いじめに負けない(その2)

道子と正人、どちらの行動が望ましいと考えますか。

私は「道子」を選ぶ子供が多くなると予想していたのですが、さにあらず。子供たちの反応は次の通りでした。

「道子」・・・6名
○正人のようにやり返したら、またやられてしまう。
○やり返したら、いじめはもっとひどくなる。
○暴力的なことはよくない。
○がまんしていれば、きっと分かってくれる人が出てくる。

「正人」・・14名
○道子のように黙っていたら、いじめはもっとひどくなっていく。
○やられたら、やり返すべきだ。
○やった方にも、やられた気持ちを味わわせるべきだ。

友達の考えを聞いて、意見を変えた子供もいましたが、人数分布は変わりません。

一方は、「やり返したら、いじめはもっとひどくなる」と言い、もう一方は、「黙っていたら、いじめはもっとひどくなる」と言っています。まるで逆ことを言っていますね。
「実話ですから、続きがあります。」

このように言って、続きの資料を配りました。

<道子の話(つづき)>
いつの日か、道子が給食当番をやっても、だれも受け取ってくれなくなりました。そして、とうとう誰一人、道子と口をきいてくれなくなりました。
ひと月たち、ふた月たち・・・。遠足に行ったときも、道子は独りぼっちでした。
やがて、道子は学校へ行かなくなりました。家にいてもごはんも食べず、口もきかず、だまってどこかを見つめています。

<正人の話(つづき)>
たたきかえされた典夫は、片手でほっぺたをおさえ、立ちすくんだまま何も言えません。まわりのみんなも、驚いたようすで二人を見ています。まさか、正人がやりかえすとは誰も思っていなかったのでしょう。
典夫は、
「ごめん・・・。」
小さな声でそうつぶやくと、自分の席にもどっていきました。

子供たちは、驚きの声を漏らしています。たたみかけるように、言います。

実は「道子の話」は、絵本になっています。これです。

子供たちを教室中央に集め、『わたしのいもうと(松谷みよ子)』という絵本を読み聞かせました。
お話の最後で、「いもうと」は死んでしまいます。読み聞かせを聞く多くの子供たちの表情は、真剣そのものでした。

(黒板に図を書きながら)これは人の脳です。ここは難しい言葉で言うと脳幹という場所です。この部分は、ヘビにもあるので、ヘビの脳と言われています。呼吸など、生きていく上で絶対に必要な命令を司る部分です。ここは、旧皮質です。犬・猫の脳と言われています。感情を司る部分です。犬も感情をもっていますよね。喜んでしっぽを振ったりします。ここは新皮質です。人の脳です。知を司ります。この部分は、人にしかありません。
「いじめ」を受けると心が傷つきますよね。「いじめ」は脳に対する攻撃なのです。では、脳のどの部分が攻撃されるのでしょうか。実は、「いじめ」はヘビの脳に対する攻撃だと言われています。生きるために絶対に必要な部分が攻撃されるのです。だから、「いもうと」は食べ物も食べられなくなり、命を落としてしまいました。ですから、「いじめ」を受けたときには、絶対に黙っていてはいけません。正人のようにやり返すことがいいとは言わないけれども、お家の人に相談する、先生に相談する、友達に相談する、いろいろな方法がありますね。絶対にひとりで我慢していてはいけません。

野口芳宏という先生は、次のように言っていますが、私も賛成です。

そもそも「いじめ」の根絶は可能であろうか。私は、それは不可能であると考えている。それは善悪の問題ではなく、人間の避けがたい「業」であり人間が存在する限りついて回るものなのだ。無論「いじめ」を極力減らす努力はしていかなければならない。しかし、それだけに頼って解決を望むことでは甘すぎるのではないか。
この世に遂に「悪」がなくならないように、「いじめ」もまたなくならない。残念なことだがそれが現実である。そうであるならば、そういう現実の中でどのように「生きる力」を育てて行くべきなのか、そこのところの「強い」教育も必要なのだ。

昨日のFUTUREで、この授業に対する「ご意見・ご感想」をお願いしました。参観いただけなかった方も、授業の内容はほぼお分かりいただけたのではないかと思いますので、ぜひ、「ご意見・ご感想」をお寄せください。