Kodak Retina

レチナ IIc


Retina IIc with Xenon 50mm/f2.8

レチナ2c
 ドイツ・コダック社(ナゲール製作所がコダックに買収されたのです)の製作した、一連のレチナシリーズは蛇腹式の35mmカメラです。そもそも今日まで使われている35mmフィルムは、コダック社がこのレチナシリーズを発売するにあたって新たにパトローネ入りフィルムを発売したのがその始まりで、それ以前はフィルムマガジンに映画用のフィルムを切って詰めていました。このレチナシリーズが採用したパトローネがデファクトスタンダードとなり、現在の35mmフィルムとなっているわけです。

  しかし、このフィルムマガジンの大きさは先に作られていた、ライカのフィルムマガジンの大きさを踏襲しているわけですから、25年に発売されたA型ライカから連綿と続いていることになります。もっとも、URライカを作ったバルナックは最初にマガジンを作るにあたり、ライツ製顕微鏡の接眼レンズケースを流用したとされているようであの大きさになったのは単なる偶然に過ぎないようです。

 レチナシリーズは戦前のモデルから最高級レンズのついた廉価版カメラとして大変な人気だったようで、現在でも中古カメラ店に数多く見られます。シャッターはコンパー、レンズもコダックエクター、シュナイダーのクセノン、ローデンシュトックのヘリゴンなどなかなか立派なものがついており、廉価版カメラとはいえ肝心なところは手抜きをしないよき時代のドイツ製品です。 retina

 このモデルは戦後発売されたIIc型。シンクロコンパーシャッターがついておりフラッシュ撮影も可能です。レンズはシュナイダーのクセノン、50mm/f2.8付き。シャープなすばらしいレンズですが、さすがにほんのりと黄色がかった描写です。そもそもこのレンズ、本当は開放値f2.0クラスのものを絞りが開かないようにして2.8に押さえてあるような感じですから描写性能が悪かろうはずがありません。ちまたのうわさでは、露出計付のIIIC型に搭載された同じクセノン50mm/f2.0よりもよりシャープなレンズだといわれています。

 いいことずくめのレチナIIcですが、巻き上げレバーがボディ下側にあるのが玉に瑕。時々巻き上げ時にボディを落としそうになります。この巻上げは同時に開発された露出計つきのIIIcが露出計の場所を確保するために巻き上げればーをボディ底に移したためだと思われますが、露出計のないIIc型では本来あるべきところにレバーがついていたほうが使い勝手がいいに決まっています。

 その点、少し古くなり、シャッターもシンクロコンパー比べてやや信頼性が落ちる、といわれているコンパーラピッド付きのIIa型がお買い得かもしれません。こちらのモデルは巻き上げれば-が常識的な場所についており、巻き上げの度にカメラを落としそうになることもないかと思われます。

 さらにレチナ一般についていえば、横に開くレンズ扉がじゃまをするので右手のグリップがききにくいのが問題です。なお、中古市場ではファインダーの大きないわゆる「大窓」モデル(たとえばIIIC、あるいはIIC←大文字のC)が人気ですが、中をあけてみるとこの窓の小さいモデル(たとえばIIIcとかこのIIc←小文字のc)の方がファインダーブロックにプリズムなど使われていてしっかりした構造となっています。

 一時、レチナシリーズ、特に大窓のIIICは大変な人気機種となり、かなりの高値をつけました。(アサヒカメラに某作家が書いた記事により、IIICの人気が沸騰し、一時銀座のカメラ店から一斉にレチナシリーズが消えたことがありました。)しかしながら、昨今では価格も随分落ち着いてきていますので、クラシックカメラを実用にしたい方には一番のお勧め機種のひとつです。何より付いているレンズがいずれもすばらしく、特にシュナイダーのクセノンの写りはライカのズミクロンより勝るとも劣らないとすら言われています。 このようなレンズ付きのカメラがズミクロンの半分以下の価格で手に入るのですから、放っておく手はありません。

 かく言う私も、最初に買ったIICからI結局手放しては買い戻す、ということを繰り返し、現在3台目のIIcが手元にあります(笑)