かさこじぞう(その2)

1 「おお、お気のどくにな。さぞつめたかろうのう。」
じいさまは、じぞうさまのおつむの雪をかきおとしました。

2 「こっちのじぞうさまは、ほうべたにしみをこさえて。それから、このじぞうさまはどうじゃ。はなからつららをさげてござらっしゃる。」
じいさまは、ぬれてつめたいじぞうさまの、かたやらせなやらをなでました。

3 「そうじゃ。このかさこをかぶってくだされ。」
じいさまは、売りもののかさをじぞうさまにかぶせると、風でとばぬよう、しっかりあごのところでむすんであげました。

4 「おらのでわりいが、こらえてくだされ。」
じいさまは、自分のつぎはぎの手ぬぐいをとると、いちばんしまいのじぞうさまにかぶせました。

上が子どもたちがあげてきた「じいさまのじぞうさまへのやさしさ」がわかる箇所でした。1から4までを全員で音読した後に尋ねました。

この中でみんなが「一番やさしい」と考えるのは何番ですか。

本来は1つに決められるような問題ではありません。しかしあえて問いました。上の4つの文章をもっと詳しく読み取るためにです。みなさんなら何番を選びますか。
子どもたちの答えは次の通りでした。
1が0名、2が0名、3が3名 4が圧倒的多数。
まず、3だと主張する子どもから理由を聞きました。
「『売りもののかさ』をじぞうさまにかぶせてやったから。」
と敦くんが発表しました。残りの2名も同じ理由です。
今度は4を主張する子どもに理由を発表してもらいました。
勇起くんが「自分のつぎはぎの手ぬぐいまでもじぞうさまにかぶせたから。」
だと言います。つけたしがありました。
「自分だって寒いのに、自分を犠牲にしてじぞうさまにかぶせてやったから。」
という意見です。
子どもたちの意見はほぼ私の予想どおりです。特にまちがった意見はありません。よく読み取っていると思います。ただし、子どもたちにはまだ見えていない(読めていない)部分があります。大切な言葉を見逃しているのです。
今の子どもたちは「あれども見えず」の状態です。さて、子どもたちに見えていない言葉とは何なのでしょうか。問いました。

4の文章の中で一番大切だと思う言葉はどれですか。

子どもたちは「自分のつぎはぎの手ぬぐい」だと言います。私は「もっと短く」と要求しました。すると「自分」だと言います。「自分のまでもじぞうさまにやったからだ」というわけです。
私は、

まちがいではありませんが、そんな言葉は1年生でも見つけられます。2年生はもっと別の言葉を見つけなければなりません。」

と挑発しました。
しかし、子どもたちには見つけられませんでした。そこで私が自分の考えを話しました。

「つぎはぎ」です。「つぎはぎ」ってどういう意味でしたか。

子どもたちは難語句の意味がプリントしてある紙を見て答えます。「破れてあながあいているところを別の布で直してある」

そうですね。じいさまは「たいそうびんぼう」なのです。「その日その日をやっとくらしている」ほどなのです。手ぬぐい一つ無駄にはできないのです。だから一つの手ぬぐいをつぎはぎして使っていたのです。そんな手ぬぐいをじぞうさまのためにかぶせてあげたのですよ。

子どもたちにはこの「つぎはぎ」という言葉が見えていなかったのです。この言葉が見えていると見えていないのとでは、やさしさの読み取りの深さがまったく違います。ほんとうは子どもに見つけてほしかったのですが、私が教えてしまった形になりました。

みんなは4の文章の中で大切な言葉を見逃していたね。もしからすると1から3の文章にもみんなに見えていない大切な言葉があるかもしれないよ。

と話し、読んでいくことにしました。

〜以下次号へ〜

back