『やまなし』(その4)

難教材『やまなし』の学習もいよいよ佳境、終わりに近づいています。

「五月」と「十二月」の二枚の幻灯にはどのような世界が描かれているのでしょう。自分の言葉でノートに書いてごらんなさい。

上は、NO.36の最後にお伝えした課題でした。
子供たちから発表された考えは、次のようなものです。

・「恐怖の世界」と「恵みの世界」
・「弱肉強食の世界」と「幸福の世界」
・「恐怖の世界」と「幸せの世界」
・「怖い世界」と「平和な世界」
・「怖い世界」と「楽しい世界」
・「落ち着かない世界」と「静かな世界」
・「弱肉強食の世界」と「恵みの世界」

上が、子供たちなりに解釈した二枚の幻灯です。なかなかのものだと思います。しかし、まだ難題の解決には至っていません。
・「クラムボン」とは何を象徴しているのか。
・「イサド」とは何を象徴しているのか。
・「かわせみ」と「やまなし」が象徴するものは何か
・物語『やまなし』の主題は何か

「私の幻灯は、これでおしまいであります。」
これが、物語最後の一文です。この一文が重要なのです。もっと言えば、一字をどう解釈するかです。この文の中に重要な一字があります。どれだと思いますか(一人も分かりませんでした)。それは「の」です。この文で使われている「の」は次のどれと同じ意味なのですか。
A 洋介さんのランドセル(所有)
B 犬のポチ(同格)
C 電車の本(関連)

子供たちも、まさか「の」一字に重要な鍵が隠されているとは思わなかったのでしょう。しかし、私はこの一字をどう解釈するかがこの物語最大のポイントだと考えています。子供たちの反応はこうでした。
A・・・14名
B・・・・0名
C・・・・6名

「ぼくはAだと考えます。この文をどう読んでも所有を意味するようにしか思えないからです。」
大方の子供たちは、このように考えています。一方、Cだと考える子供からも意見が発表されます。
「ぼくはCだと考えます。この二枚の幻灯には、宮沢賢治さんの体験が描かれているのではないかと考えたからです。宮沢賢治自身についての幻灯だという気がします。」
「ぼくも似ているんだけれど、宮沢賢治さんは自分自身をかにに見立てて、自分自身のエピソードを二枚の幻灯に表現したのだと思います。」

意見交換の結果、Cだと考える子供がずいぶん増えました。実は、私もBかCと考えるのが妥当だと考えています。
B・・・私自身の心=幻灯なのだ
C・・・私自身の体験について描いた幻灯なのだ
という解釈です。賢治自身、自分の作品を「心象スケッチ」という言葉で表現しています。
子供たちに次の資料を配りました。

ア 宮沢賢治年譜
イ 詩「永訣の朝」
ウ 詩「松の針」
エ 詩「無声慟哭」
オ 詩「白い鳥」

アを見ると、『やまなし』は賢治が最愛の妹トシを亡くした翌年に発表された作品だということが分かります。イ〜オは、妹トシが亡くなった年に発表された詩集『春と修羅』から選んだ詩です。いずれの詩にも妹の死が描かれています。ただ、旧仮名遣いで書かれており、子供たちには難しい言葉もたくさん使われています。そこで、すべての詩を私が読んで聞かせました。
四つの詩を読み聞かせた後で、尋ねます。

「クラムボン」「イサド」「かわせみ」「やまなし」は何を象徴しているのだと考えますか。ノートに書いてごらんなさい。

子供たちはノートに次のように書きました。
クラムボン・・・賢治の妹トシ
イサド・・・・・天国、仏の世界
かわせみ・・・・トシの死、絶望、死の恐怖、悲しみ
やまなし・・・・恵み、妹の笑顔、平和

次の時間は、なぜそのように考えたのかも含め、学習のまとめを書いてもらうつもりです。