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  第50回沼津大会 総会決議


 名勝・奈良公園内の高級ホテル建設工事強行に抗議するとともに、
                              その中止を求める決議


 開設140年目を迎える奈良公園は、国の名勝に指定され、歴史的風土特別保存地区、世界遺産「古都奈良の文化財」のバッファゾーン(緩衝地帯)にも指定された、緑豊かな歴史公園です。東大寺・興福寺・春日大社をはじめとする文化遺産に徒歩圏内で訪れることができ、国内外からの多くの観光客を集めています。また、誰もが自由に出入りできて、散策を楽しめる空間でもあり、県民・市民にも広く愛されている公園です。鹿とふれあい、文化遺産や景観を楽しむことができるように様々な規制がかけられている奈良公園の一角に今、高級ホテルやレストランの建設が計画されています。
 予定されている吉城園地区には、近代和風建築として県知事公舎など明治から昭和初期にかけて建設された建物が公園と一体化して、奈良らしいたたずまいが残されています。高畑地区は、興福寺の子院の跡地に実業家の別荘が建てられたり裁判所官舎が建てられたりしたあと放置されていた土地です。どちらも、これまでの法規制で開発が厳しく規制されてきました。しかし、奈良県は、当該地を突然、奈良公園に編入し、都市公園法に基づく「便益施設」という名目で、民間の高級ホテルの誘致・建設を計画しました。
 奈良公園はその魅力を維持するために、幾重にも規制の網がかかり、行政はこの規制を守り、周辺住民もこの規制を受け入れてきました。その結果、奈良公園は今日まで良好な環境・景観を維持し、奈良県民のかけがえのない財産として受け継がれてきました。
 ところが、奈良県はこうした厳しい規制を守る立場にありながら、これまで自ら守ってきた規制を変更し、強引な法の解釈で高級ホテルを建設しようとしています。また、文化庁もこうした現状変更を許可し、文化遺産と歴史的景観を守るべき役割を放棄しています。
 奈良の魅力が凝縮された名勝・奈良公園に特定の人々のみが利用できる一画を設けることは、公園設置の趣旨にも反することです。
 高畑地区では、2018年12月、地元住民56名による高級ホテル建設差し止め訴訟が奈良地方裁判所に提訴されました。しかし、奈良県は2019年2月、地元住民が抗議する中、建設工事に入り、以後着々と工事を進めています。少なくとも、ホテル建設差し止め訴訟が結審するまでは、工事に入るべきではありません。
 私たちは、奈良県に対し、名勝・奈良公園内での高級ホテル建設工事強行に強く抗議するとともに、あらためてその中止を求め、文化庁に対しては、現状変更許可を取り消すよう求めるものです。
 以上、決議します。
 
     2019年6月14日
                             文化財保存全国協議会 第50回沼津大会総会



 本総会決議は、7月2日付で文化庁長官、奈良県知事、奈良市長・教育長あてに送付しました。
                         

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