって使えって言うの」というのが初めて番組を見たときの正直な感想でした。「太極拳」「フライングディスク」などをテーマとした番組を使った授業を悩みながらつくっていくうちに、ようやく授業観を次のように転換することができました。
 コミュニケーション重視の授業。私は、この授業を「聞いて分かる」体験を積ませることが授業のねらいだと考えています。なぜなら、コミュニケーションのスタートは「聞く」ことだからです。
 別な見方をしてみますと、スキル重視の授業は、言語を獲得させることが先にあって、それを使うことによってコミュニケーションが成立するという考え方です。
 一方、コミュニケーション重視の授業は、実際のコミュニケーションを通して、言語が獲得されていくのだという考え方です。
 小学校の英語活動では、言語の獲得まで行く必要はない。コミュニケーションそのものを成立させることが大切であると考えています。
 英語活動の授業の中で、コミュニケーションを成立させるには、二つが必要となります。
  • 相手の話す英語を聞いて、それを理解しようとする態度をもつこと(推測)
  • 推測した内容について、相手に何らかの反応を示そうとする態度をもつこと(反応)

 これは、Tom Mener先生が「スーパーえいごリアン」サイトのコラムの中に書かれていた文章をキーワード化したものです。
 小学校英語活動のねらいを「コミュニケーション能力の基礎を育成する」ことであると考えたとき、そのキーワードは「推測」と「反応」だと考えています。
 番組の中では「推理」という語を使っていますが、これは子供に向けて考えた言葉です。3年生の子供に「推測」という言葉は理解できませんし、でも「推理」というと子供たちにも理解できますし、「推理する」というと何か謎解きのような楽しそうな感じがしますよね。

 以上が、現段階での私の考えです。
 さて、理屈はともかくとして、実際に授業をつくっていかなければなりません。授業をつくっていく上で、考えたことは三つです。
 まずは、学級担任の利点を生かした授業を構想するということです。これまでの放送されてきた小泉先生、宗先生、直山先生は英語の専門家です。私に求められているのは、英語素人の担任でもこうすれば授業ができる、あるいは担任だからこそこのような授業ができるという事実を示すことです。
 そこで、第一に考えたのは、子供を引き付ける教材として何をもってくるのかという点です。これが決まるまでには相当悩みました。これが決まれば、後は組み立てです。
 組み立てについて考えたのは、「推測」と「反応」の繰り返しによって授業を構成するということです。そうすることによって、「聞いて分かる」体験を具現することができるからです。
 最後は、子供たちの「推測」を助けるinputをするということです。「聞いて分かる」を具現するためには、絶対にこれが必要となります。言語情報だけでは子供たちは内容を推測することが困難です。そこで、いちばん重視したのは、言語情報と共に視覚情報を与えるということです。今回の二日間の授業で使った教材は、ほとんどが子供たちの視覚に訴えるものになっています。
 「"I See A Star"で使用するピクチャーカードやスライド画面」「錯視図形のスライド画面」「2冊の絵本」「タングラム」「ぬりえ折り紙」、これらはすべて、子供たちの視覚に訴える教材です。
 子供たちに英語だけをペラペラ話して聞かせても、子供たちは聞きません。内容が分からないからです。しかし、英語という言語情報と一緒にこのような映像情報が与えられることによって、子供たちの推測が容易になります。
 番組では、子供たちが"I See A Star"を歌う場面が冒頭で使われていましたが、実際にはあれは1日目の授業の最後の場面です。
では、実際の授業では最初に何をやったのかというと"I See A Star"という歌を聴いて、歌から聞こえてくる形を聞き取るという活動です。歌やチャンツというと歌ったり、発話したりするためのものと思われがちですが、「聞く」という活動に使える歌やチャンツはたくさんあります。
Listen to the song. We can hear some shapes in this song. Listen carefully.
などと言いながら、子供たちが聞き取れた形のカードをホワイトボードに貼っていく。全部の形が聞き取れるまで何度も何度も聞きます。すると、形を聞き取ることが目的で歌を聴いていたのに、結果的に子供たちはあっという間に歌えるようにもなってしまいます。

 続いてのWhatユs Missing?は番組でも放映されました。
三つ目はStorytellingです。二日間の授業で2冊の絵本を使いました。一日目の読み聞かせは、放送されていませんでしたが、使った絵本はこれです。
"Fuzzy Yellow Ducklings"
これは、子供たちとコミュニケートしながら読み聞かせるにはとても面白い絵本です。(絵本を使って模擬授業)

 そして四つ目に錯視図形を楽しむ活動を行い、最後にスクリーンを見ながら歌を歌いました。これが番組の冒頭で放送された場面です。錯視図形は放送されていませんので、ちょっと見ていただきたいと思います。
(錯視図形を提示しながら模擬授業)
 2日目の授業で行った活動は、ほぼ放映されました。
最初が、教室中にはってあるカードを探しながら“I See A Star”を歌う活動、二つ目が、絵本“COLOR ZOO”の読み聞かせ、三つ目が、タングラム、そして最後がぬりえ折り紙です。

 番組では、子供たちに「推理」の話をしたりしている場面が授業の途中に挿入されていましたが、実際には、あれは授業がすべて終了してからの場面です。
 では、番組の中から絵本の読み聞かせの場面とタングラムの場面をごらんいただきたいと思います。(番組を再生)

 番組の中でも「子供たちの感想」が紹介されていましたが、ハンドアウトの中に全員分の感想を入れておきましたのでご覧ください。
 それから、ネットサーフィンをしているときに、たまたま、この授業を評して「英語は図画工作じゃねえんだ!」という批判記事を書いたブログを見付けましたので、これもハンドアウトの中に入れておきました。この批判にどう答えるのか、この後のグループディスカッションでみなさんのご意見もお伺いしたいと思っております。
 授業で使った絵本や教材等は、今日ほとんど持ってきておりますので、後でご覧ください。
 以上で発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。