山へ

微風。新緑がわずかに揺れています。首筋に春の日差しを感じると、額から流れる一筋の汗が頬を伝いました。後ろにのけぞるほどの急坂を越えたとき、心地よい涼風が走り抜けます。突然、眼下に美しい眺望が広がりました。青い海。遠くに望むその青が、新緑の向こうに映えます。しばらく、青と緑のコントラストを楽しみました。振り返ると、行く道の先に、山の淡い緑に隠れて濃緑の隊列が見えます。先を行く子供たちの列です。ここは列の最後尾、ようやく角田山の五合目ほどまで登ってきたのです。

「お腹すいたぁ。まだ着かないの。あとどのくらい。」
「もうちょっとだよ。がんばって。」
1年生の髪は汗で額にはりついています。その小さな手は6年生の大きな手にしっかりと握られています。くじけそうになる低学年を高学年の子供たちが励ましながら頂上を目指す。いつも教室で見ている6年生が、この日は一回りも二回りも大きく見えました。縦割りグループの中で、自分はどういう立場なのか。彼らはそれをしっかりと分かっています。だから、弱音など吐くわけにはいかないのです。

「おーい」
遙か上の方から、かすかな声が、木々を突き抜けて聞こえてきました。先頭グループが頂上に着いたのです。その声を聞いて、最終グループの足も速まります。あと少しで、お昼ご飯が食べられるのです。子供たちにつられ、歩を進めようとしたとき、今までいたはずの1年生の姿が一人見えないことに気がつきました。辺りを探すと、山小屋のかげにその姿を発見。その手には、しっかりとかじりかけのおにぎりが握られています。空腹に耐えられず、一足早い昼食を楽しんでいたのでした・・・。

初めての試みであった全校縦割り登山。各グループの6年生はわずかに2名ずつ。他に頼るわけにはいきません。一人一人全員がリーダーとしてその役割を果たし切りました。


※ 本号のタイトルは「山へ」。お気付きの方もいらっしゃるでしょうが、第一段落の描写文は、国語で学習している『森へ』の文章を意識して書いています。さて、子供たちはどんな文章を書いてくれるでしょうか。

新緑の中を登る濃緑の隊列
背後に広がる越後平野。ここは八合目。
頂上で食べるおにぎりの味は格別!
校長先生のお話を聞いて帰路へ。