悪文を達意の文に

次の文があります。

なぜなら私はクライマックスは、登場人物の心の大きな変化だから、大造じいさんがこのことがある前は、ただの鳥とか、ただりこうだけの鳥と考えていたのが、このことがあって、ただの鳥じゃない人間なみの鳥とわかって心の大きな変化だからだ。

私は「が、なんと思ったか・・・」がちがうと思うのは、おとりのガンをなぜ残雪は助けるんだと思ってじゅうを下ろしたんだと思った。

少し前に『大造じいさんとガンのクライマックス』というテーマで子供が書いた文章の一部です。一読してわかる通り悪文です。独りよがりの文になっています。(もっと厳しく言うならば文の形をなしていません。)読み手に意味が伝わらないのです。考えたこと思ったことを頭に浮かんだ順番に書き連ねるとこのような文になってしまいます。文の構造を意識していないのです。
文の骨格は『主語と述語』です。このことを頭に入れているだけでもずいぶんと文は分かりやすくなります。
火曜日にこんな学習をしてみました。きちんとした文を書いてもらうためです。
私が黒板に書きます。

私は小林が中村が鈴木が死んだ現場にいたと言ったのかと思った。

全員に音読させました。子供たちは笑っています。「なんじゃこりゃ?」という顔です。

意味を考えながらノートに視写しなさい。

こう言ったのですが、意味が分かった子供は一人もいません。(みなさんはお分かりになりますか?)まあ当然かもしれません。さらに続けました。

非常に意味が分かりにくいですね。こういう文を悪文と言います。ただこの文は悪文ではありますが、日本語としては間違っていません。なんとか意味を解読してごらん。ヒントを出します。「主語と述語」です。

このヒントでも「何となくわかったような気がする」という子供がわずか2、3名、遺りの大多数の子供はまださっぱりわからないようです。

さらにヒントを出します。

「思った」のは誰ですか。「言った」のは誰ですか。「いた」のは誰ですか。「死んだ」のは誰ですか。それぞれ主語と述語を対応させればいいのです。

一つの文の中にいくつもの主部と述部があるから分かりづらいのです。それぞれの主部に対応する述部を色分けして四角で囲んでいきました。残念ながらこの通信はカラーではありませんので次に示します。

「思った」→「私」
「言った」→「小林」
「いた」→「中村」
「死んだ」→「鈴木」

ここまでやってやっと「そうか。」という声が聞こえてきました。
そこで次の指示を出しました。

言葉の順番だけを入れ替えてもう少し意味の分かりやすい文に直しなさい。言葉の順番だけを入れ替えるのですよ。

できた子供には手を挙げさせ、私がノートを見に行きました。3分の1くらいの子供ができたでしょうか。残りの子供はお手上げです。そこでもう少しヒントを出しました。

この文は悪文である一番の原因は主語と述語が離れすぎていることです。それぞれの主語と述語がくっつくように順番を入れ替えてごらんなさい。

このヒントで3分の2くらいの子供が正解しました。次のようになります。

鈴木が死んだ現場に中村がいたと小林が言ったと私は思った。

これでさっきよりはずいぶんと意味が分かりやすくなりました。とは言ってもまだ悪文であることに違いはありません。そこでさらに問いを出します。

この文は一文の中にいくつものことが書かれているから分かりづらいのです。文を区切ってもっと分かりやすくしてごらんなさい。一分をいくつかの文に分けて書くのです。

残念ながらここでチャイム。上の問いは宿題となりました。さらに冒頭に紹介した2つの文もプリンとして配り、分かりやすく直してくることも宿題に加えました。子供たちは2つの文の分かりにくさに驚き、「こんな文書いたのは誰だ?」などと書いた本人が言っていました。もちろん本人の名誉のために私は黙っていましたが・・・。

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