いじめに負けない

昨日は、悪天候の中、学習参観においで頂きましてありがとうございました。既にお伝えしていたとおり、授業のテーマは「いじめ」です。
「いじめ」をテーマとした授業のほとんどは、「いじめはよくない」「いじめはやめよう」という方向で行われています。もちろん、私もそれは必要なことだと考えています。しかし、今回の授業は敢えて逆の方向から攻めてみました。ねらいは、「いじめに負けない勇気をもとう」です。
子供たちに尋ねました。

この世から、地震をなくすことはできると思うか。
この世から、台風をなくすことはできると思うか。
この世から、雷(かみなり)をなくすことはできると思うか。

圧倒的多数の子供たちが「できない」と答えます。さらに問いました。

この世から、火事をなくすことはできると思うか。
この世から、犯罪をなくすことはできると思うか。
この世から、戦争をなくすことはできると思うか。
この世から、いじめをなくすことはできると思うか。

こんどは、人数が逆転します。「なくすことができる」という子供の方が多くなったのです。
お気付きのとおり、前者の三つは天災について、後者の四つは人災についての問いです。どうも、子供たちの多くは「天災はなくすことはできないが、人災はなくすことができる」と考えているようです。

では「できる」と言った人に聞いてみよう。未だかつて「火事」や「犯罪」をなくした国が一つでもあるか。一つも「戦争」がなかった年があったか。「いじめ」をなくした都道府県が一つでもあるか。

いずれも「否」です。

では、今日は「いじめ」について考えてみよう。これから二つのお話を配ります。どちらも実話です。

このように言って、配ったのが次の資料です。

<道子の話>
四年生の道子は、お家の人の仕事の都合で転校することになりました。今まで仲のよかった友達と、はなればなれになるのはつらかったけれど、新しい学校で新しい友達と出会えるのもちょっぴり楽しみな気がしていました。
引っ越しも無事に終わり、いよいよ明日から新しい学校での生活が始まります。
「どんな学校なのかな、みんなと仲良くなれるかな。」
その夜、道子はよく眠ることができませんでした。

翌日、教室に入った道子に、大勢の友達が話しかけてきてくれました。道子は、「これなら楽しくやれそうだな」と思いました。
ところが、楽しい日々が続いたのはわずかに一週間でした。みんなの道子に対する態度が変わり始めたのです。
「おまえの言葉、変だぞ。」
と笑われ、
「跳び箱も跳べないのかよ。」
とバカにされました。ときには、何もしていないのに、けられたり、たたかれたり、つねられたりすることもありました。
道子はくやしくてしかたありませんでした。でも、
「気にしないようにしよう、いつかみんなわかってくれる。まだ、わたしがこの学校に慣れていないからだ。」
道子はじっとがまんしました。

<正人の話>
正人は四年生の男の子。ちょっぴり太っています。そのことで、みんなからバカにされることがよくありました。
「デブ!」
「ブタ!」
そんな言葉を浴びせられると、何も言えなくなってしまいます。少しさびしそうにうつむいたまま、正人はいつもだまっていました。
学校の行き帰りには、いきなり後ろから頭をたたかれたり、けられたりしました。でも、そのときも正人はだまったままです。教室でたたかれることもしばしばでした。

ある日のことでした。昼休みに正人が自分の席にすわって本を読んでいると、典夫に声をかけられました。
「おい、正人!」
正人が返事をする間もないうちに、ほっぺたに強烈な痛みが走りました。典夫が思いっきりビンタをしたのです。もちろん、正人は何もしていません。
いつもなら、だまってしまう正人ですが、この日はちがいました。典夫をにらみつけたのです。
「何だよぅ、その目は。文句があるのか。」
典夫は、正人をにらみ返しながら言いました。
そのときです。
バチン!
教室にかわいた音が響きました。いきなり立ち上がった正人が、典夫のほっぺたを思い切りたたきかえしたのです。

双方とも「いじめ」を受けている話ですが、道子はがまんしているのに対し、正人はやり返しています。

道子と正人、どちらの行動が望ましいと考えますか。

(次号へ)