天声人語 そして・・・

▼「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらずといへり」。これは誰の言葉か。西郷隆盛、勝海舟、福沢諭吉ら6人の中から選ばせる。先日発表された小中学校の学力調査で、前回調査から正答が大きく落ち込んだ問題の一つだ。小学6年の社会の問題だった。▼これだけ取り上げてあれこれ論じるのは難しいが、多少の皮肉を感じざるをえない。明治初期驚異的なベストセラーになった『学問のすゝめ』の冒頭の文句であることは多くの方がご存じだろう。何のために勉強するかを懇切に説いた書でもあり、福沢先生も草葉の陰で苦笑しているのではないか。▼福沢は、高尚な文学や学問の前に「いろは四十七文字を習い、手紙の文言(もんごん)、帳合(ちょうあい)の仕方、算盤(そろばん)の稽古、天秤(てんびん)の取扱い等を心得、……」と「読み書き算盤」の重要さを説いた。いまでいえば、義務教育で教えられる内容だ。▼こうした「人間普通の実学」は身分に関係なく学ぶべきで、何のためかといえば、個々人の独立のためである、とする。それが国家の独立の基礎にもなる、と。当時まだ色濃く残る身分制社会を壊そうとの願いを込める。▼こんどの学力調査では、社会とともに算数・数学の落ち込みが大きかった。一方国語は上昇傾向だった。そうした傾向とは別に、「勉強嫌い」の生徒が多いのが目立った。▼福沢先生ならこう語るのではないか。「私の名前など知らなくてもかまわない。そんなことより何のための勉強なのかを考えてほしい。結局は自分自身のためではないか」と。この「何のため」が忘れられがちだ。

上は、16日(月)の朝日新聞「天声人語」です。
「小学6年の社会の問題?うちのクラスは大丈夫だな・・・。」
記事を読んだ私はそう思って、朝の教室へ。黒板に冒頭の文句を書いて尋ねました。
「この言葉について、二つお尋ねします。一つ目。誰が書いた文章ですか。二つ目。その本の題名は何ですか。」
結果は・・・。
挙手わずかに4名。惨憺たるものでありました。惨敗。

社会科の話を書きましたので、ついでに続けます。これもまた月曜日の話です。社会科の学期末テストを行いました。その裏面に「2学期の学習で心に残ったことを書きましょう」という課題がありました。集めて読んだところ、多くの子供が「戦争」について書いていました。
そこで・・・。
昨日、次のような課題にチャレンジしてもらいました。学期末テストとは比べようもないほど高度な課題です。本号では、課題だけを紹介いたします。みなさんなら、どのようにお答えになりますか。

以下の問いについて、あなたの考えを論述しなさい。

1.過去200年間に主な戦争だけで約400件起きています。その死者の累計は約1億6千万人と言われています。この事実について、あなたはどう考えますか。

2.「話し合いで解決できないから、仕方なく戦争で解決するのだ」という意見があります。しかし、一方で「全戦争の66%は戦争の原因となった問題の解決に失敗している」という分析結果があります。あなたはどう考えますか。

3.次のように言っている人がいます。(1)〜(5)の中から一つを選び、それに対するあなたの考えを書きなさい。
(1) 「人を一人殺せば人殺しであるが、数千人殺せば英雄である。」(ポーテューズ)
(2) 「戦争の目的は平和である。」(アリストテレス)
(3) 「人類から愛国主義者をなくすまでは平和な世界は来ないであろう。」(バーナードショー)
(4) 「智によりて勝つが第一、威によりて勝つが第二、武器を用いるが第三、城を攻めるが最下等の策なり。」(孫子)
(5) 「平和・・・二つの戦争の間に介在する、だまし合いの時期」(ピアス)

問題の文章自体も、読んだだけではなかなか理解できない6年生にとっては難解な文章です。難しい言い回しについては、解説を加えた上で、問題に取り組ませました。子供たちがどのように答えたのか。お読みください。(〜次号へ〜)