●森博嗣助教授の特別講義●
『ミステリィと流体力学』
99年3月22日
<新宿駅南口・紀伊國屋サザンシアター>



*****************************************

レポートというよりは
非常に主観的な、感想をアップしましょう。


●『講演会レポート』という名の感想●


●待ちに待った講演会の日がやってきました。当日は午後から私のHPの掲示板の常連さんたちと『新宿ジョイポリス』で遊び、その足でまっすぐ、隣のビルにある『サザンシアター』へ向かいました。サザンシアターは紀伊國屋の上にある演劇などもできるホールで、隣のタカシマヤと繋がっている新しいビルです。5時前に会場へ向かうと、既に渡り廊下のような部分に列ができていました(写真を見るとその渡り廊下のようなものがわかります)。「まあ、顔は別に近くで見られなくてもいいよね」などと、同行の桜生青さんと話していたくせに、いざ会場に入ってみると、案外前の方が空いていて、勝手にスタスタ前の方の席を取る私。落ち着いた感じの良いホールです。

●さて配布されたものは『森ドリル7』〜森先生の後輩のをかへまさん作成の、公認ファンクラブイベントで毎度配られる小雑誌〜と、『森ぱふぇ入会方法の栞』〜をかへまさん作成の漫画による入会案内〜、そして、森ぱふぇ初のグッズとして製作された森先生によるカラーイラストの栞〜の三点でした。栞については、製作段階から関わったので、感慨深いものがあります。それにとても綺麗な仕上がりで満足。それらを見ているうちに開演時間となり、妙な沈黙と緊張につつまれる中、唐木さんがステージに登場されました。

●ひとしきり出版物の宣伝が終り、早速先生の登場です。いつものように全く緊張の色は見られず、にこやか。服は黒系のカールヘルムでした。後ろの看板のフォントを誉めたあと、既に一部にはお馴染みの『森』という字にまつわる話をされました。考えてみれば今回初めて先生の話を聞く、HPも見たことがない、という人が会場の数十%を占めているワケです。そのような方には新鮮で、聞き慣れた方には「ふふ・・知ってるよ」という優越感のようなものがあったかもしれません。

●OHPで写しだされた『本日話す予定のテーマ』は次の通りでした。

 (1)レオロジィ(性質変化を時間的にみる)

 (2)リアリティ

 (3)ABS

 (4)混沌

 (5)情報

 (6)不思議



*****************************************

(1)レオロジィ

 ロウでできた天使の人形が、長い時間をかけておじきするかのように変化したという話をされました。
 一時期私は「地球上に存在するもので、変化しないものなど存在するのだろうか。一見変化しないように見えても、長い時間で見ると変化しているのでは」と考えたことがあったので、興味深い話でした(のっけから)。
 時間の尺度というものは、基本的に人間の尺度なので、一見変化してないように見えるものも徐々に変化していると私は考えます。また、一見強く見えるものでも、脆かったりします。ガラスなどは硬いですが、一点に力を加えると、案外簡単にくだけたりするものです。逆にやわらかい物の方が力に対しては強かったりします。こういったあらゆる物質の現象を、私は「人間の性質」に置き換えてしまう辺が理系ではないですが(理系と表現するあたり、既に文系)、これについては話すと講演会の内容からそれてしまうので、このへんで切り上げましょう(笑)。

 他に検索ヒットランキングをOHPで映して説明。コンクリートという言葉がいかに使われているか(『夏目漱石』のおよそ12倍です)、またコンクリートに人は沈まないという話、水が多いと固まるという話などの合間に、さりげに、コンクリートに人が沈んでいるような描写をされていたミステリィ小説を読んで「間違っている」と思われた話をされてました。その作品の名前を隠そうともせずに口にしたり、話がいろいろな方向に飛んでは、最後に綺麗に収まるあたりは、相変わらずという感じであります。しかし、私も「相変わらず」などと思う程、先生の講演を聞いてるわけではないのですが、これは、「森先生ってこういう人だったのか!」というよりも「森先生ってこういう人だよね」という気持ちの方が、話を聞いていて強いのでしょう。しかし、その「こういう人」は、あくまでも作家としてサービスモードで見せる一面にすぎないのでありましょうが。

