一つの花(その2)

では、『一つの花』は何を象徴しているのでしょうね。それをこれから考えてみましょう。キーワードはコスモスです。昨日、みんながいちばん大切な対比だと言った言葉ですね。物語の中でコスモスが出てくる部分を全て探してごらんなさい。

子供たちが見つけてきた部分を私が黒板に整理していきました。

【三場面】
・プラットホームのはしっぽのごみすて場のような所に、わすれられたようにさいていた
・お父さんは〜コスモスの花を見つけたのです。
・お父さんの手には、一輪のコスモスの花がありました。
・「ゆみ。さあ、ひとつだけあげよう。一つだけのお花、大事にするんだよう---。」
・ゆみ子は、お父さんに花をもらうと、キャッキャッと足をばたつかせて喜びました。
・ゆみ子のにぎっている、一つの花を見つめながら---。

【四場面】
・でも、今、ゆみ子のとんとんぶきの小さな家は、コスモスの花でいっぱいに包まれています。
・〜ゆみ子がスキップをしながら、コスモスのトンネルをくぐって出てきました。

三場面(戦中)のコスモスと四場面(戦後)のコスモスを対比的に見てみると、題の裏にかくされた象徴性が見えてきそうです。何しろ、お父さんはゆみ子でも母親でもなく、一つの花を見つめながら戦争に行ってしまったのです。お父さんは、コスモスの向こう側に何を見ていたのでしょうか。

題『一つの花』は何を象徴していると思いますか。ズバリとノートに書いてごらんなさい。

保護者のみなさんは、どのようにお考えになりますか。
4年生にとっては、相当に高度な問いです。私は書けなくて当然だろうと思っていました。しかし、子供たちを見くびってはいけません。素晴らしい考えがいくつも発表されたのです。

「幸せ」
「平和」
「喜び」
「大切な思い出」
「まごころ」

どうしても書けない子供には、
「友達が発表してくれた考えの中でいちばんいいなと思うものを選んでごらん」
とアドバイス。全員が自分の考えを決めました。
今、子供たちは「学習のまとめ」を書いているところです。これまでのノートを参照しながら、自分の考えをまとめていった文章です(アウトラインは私が示しました)。
昨日、早めに提出してくれた、しおりさんの文章を紹介します。

しおり
「一つの花」、この題は何かを象徴している。一体、何を象徴しているのか。
これから右の問題を考えてみよう。
この物語は四つの場面から成っている。一場面から三場面までは戦争中の出来事であり、四場面は十年を経た戦後の出来事である。したがって、この物語は一場面から三場面と四場面とで大きく二つに分けることができる。
一場面から三場面と四場面とを比べてみると、この二つが対比されて書かれていることに気づく。次のようにである。
A 戦争中(きけん)←→戦争後(安心)
B かぼちゃ、豆、いも←→肉、魚
C ゆみ子が小さい←→ゆみ子が大きい
D お父さんがいる←→お父さんがいない
E コスモス一輪←→コスモスいっぱい
F ミシンがない←→ミシンがある
右の対比のうち、この物語でいちばん重要な対比はどれか。それはEである。
なぜか。
それは、題名が「一つの花」だからだ。一つの花はコスモスのことだからだ。
物語の中でコスモスが出てくる部分を書き出してみよう。
<一〜三場面>
・プラットホームのはしっぽのごみすて場のような所に、わすれられたようにさいていた
・お父さんだけが見つけた。
・一輪の
・お父さんがゆみ子にあげた(ゆみ子がお父さんからもらった)
・お父さんが最後に見つめていた
<四場面>
・ゆみ子の家をいっぱいに包んでいる
・コスモスのトンネル(ゆみ子がスキップ)
三場面(戦中)でのコスモスの描かれ方と四場面(戦後)でのコスモスの描かれ方を比べてみると、題「一つの花」が何を象徴しているのかが分かる。
私は「幸せ」を象徴していると考える。
なぜか。
一〜三場面は、戦争中だから、幸せは忘れられていた。が、お父さんだけが見つけたコスモスで幸せのスタートとなる。四場面、つまり戦争後は、ゆみ子のとんとんぶきの小さな家は、コスモスいっぱい、幸せいっぱいになった。
右の理由から、私は題「一つの花」が象徴しているものは「幸せ」であると考える。