『大造じいさんとガン』その8

『大造じいさんとガン』の学習もいよいよ最後です。

クライマックスはどこですか。

問題は前の日のうちに確認してありますので、授業が始まった時点ですでに子供たちは自分なりの考えをもっています。粗く言って次の4カ所が発表されました。理由つきで紹介します。

●大造じいさんは、ぐっとじゅうをかたに当て、残雪をねらいました。が、なんと思ったか、再びじゅうを下ろしてしまいました。(3場面)
・残雪を撃とうとしていた大造じいさんがここで撃つのをやめたから。
●残雪の目には、人間もハヤブサもありませんでした。ただ、救わねばならぬ仲間のすがたがあるだけでした。(3場面)
・命を懸けて仲間を救いに行った残雪を見て大造じいさんの心は変わったと思うから。
●大造じいさんは、強く心をうたれて、ただの鳥に対しているような気がしませんでした。(3場面)
・ここで残雪に強く心をうたれて大造じいさんの心は変わったから。
●おうい、ガンの英雄よ。お前みたいなえらぶつを、おれは、ひきょうなやり方でやっつけたかあないぞ。(4場面)
・ここで「ひきょうなやり方でやっつけたかあない」と言っているから。

おかしい考えはありますか。

「『4場面』をクライマックスと考えるのはおかしいと思います。なぜなら4場面ではすでに大造じいさんの残雪に対する考えは変わっているからです。だから、『ガンの英雄よ』と言っているのではないですか。」
この意見で『4場面』と考えていた子供は納得しました。1つ消えます。
「『残雪の目には、人間もハヤブサもありませんでした。』はおかしいと思います。これは残雪のことを言っているのであって、大造じいさんの心の中は書かれていないからです。」
この意見に反論できる子供もいませんでした。また1つ消えます。
ここまでの展開は私も予想していました。しかしここからが難しかったのです。残った選択肢は2つです。

A 大造じいさんは、ぐっとじゅうをかたに当て、残雪をねらいました。が、なんと思ったか、再びじゅうを下ろしてしまいました。(3場面)
B 大造じいさんは、強く心をうたれて、ただの鳥に対しているような気がしませんでした。(3場面)

この段階ではAを選ぶ子供が三分の二、Bを選ぶ子供が三分の一ほどでした。
「Bは違うと思います。Aのところで銃を下ろしたということは、もう大造じいさんの考えは変わったということじゃないですか。」
「それはそうかもしれないけれど・・・。Bで強く心をうたれたのだから、やっぱりBじゃないかと思います。」
「Aの大造じいさんの変化は『撃とう』から『やめた』という対比でしょう。Bは『ただの鳥』から『ただの鳥じゃない』という対比だからBの対比の方が重要だと思います。」

ここでしばらく沈黙が訪れました。難しいのです。子供たちも迷っているのです。決めかねているのです。私が出ました。

AでもBでも大造じいさんの心は変化しています。それは確かです。問題なのはどちらの変化がこの物語にとって重要かということです。
Aは『ハヤブサVS残雪の戦い』による変化ですね。Bは『傷ついた残雪の堂々たる態度』による変化です。さあ、どちらの変化が重要なのでしょうか。重要な方がクライマックスです。

「やっぱりBだと思います。Aのところでは確かに銃を下ろしたけれど、まだ残雪を『ただの鳥じゃない』とか『英雄』だとかは考えていないと思います。残雪が突然表れて、驚いて様子を見ようとして銃を下ろしたのだと思います。」
「私もそう思います。大造じいさんが銃を下ろしたときには残雪はただ表れただけでまだハヤブサと戦ってはいません。だから、ここで大きく考えが変わるはずはないと思います。」
「私もやっぱりBだと思います。Bのところには『強く心をうたれて、ただの鳥に対しているような気がしませんでした。』と書いてあるけれど、Aのところには『が、なんと思ったか』としか書いてありません。話者にも大造じいさんの心の中がわかっていないのだから、ここはクライマックスではないと思います。」

もう一度AかBか確認してみました。すると全員の考えがBに一致しました。こんなに一致するとは思っていなかったのですが、よほど上の意見が強力だったのでしょう。
最後に全員に「学習のまとめ」として自分の考えを文章にまとめてもらいました。次号で紹介します。

back