 また、作品についての裏話などをされたり(『すべてがFになる』が一冊目になったことで、伏線の効果が薄れてしまったこととか)、助教授と教授の収入の違いなどまで話は飛びました(笑)。あとは、今日の講演会の為に、昨年の講演会のレポート(ファンが自分のHPで公開されてるもの)を見てから来た、という話をしてしまうあたりも、なんとも微笑ましい気持ちにさせます。

(2)リアリティ

 これについては『金田一少年』の話が結構あったでしょうか(笑)。人格が変、いつも恋人の恨みで殺人をおかす、等など言いたい放題。

 また、思考の早さについても話されてました。これはたとえば「一体犯人は誰だろう」という言葉を、人は言葉にするより先に思考する、と言ったことです。いちいちそれを小説で文章にしてしまうと、本当はリアリティからは遠いことになります。

 ところで、リアリティとは何でしょうか。現実をいかに現実らしく書くか、ということでしょうか。本当のリアリティとは、むしろ現実ではない世界にいかに現実感を与えるか、といったことなのではないかと思います。読者にリアリティを感じさせられる小説は、すぐれたトリックと同じくらいの価値を持っているのではないでしょうか。そして心を打つものは、トリックではなく、リアリティの中にあると私は思うのですが・・。だから『名探偵コナン』で首の後ろに針がささって何度も記憶を失おうが、妙な機械で声が変換されようが、それに文句をつける読者はいないのでしょう。たぶん別のところにリアリティがしっかり存在するのです(笑)。

*****************************************

(3)ABS

 森先生の創作上での秘技(というのか/笑)がABSに例えられてました。ABSとはもう随分普及したので知ってる人が多いでしょうけど(私が車に乗っていた5年くらい前は、まだABSの車は珍しかったのです)、ブレーキをかける時に、強くかけすぎるとタイヤの回転自体がストップしてしまって、ロックされたまま滑ってしまう状態を防ぐために、自動的に細かなブレーキをきかせて、ゆるめてしめての繰り返しの末に止まるようにするシステムです。札幌などの雪道(というか、凍結路)などでブレーキを踏み込むとこの状態によくなるのです。 

 ミステリィの落ちについて、ABSのように『(おもしろい程)早く止まる』『最後でゆるめて、しめて、を繰り返す』『落としてるか落としてないかわからない状態』というような説明をされてました。

*****************************************

(4)混沌(5)情報(6)不思議

 さて、実はこの辺から、最初に箇条書きされたテーマと、自分の聞いてる内容が一致しなくなってます。まさに『混沌』(笑)。『笑わない数学者』について、ラストに数学者が笑っている意味は、とか、「国枝教授、浜中助教授、萌絵の研究室などの設定で誰か書いて」とか、trfのSAMの親子でのポスターの話とか(<これは日記でも書かれてますね)、デザインについてとか(歳をとるごとにいろいろ捨てなくてはならない、シンプルにして最後に集中する)、そういった話をぽんぽんと出されて、気がつくと終了してました(おいおい)。

*****************************************

<質問コーナー>

 これについては他のレポートで確認してもらえば、わかるかと思います(なんて怠惰なレポート!)。一番強烈だったのは、萌絵が好きで、萌絵のように自分の先生に「好きです」と言った、という身の上話をした後、「私は森先生が好きです。先生はこの私の告白にどう答えられますか」みたいなことを聞いた女性でしょうか。いやあ、先生は「歳の差がありますから」と笑ってかわしてましたが、私は、最近自分の先生に告白したのに、すぐ別の先生(森先生)に告白するのでは、重みがないぞう! と思ったりなんかして。でも重いと困るので良いのですが(笑)。

 質問内容的には、前日の森ぱふぇオフでの質問や回答の方が、さすがにコアなファンが集まるファンクラブだけあって楽しかったかもしれません。

 *****************************************


●質問コーナーが終った後は、最近恒例の 名刺交換会があったようです。しかし、前日のオフで名刺は入手してたし、人数が多ければ先生も疲れるでしょうから、遠慮して、あるふぁるふぁオフ関係の仲間で隣のビル(私の泊まっていたホテルが入ってるビル)の下のイタリア料理の店で夕食を食べて、解散しました。
 次は六月の名古屋です。楽しみですね〜。