視写の効用

 以前、連絡帳にこんなことを書いていただいたことがあります。

 毎日、子供たちに連絡帳を書かせてみてはいかがでしょうか。連絡事項も伝わるし、子供たちの「書く力」も伸びると思います。

 実は、私もずっとそうしたいなぁと思っていました。しかし、4,5月段階での子供たちの様子を見ていて、
「まだ、ちょっと無理だな。」
と感じていたのです。
 ひらがなの学習も終了していませんでした。まだ、ひらがなが全部読めない子供もいました。もう少し、後でも遅くはないと考え、これまで、連絡帳を書かせることは1,2回程度しかしませんでした。

 さて、昨日から子供たちに連絡帳を書かせています。
 ひらがなの学習も一通り終え、そろそろ、書かせてもいい頃かなと考えたからです。
 タイトルに「視写」という言葉を使いました。「視写」というのは、読んで字のごとく、「視て写すこと」を言います。
 子供たちには、私が黒板に書いた文を「視写」させて、連絡帳に書かせることにしました。
 子供たちにはこんなふうに話をしました。()内は子供の声です。

 みんなは、今、言葉を話せるよね。(うん。)
 どうやって、話せるようになったの?(勝手に覚えた!)
 そうか、勝手に覚えたのか。そうかもしれないね。でもね、今みんながお話しできるのは、みんなのお家の人が話をしているのを聞いて、真似をしているうちに、お話ができるようになったんだよ。
 言葉っていうのはね、そうやって真似をしながら覚えていくんだ。先生がこれから黒板に書くのをそっくりに真似をしながら連絡帳に書いてみてください。真似をしているうちに、みんなも文が書けるようになるからね。
 ただ、視写をするときは三つ約束があります。これを守ってくださいね。

 こんなふうに言って、三つの約束を黒板に書きました。

 はやく ただしく ていねいに

 そして、解説を加えました。

 あのね、「はやく」っていうのはどのくらいかというね、大体、先生が書き終わった頃に、みんなも書き終わるくらいの早さです。先生より、遅れちゃいけないよ。
 でもね、あんまり早く書きすぎて、間違いだらけになっちゃダメだね。先生が書いたとおり、「正しく」書くんだよ。
 それからね、読めないような不潔な字を書いたらダメだよ。「ていねいに」書いてください。

 かなり無理な注文です。それは承知の上です。承知の上で、あえて注文したのです。子供たちというのは、鍛えればかなりのことができるようになります。3か月くらい経つと、成果が表れてくるのではないかなと思っています。

 さて、「視写」には、次の四つの効用があると言われています。

1 文や、文章を視写することによって、より確かな、より豊かな理解をもつことができる。
2 視写を繰り返すことによって、自ら文章作法を学び、それを自分の表現力に生かすことができるようにする。
3 視写を繰り返すことによって、文字、文の書き方などの基礎となるものをそれとなく身に付けることができる。
4 視写の繰り返しによって、書くことに慣れ、筆速を早め、書くことを学習に生かすことができるようになる。

 2については、こんなエピソードもあります。
 「堀辰雄が、創作修行のために志賀直哉の短編をゆっくり筆写していると言うと、芥川は相槌を打って、自分も名作についてそういう試みをしてみようと思いながら、実行せずにいる、と言って堀の心がけに感心していた。」

 視写させるのは、単語の羅列ではなく、文の形を取ったものにしようと考えています。
 また、連絡帳を使うということで、
『親も教師も必ず毎日目を通す』
というメリットもあります。これまで以上に、連絡帳に目を通してやってください。

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