『二つの意見から』

『二つの意見から』(国語)という学習を進めています。教科書は、子供たちに投げかけています。

新聞の投書らんには、わたしたちの日常生活にかかわりの深い話題が寄せられます。次に挙げる二つの投書は、どちらも片仮名の使われ方について述べていますが、大きく意見が異なっています。

大きく異なる二つの意見として紹介されているのが、次の二つの投書です(教科書では○付き番号で示されているが、機種依存文字のため、ここではA,Bで示す)。

A 映画館で、「シニア料金を頂きます。」と言われた祖父が、うれしそうにしていた。日本語で「老人特別料金」と言われるより、耳にここちよかったらしい。受ける感じももちろんだが、日常使っている言葉の中には、「ボランティア」「ポスター」「リサイクル」など、片仮名で言ったほうが分かりやすいものが数多くある。片仮名の言葉ぬきの生活は、もはや考えられない。(高校生・十七歳)

B コンピュータの説明書を開いてみて、あまりの分かりにくさにため息が出てきた。片仮名の言葉が多すぎるのだ。「ディスプレー」でなく、「画面」ではどうしていけないのか。「プリントアウト」より「印刷」のほうが文字数も少なくて済む。これだけコンピュータが行きわたっている今、説明書は、年代の別なく、だれにも通じなければ意味がないと思うのだが。(会社員・四十八歳)

この二つの投書は、教科書が言うように「大きく意見が異なって」いるのでしょうか。子供たちにも尋ねてみたところ、その意見は割れました。
二つの投書を紹介したあと、教科書は次のように書いています。

Aは、「片仮名の言葉は、受ける感じがいいし、分かりやすい。」という意見です。いっぽうBは、「片仮名の言葉が多すぎて、分かりにくい。」という意見です。

双方の意見を引用符付きで書いています。しかし、ここに大きな問題があります。それぞれの筆者は、そのようなことは言っていません。どちらの投書にも教科書が引用しているような文はないのです。教科書が引用符付きで示している文は、教科書側の乱暴な要約です。
Aの筆者が「受ける感じ」について述べているのは、「シニア料金」と「老人特別料金」という例についてです。また、「分かりやすい」という点についても、「ボランティア」「ポスター」「リサイクル」という三つの例を挙げ、「片仮名で言ったほうが分かりやすいものが数多くある」と言っているに過ぎません。決して、片仮名の言葉全般について述べているわけではないのです。
Bについても同様です。投書の筆者は、「説明書は、年代の別なく、だれにも通じなければ意味がない」と言っているのであって、片仮名のすべてが「分かりにくい」と言っているわけではありません。
つまり、AとBは教科書の言うように「大きく意見が異な」る投書ではないのです。

子供たちにも上の問題点について考えさせました。キーワードは「引用」です。子供たちには、正確に引用することの大切さを学んでほしかったのです。乱暴な要約は曲解につながります。

子供たちに次のA,Bを示し、「どちらが分かりやすいですか」と尋ねました。

A ボランティアやリサイクルに関するポスター募集のお知らせ
B 奉仕や再生利用に関する貼り紙募集のお知らせ

ほぼ全員が、「Aの方が分かりやすい」といいます。そして、おそらくは、Bの筆者もこれに異を唱えはしないと思われます。投書は「コンピュータの説明書」について述べたものであって、片仮名全般が分かりにくいといっているわけではないからです。
新聞の投書を取り上げて、子供たちに話し合わせたり、意見文を書かせたりするのであれば、相手の意見をきちんと引用した上で、自分の意見を述べなければなりません。そうした力をしっかりと身に付けさせたいと考えています。

■三連休です。陸上大会も近づいています。事故や体調不良に留意し、楽しい休みを過ごさせてください。
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