NO.73


今日は、お忙しい中、学習参観においでいただきましてありがとうございました。親子アイマスク体験はいかがだったでしょうか。
さて、連続でお伝えしている総合の学習。この間、子供たちがずっと楽しみにしてきたのが、全盲の女性、○○洋子さんとの出会いです。それが昨日ようやく実現しました。そして、○○さんの「目」であり、大切な家族でもある盲導犬シェルとも驚きの出会いをすることができました。
かく言う私も初対面です。もちろん、電話ではお話しさせていただいていましたが、実際にお会いするのは初めてだったのです。
「どんな方なのだろう?」
「盲導犬だって見たことないぞ。」
お会いする前はやや緊張していました。
しかし、その優しそうな姿と、常に○○さんに寄り添い、穏やかで従順なシェルを目にしたとき、無用な緊張は解けました。

校長室でしばらくお話ししているうちに、時刻は2時。いよいよ子供たちとの出会いです。

コンピュータ室に並ぶ子供たちはいつになく静まっています。子供たちもまた緊張しているのでしょう。
「こんにちは。」
「よろしくお願いします」
挨拶の後、さっそくお話をしていただきました。

目が見えなくなって、辛かったことの一つに子供との会話があります。もう子供たちは大きくなっていますが、その頃はまだ小さく、私も子育てをしていました。
「絵本を読んで!」
「今日、こんな絵を描いてきたんだよ。お母さん見て!」
こう言われると、本当に辛い思いをしました。私は見ることができないのです。
私たちは外に出るとき、杖をもちます。私もシェルと暮らすまではそうでした。風や空気の動きを頼りにしながら道を歩くのです。でも、下水に落ちてしまったこともあります。靴をなくして裸足で帰ってきました。それ以来、恐くて、一人では外に出ることがなくなりました。
そんなとき、私に「盲導犬をもちませんか」というお話がありました。はじめはお断りしたのです。なぜなら、私は犬が大嫌いだったからです。友達の盲導犬にもわずかしか触れないほどでした。でも、今は私にとってシェルはなくてはならない存在です。
日本には盲導犬の訓練所は8カ所しかありません。新潟にはないのです。ですから、私は北海道に行きました。4週間、私もいっしょに訓練するのです。みんなのお家の人は車の運転をするために自動車学校へ行くでしょう?それが私にとっては盲導犬の訓練所だったのです。
「盲導犬をもって、いちばんうれしいことは何ですか」とよく聞かれます。それは、自分でごみ捨てに行けることです。シェルがくるまでは一人でごみ捨てに出ても、場所が分からず、そのままもって帰ってきてしまうこともあったのです。それがいちばんうれしいことです。
反対に、辛いこともあります。それは、盲導犬といっしょに入れないお店があるということです。杖をもった友達といっしょにおいしい物を食べようと思っても、盲導犬と一緒の私だけは入れず、帰ってくることもあります。旅行に行こうとしても旅館やホテルに断られてしまいます。それが辛いことですね。みんなシェルを見ていて分かるでしょう?こんなにおとなしいんです。足を踏まれても鳴かないんです。でも、断られちゃうんですね。
それから、こんなこともありました。ある日、遊歩道をシェルといっしょに歩こうと思って出かけました。でも、しばらく行くと途中で道に迷っていることに気がつきました。泣きたくなってしまいましたが、そんなことは言っていられません。とりあえず、シェルに合図を出して、まっすぐ進みました。ところが、ある場所に来たらシェルが一歩も動かなくなってしまいました。私がどんなに合図を出してもダメなのです。それどころか、私の真ん前に座り込み、私が前に出られないようにしてしまいました。変だなと思って、座って下の土を触ってみました。それは土ではありませんでした。水でした。私の目の前は山の下埠頭の岸壁だったのです。そのまま進んでいたら、私の命はなくなっていたかもしれませんね。シェルは私を守ってくれたのです。
みなさんも杖をもった人や盲導犬と一緒の人を見たら、「お手伝いしましょうか?」と声をかけて下さいね。

私の記憶に頼った要約ですので、正確ではないところもありますが、30分間、すてきなお話を聞くことができました。子供たちも真剣にお話に耳を傾けていました。その後の質問コーナーでは子供たちから次から次へと質問が飛び出し、時間切れで制限しなければならないほどでした。○○さんのお話が、それだけ子供たちの胸にも響いたということでしょう。
教室に帰って、何気なく子供たちに聞いてみました。
「○○さんとシェルに会えてよかったかい?」
「うん!」
大勢の元気な返事が返ってきました。