『赤い実はじけた』

6年生国語の最初の学習は『赤い実はじけた』という物語文教材です。主人公である女の子が同級生の男の子に淡い恋心を抱くという、教科書の中にはこれまでなかなかなかった種類の物語です。作者は名木田恵子さん。聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。マンガやテレビアニメで一昔前有名になった『キャンディキャンディ』の作者です。子供たちも、一読後、「少女漫画の世界だ」などと話していました。みなさんもご一読下さい。

さて、1時間を使って音読練習した後、内容の学習に入っていきます。(1つの学習が終わるまでに10回の音読が目標です。1回音読するごとに教科書の題の横に印が付けられますので音読回数は一目瞭然です。ご家庭でも「うるさい」などといわず、聞いてやって下さい。台所仕事などなさりながらでも結構ですので。)
子供たちに最初に考えてもらったのは「題」です。
問います。

『赤い実はじけた』この物語の題はどんな題でしょう。

「どんな題でしょう」と聞かれても普通は困るでしょうが、「題」について検討するのはこれまでも物語文を学習するときにはやってきていることですので、子供たちも慣れてきています。物語の題はおよそ次の3種類があるのです。

(1) 登場人物の名前が題になっているもの
(2) 物語のクライマックスが題になっているもの
(3) 題が何かを象徴しているもの

子供たちの答えは2つに分かれます。当然、(1)だと考える子供はいません。(2)と(3)です。それぞれ理由を主張してきます。
「私はクライマックスに関係する題だと思います。綾子の赤い実がはじけたところがこの物語のクライマックスだと思うからです。」
「ぼくは何かを象徴している題だと思います。綾子の胸の中に本当に赤い実があるはずはないでしょう。ということは、何か裏の意味がかくされているんだと思います。」
この後、同じような意見がいくつか出されましたが、それ以上は討論させず、私の方で次のように説明しました。

この『赤い実はじけた』という題は実はクライマックスにかかわる題でもあり、何かを象徴している題でもあるのです。両方正解です。このような題もあるということを知っておきましょう。

続いて問います。

では、この物語のクライマックスはどこでしょう。教科書に線を引きなさい。

我がクラスでは、クライマックスを次のように定義しています。
「主人公の心が最も大きく変化したところ」
予想した通り、ほとんどの子供が同じような場面をクライマックスと考えていました。ただ、厳密に言うと、2箇所に分かれています。

「くわしいのね。」
魚を受け取り、代金をはらいながら、綾子は初めて哲夫を正面から見た。
「おれ、魚好きだからな。」
哲夫の目はきらきら光っている。
「食っちゃうなんてかわいそうな気もするけど、どうせなら、おれはこんなにうまいんだぞって、魚にいばらせてやれるような、日本一の魚屋になりたいんだ。」
そのときだ(A)。綾子の胸が急に苦しくなってきて、特大のパチンが来たのはー。
綾子は胸元をおさえると(B)、さよならも言わずにかけだしていた。

Aを選んだ子供が大多数で残り7名ほどがBの部分に線を引いていました。
Bを選んだ子供が話し始めます。
「ぼくはBだと思います。『パチンと来た』ところがクライマックスでしょう。パチンと来たのは、胸が急に苦しくなった後だから、Bがクライマックスです。」
Aの子供が反論します。
「『そのときだ。』というのは、哲夫の言葉を聞いたときということだから、Aだと思います。」
「賛成です。『そのときだ。綾子の胸が急に苦しくなってきて、特大のパチンが来たのはー。』というのは綾子の心の中を説明しているだけのことだから、やっぱりAのところではないですか。」
Bの子供も黙ってはいません。
「もし、綾子の心の中を説明しているだけの文だというなら、そこの部分をなくするとします。そうすると、Bでもいいことになるんじゃないですか。」
私も、こんな考えは予想もしていませんでした。実に鋭い意見です。さらにBを主張する子供が続けます。
「パチンと来たのは、哲夫の言葉を聞いてすぐではなくて、胸が苦しくなってきてからのことだから、Bがクライマックスです。」
この意見もお見事と言うしかありません。確かにその通りです。問いを出した時点で私はAを正答と考えていたのですが、この意見は説得力抜群です。哲夫の言葉を聞いてから、綾子にパチンが来るまでは時間的経過があるのです。恥ずかしながら私はそこまで読めていませんでした。子供たちの方が一枚上手です。Aの子供もかなり納得していました。
この問いに関する話し合いはもっとあっさり決着がつくと思っていたのですが、一人芝居も飛び出すなど、かなりの盛り上がりを見せました。
最後に問います。

ここで綾子の心が大きく変わったのですね。では、このクライマックスの前後でどのように変わっているのですか。その対比を次の時間は発表してもらいます。

もう発表の準備ができている子供もいるようです。楽しみに待ちたいと思います。

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