・・・巣立ちの日・・・

巣立ちの時が来た。
今日を限りに、6年4組渋谷学級のすべての者はこの教室を去る。もう二度と君たちと私が生活を共にすることはない。

毎日座っていた椅子。教科書をひろげた机。落書きでいっぱいにした黒板。お互いの考えをぶつけ合った授業。けんかして涙を流したあの日。教室を笑いでいっぱいにしたあの時。
すべては過ぎ去ってしまったのだ。
再び君たちに教えることはない。

不器用な子供たちだった。しかし素直な子供たちだった。そして優しい子供たちだった。そんな君たちが一人残らず、私は大好きだった。私に内緒で寄せ書きしてくれた色紙。本当に、本当に嬉しかった。

『WISDOM』とは「知恵」のことである。「知識」ではない。「情報」でもない。
「知識」や「情報」を得たければ本を読めばよい。テレビを見ればよい。数年後にはインターネットが当たり前の時代になろう。
しかし「知恵」はそのようなものからからは得られない。脳から汗が出るほど考え抜き、手足が折れるほど働き抜く。そんな自分自身の体験からしか生み出し得ないものなのだ。
「知識」や「情報」の量では人はコンピュータに勝てない。しかし「知恵」は人からしか生まれないのだ。
だからこそ私は君たちに言い続けてきた。
「自分の頭で考えろ!」

私が望んだ6年4組とは、弱いものがつるんでいる集団ではない。何も考えずに人にくっついていく人間の集まりでもない。自分一人で困難に立ち向かうことのできる、たった一人で集団と戦える、そうした強さを持った人間のあつまりなのだ。

これから先の人生は長い。落ち込むこともあるだろう。
「オレってダメだなぁ・・・。」
「私ってどうしてこうなんだろう・・・。」
こう感じたとき、それはチャンスである。
自分の弱さを自覚できたからである。自分の弱さを確認したときから成長が始まるのだ。それが『プラス発想』である。
苦境に立たされたとき、どうにもならない状況に追い込まれたとき、どれだけプラス発想ができるか。それが勝負である。

恭平 翔 孝典 裕樹 威宏 孝明 巧 充 勇生 正人 稔 直也 明 正志
輝成 高志
愛子 薫 奈央子 千紘 雅美 舞子 小百美 妙子 薫子 紗可 美香 智子 かすみ
聖子 恵 明美 裕加

33名の子供たちよ。いよいよ別れの時が来た。
前を向いて進め。過ぎ去った日々など忘れるほどの、輝く未来をつくって行け!

1996年3月22日
ここに6年4組、渋谷学級のすべてを終わる・・・。
さようなら

保護者の皆様、力及ばざる所はお許し下さい。あれがあの時点での渋谷の限界でした。全面的なご支援とご協力、本当に感謝しております。ありがとうございました。
本日確かに、大切な大切なお子さまをお返しいたします。

6年4組担任 渋谷 徹

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