『赤い実はじけた』(その4)

前号で予告した通り、子供たちが綾子の立場になって書いた『千代への手紙』を紹介します。綾子は子供たちと同じ年頃の女の子ですから、男子にはちょっと難しい課題だったかもしれません。まあ、自分の恋を実らせるために乙女心を考察してみるのもいい体験でしょう・・・?

明美
私も赤い実がはじけたよ。私、哲夫と話をしていたら赤い実が突然はじけたの。その音を哲夫に聞かれたような気がして、さよならも言わずにかけだしちゃったんだ。それで洗面所の鏡を見たの。私は顔中が真っ赤に染まったような気がしたのに、なぜか私のほほはピンク色になっていたんだよ。どうしてかな?千代ちゃんは赤い実がはじけて鏡を見たとき、ほほは何色だったの?赤い実はいつ大きくなってはじけるんだろう?
去年、千代ちゃんといっしょに話をしたら千代ちゃん、話しかけにくいほど大人っぽくなっていたよ。赤い実がはじけるとしゃべり方とか大人っぽくなるのかな?じゃあ私も大人っぽくなったのかな?


千代、ついに赤い実はじけたよ。ほんとに地震みたいに来るんだね。
それが岡本哲夫っていう一年生から同じクラスだった人なの。赤い実って恋心のことだったんだ。
哲夫は魚屋なの。お刺身を買いにいって、哲夫がお店へ出ているわけでもないと思ってい行ったら哲夫がいたの。わたし逃げ出しそうになった。けれどお刺身を買わなきゃと思ってやっと小声で言ったの。それでタイとマグロをたのんだら、いいことにアジのたたきも入れてくれたの。あのアジのたたき、哲夫が作ったんだって。
で、わたし、いい人だな〜と思っていたら、魚のことを話しだしたから、くわしいな〜と思ったの。それで自分の夢を話しだしたの。
それが日本一の魚屋になって、魚をいばらせてやるって言ってるの。それから急に苦しくなってきて特大のパチンが来たの。わたし胸元をおさえるとさよならも言わずに行ってしまったの。いい忘れてたけど、その魚屋が魚心っていうの。
で、お父さんが喜んでくれたの。その後、私の声が大きくなっているのを感じたの。
わたし、あのとき急にかけだしたりして変に思われなかっただろうかと心配したけど、翌朝、哲夫のさわやかな大声に吹き飛ばされてよかった。ということでわたしも赤い実はじけたの。

奈央子
千代、元気?あのねぇ、私も赤い実がはじけたよ。その相手は岡本哲夫君ていうんだ。哲夫君はもう一人前の魚屋さんでアジのたたきを作ったんだって!それを食べたお父さんは、うまい!って言ったんだ。すごいよねぇ。
哲夫君は、苦手なタイプの男の子なんだ。何かこわくて六年生になっても引きずっているのかな・・・?
私は最初に赤い実がはじけて、何で哲夫なのー!って思ったの。ほんとに千代の言ったとおり、突然来たよ。ほんとにビックリしたぁ。
でもね、千代も和夫君を忘れなことがないっていうのは私も哲夫君を見るのがこわいのと同じことだと思うよ。だから、千代は和夫君を好きで、私は哲夫君が好きってことだよ。でも信じがたいよねー。
ねえ、今度の夏は一夫君にあってみたいなー。今度会わせてね。
それじゃあね。お返事下さい。


お元気ですか。この前言っていた赤い実がはじけました。岡本哲夫って男の子の前でです。なぜかパチンとなった後、哲夫君がいるとドキドキします。なぜですか。
赤い実の意味がやっとわかりました。ちょっとはずかしい。
わたしはパチンが来たとき、考えました。苦手ってことではなく、ちがうことだと。赤い実がなったのはそのころだと思うんです。
赤い実はまたなるんでしょうか。では、さようなら。

明日から、いよいよゴールデンウィークが始まります。とりあえずは二連休ですが、事故なく楽しい休みにして下さい。ふだんできないことを思いっきりやりましょう!

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