『やまなし』子供たちの評論文

これまで学習してきたことをもとに、『やまなし』に出てくる言葉の象徴性と題『やまなし』について自分の考えをまとめなさい。

私の指示によって子供たちは原稿用紙に向かい始めました。鉛筆が走る音とノートや教科書をめくる音だけが聞こえてきます。これだけ真剣に原稿用紙に向かう子供たちを初めて見ました。
子供たちの書いた枚数は平均して4枚ほどでしょうか。授業中、発言できなかった子供もしっかりと自分の考えをまとめています。
宮沢賢治の作品『やまなし』に対する子供たちの全力の解釈です。是非、お読み下さい。

裕樹
言葉の象徴性について検討する。
まず『クラムボン』は何を象徴しているのか。
ぼくは妹のトシを象徴していると考える。これから理由を二つ言う。
理由1
P4〜P5では、クラムボンは笑っている。そして、『永訣の朝』の中でも妹のトシは宮沢賢治をはげまそうとしている。トシは兄をいつもよりいっそう明るくするために笑っていた。P5では『なぜクラムボンは笑ったの』『知らない』という文がある。これは宮沢賢治自身の心の中で、なぜ妹は笑っているのかということなのではないだろうか。
理由2
P6では『クラムボンは死んだよ。』とか『クラムボンは殺されたよ』という文がある。これと妹トシの死は関係があると考え、表にまとめてみた。

クラムボン笑い トシ笑い
クラムボン死 トシ死
魚に殺された 病気に殺された

この表からいくと魚にも関係がある。
『魚』は何を象徴しているのか。
ぼくは魚は賢治自身だと考える。なぜならP8〜P9に『お魚はなぜああ行ったり来たりするの』と書いてあるし、P8には『取ってるんだよ』と書いてあるからだ。『永訣の朝』に妹のトシが『あめゆじゆとてちてけんじや』と言っている。この言葉を聞いて宮沢賢治は外に出て一つの椀に雪を入れ何度も行き来しているから魚は賢治自身だと考える。

次に五月でも重要な『かわせみ』は何を象徴しているのかを考える。
『かわせみ』は病気を象徴しているのではないだろうか。これから理由を言う。
かわせみは川の生き物にとってこわい生物だ。なぜなら魚を食べたのはかわせみだ。そしてかにの子供たちも恐れている。ということは、かわせみの象徴していることは人間にも害を与えるようなことではないだろうか。となると、妹のトシを苦しめた病気なのではないだろうか。

次に十二月。『イサド』は何を象徴しているのか。というのは置いておいて、『やまなし』は何を象徴しているのか。
ぼくは、やまなしというのは『永訣の朝』で妹のトシが何度も口にした『あめゆじゆとてちてけんじや』だと考える。
なぜなら、『永訣の朝』で一番妹が言いたかった言葉は『あめゆじゆとてちてけんじや』だ。『やまなし』で一番重要な言葉はやまなしだ。だとすると、『あめゆじゆとてちてけんじや』とやまなしはイコールで結ばれるのではないだろうか。
『永訣の朝』の最後に『どうかこれが兜率の天の食に変つて』という文がある。『あめゆじゆとてちてけんじや』はこの『兜率の天の食』のことではないだろうか。
すると『イサド』とは何を象徴しているのかも読めてくる。
『やまなし』が『兜率の天の食』だとしたら、『イサド』は『兜率の天』なのではないだろうか。
かにの子供らにとってはイサドはとてもいいところに見える。そして妹のトシも死んだら天国へ行くことを望んでいると考える。だから『イサド』は『兜率の天』とする。

最後になぜ作者は『やまなし』という題をつけたのか。
作者は妹の死で一番印象に残っていることは『あめゆじゆとてちてけんじや』だと考える。妹のトシは何度もこの言葉を口ずさんでいる。だから、作者にも一番印象に残っているのではないかと考える。そして『あめゆじゆとてちてけんじや』とイコールで結ばれている『やまなし』を題にしたと考える。

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