『石うすの歌』(その2)設定を検討する

『石うすの歌』、お読みになったでしょうか。
物語文を読むとき、まずその物語の設定を把握することが大切です。特に『石うすの歌』のような長い物語を学習するときには設定を把握しておくことは不可欠と言ってもよいでしょう。
では、「設定」とは具体的に何か。「時」「所」「人」です。もっと細かく考えなければならないこともあるでしょうが、この3つが「設定」を把握するために最低限必要です。4年生の頃から学習してきていることです。
問います。

いつの物語ですか。

ほぼ全員の子供たちは「戦争中です。」と答えてきます。これは読めば誰でも分かることです。

昭和何年のことでしょう。

まだそこまで歴史を学習していない子供たちには難しい問いではありますが、知っている子は知っています。
「広島に原爆が落ちた年だから、昭和20年です。」
教室に掲示してある歴史年表を見ながら「1945年」と答えてきた子供もいました。
さらに問います。

何日間のお話でしょう。はっきりと何日と特定することはできませんが、「最低何日間」ということはできます。最低でも何日間のお話でしょう。数字をノートに書きなさい。

「7日間」「10日間」「12日間」「それ以上」
ここから子供たちの話し合いです。明らかに違うものは当然のごとくつぶされます。
「7日間というのは絶対違います。2場面に『八月三日に瑞枝が来た』ということは書いてあります。3場面には『もうあしたはおぼんの十三日。』と書いてあります。最低でも10日間はあるはずです。」
「瑞枝たちが来た八月三日以前のことも書いてあるのだから、10日以上だと思います。」
「1場面に『八月に入ると、あっちのうちでも・・・』と書いてあります。八月に入るというのは八月一日のことだから、12日間の物語だと思います。」
「58ページに『八月になったら、すぐ出発するという知らせだったのに』と書いてあるから、七月中のこともあるんじゃないですか。」
ここまで読めれば十分ですし、これ以上は話し合っても無意味です。最低でも12日間以上の物語であることを確認して次に移ります。

登場人物は誰ですか。

ほとんどの子供たちが「千枝子」「瑞枝」「おばあさん」「お母さん」「おばさん」「おじさん」という解答です。「石うす」を登場人物と考えている子供はいませんでした。

場所はどこですか。

これはなかなかおもしろい問題となりました。本文中には、瑞枝一家が広島から疎開してきたということは書かれていますが、千枝子の家がどこにあるのかまでは書かれていません。絶対にここと決めることはできませんが、本文から推理することはできるはずです。本文と地図帳から子供たちは推理してきます。話し合っている中で「なんか、推理小説を読んでいるみたい。」という声も聞こえてきました。
ああでもない、こうでもないといろいろな話し合いがなされました。話し合いの後の最終的な子供たちの推理は次の通りです。

「瑞枝たちは広島から船で千枝子の家に来ています。それは八月三日です。3場面の最初に『二晩とまっておばさんは、おぼんを待たず広島へ帰りました。出発の日の夕方、千枝子と瑞枝と三人でお墓参りをしました。』と書かれているから、おばさんは八月五日の夕方までは千枝子の家にいたはずです。64ページには『おばさんが広島のお家へ帰り着かれたのは、八月六日の早朝のはずでした。』と書かれています。ということは、千枝子の家は広島から船で一晩くらいのところだということが分かります。地図帳を見ると瀬戸内海にはたくさん島があります。きっとこの島の中のどこかだと思います。」

私が話します。

そうですね。きっと広島から船で一晩かかる瀬戸内海の島のどこかでしょう。参考のために言っておきますが、実は作者の壷井栄さんは小豆島の出身です。

作者が小豆島の生まれだからといって、この物語の場所が小豆島であると決めつけることはできません。しかし、本文の叙述と作者の出身地は、この物語が展開されている場所が瀬戸内の島のどこかであると推測するには十分な根拠となります。

次の時間からは物語の内容に深く入っていくことになります。

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